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儀式が終わって退出する博士や才人たちをお召しになり、
またまた漢詩をお作らせになります。
詩文に嗜みのある上達部や殿上人も、みなお引き留めになります。
博士たちは四韻、それ以外の人々は源氏の大臣も、絶句をお作りになります。
文章博士がおもしろい題を選んでたてまつります。
夜の短い頃ですので、夜が明けてしまってから詩を読みあげます。
左中弁が読み上げの講師役を奉仕申しあげます。
この人は顔立ちがたいそううつくしく、
重々しい声使いで神々しく読み上げる様子がたいそう面白いのです。
他の博士たちと違い、格別世評の高い博士です。
高貴な家柄にお生まれになり、世の栄華に戯れておいでになれるご身分の若君が、
窓の蛍や枝の雪で刻苦勉励なさる御志がいかにすばらしいかを、
故事になぞらえて作り集めた漢詩は、句ごとに興味深く
『本場の唐土にも伝えたいほどの出来栄え』と、世間でもてはやし、
大評判になるほどでした。
源氏の大臣の作品のすばらしさはいうまでもありません。
修辞はもとより、父親としての深い愛情が行間に溢れていますので、
列席者はみな涙を落として誦んじ騒ぐのですが、
女の私が知り得ない漢詩のことを語り伝えると『小癪なことを』と非難されますので、
書かないことにいたしました。
字(あざな)をつける儀式に引き続き、入学の礼ということをおさせになります。
二条院の東院に御曹司を造り、有能な師をお付けになって
まめまめしく学問をおさせになります。
入学後は大宮の御もとに、容易には参上なさいません。
大宮は、母を亡くした若君を夜となく昼となく慈しみて、
いつまでも子ども扱いしていらっしゃいましたので、
大殿では十分な学習がおできになるまいとて、
二条院の静かなお部屋に籠らせなさったのです。
それで一月に三度だけ、大宮のもとに参上することをお許しになりました。