私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

October 25, 2012
XML
カテゴリ: 源氏物語

「女は気立てが良くてこそ、世に用いられるものでございますね」

と、明石の女君のことを仰せになります。

「弘徽殿女御を『並々にではなく、また何事も人には劣らぬほど』
に育てたつもりではございますが、
斎宮の女御という思いがけない人に負かされてしまった宿縁に、
世の中というものは思いの及ばぬものと存じまして。

せめてこの姫君だけでも、
何とかして私の思い通りに出世させてみたいものでございます。

もうすぐ春宮の御元服がございますから、『春宮妃に』と密かに決めておりましたが、
幸運な方が産んだ后候補者が、また追いついて参りました。

明石の姫が入内なさる時には、冷泉帝の御代にもまして、
競いあう姫がいそうもありませんな」

とため息をおつきになりますので、大宮、

「どうしてそのようなことがございましょう。

『我が家系から、后の位に立つ人が出ないはずがない』と、
故・太政大臣が仰せになって、弘徽殿女御の入内にもご自身が奔走なさったのですよ。

ご存命でいらしたなら、源氏の大臣に負けることもなかったでしょう」

など、女御の御事についてだけは、源氏の大臣をお恨み申し上げるのです。

姫君はたいそうあどけなく可憐で、
筝の御琴をお弾きになる時の御髪の下がり具合や額髪の生え際などが、
高貴なご身分にふさわしくしっとりと上品なのです。

父・内大臣がじっと見つめますと恥らって少し横をお向きになる面ざしが可愛らしく、
絃を押しつける時の手つきは、まるで上手に作られたお人形のようで、
大宮も限りなく可愛くお思いなのでした。

姫は掻き合わせなどを少しお弾きになって、御琴をあちらに押しやってしまいました。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  October 25, 2012 02:15:51 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: