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内大臣が姫君のお部屋を覗いてご覧になりますと、
事情も知らずたいそう可愛らしいご様子でいらっしゃいますので、
不憫にお思いになります。
「幼いとは言いながら、これほど無分別でいらしたことも知らず
『人並みに入内させよう』と思った私こそ、姫にも増して愚か者であったことよ」
と、お仕えする御乳母たちをお責めになるのですが、申訳のしようがありません。
「男女の仲というものは、帝が限りなく大切にかしずいていらっしゃる姫宮でも、
つい過ちをおかす例が昔物語にもあるけれど、
それは二人の気持ちを知って取り持つ女房がいるからこそ起きるのでしょう。
でも、このお二方は私たちが仲を取り持つどころか、
大宮の御もとで長い間一緒に暮らしていらしたのですもの」
「それに、私たちが大宮を差し置いてまでお二方をお離し申し上げるなど、
とてもできませんわ。
今まで大宮にお任せして参りましたが、一昨年あたりからは
はっきりと別々のお扱いをなさるようになって、ほっとしておりました」
「幼いとはいえ人に隠れて色めく人もいらっしゃるようですけれど、
若君はいささかも乱れた所がおありでなくて、とても考えられませんでしたわ」
と、女房たちはお互いにため息をつきます。
「よし、この事はしばらく内密にしておこう。
やがては世間に知られようが、せめて今は嘘だと言い繕っておくれ。
今から私の邸に姫をお引きとり申そう。ああ、大宮のお気持ちが恨めしい。
そなたたちだって、いくら何でもこうなってよいとは思わなかったであろう」
と仰せになりますので、お気の毒とは思うものの嬉しいことを言ってくださったと思って、
「まあ、とんでもございません。
姫君の継父・按察大納言殿がどうお聞きになるかと思いますと、
気が気ではございません」
「いくら若君がご立派でいらしても臣下筋でいらっしゃいますれば、
どうして婿君に御迎えできましょう」
と、口々に申し上げます。
姫君はあっけらかんとしたご様子で、父・内大臣が様々に説き聞かせなさるのですが、
さっぱり埒があきません。ため息をおつきになって、
「どうしたらこの姫の将来が立つものか」
と、信頼できる女房たちにだけこっそり相談なさって、
それでもやはり母・大宮を恨んでいらっしゃるのでした。