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大宮はたいそう可愛くお思いの御孫たちの中でも、
幼くして母を亡くされた若君を格別可愛がっていらっしゃるからでしょうか、
このような恋心があったにつけてもいじらしくお思いになり、内大臣が思いやりもなく、
とんでもない事のように仰せになるのを、
『どうしてそんなにひどい事をおっしゃるのでしょう。
もとより姫君を大事にお思いになることもなく、
大切にかしずいてお世話しようともなさらなかったではありませんか。
私がこうして大事に育てたからこそ、
春宮に差し上げようとお思いつきになったのでございましょう。
されど、春宮妃が叶わず普通の人の宿世があるとしたら、
この若君より他に夫として勝る人がいるものでしょうか。
容姿・立ち居振る舞いに始まり、並ぶ人などないのですから、
この姫君が足元にも及ばないような高貴な身分の方の婿にも、と思っていますのに』
と、若君可愛さからでしょうか、内大臣を恨めしくお思いになるのです。
もし大宮のこの御心内をお見せ申したなら、
内大臣はどんなに母・大宮をお恨み申されることでございましょう。