私訳・源氏物語

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佐久耶此花4989

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August 13, 2016
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カテゴリ: 源氏物語
お子達があちらこちらであどけなく寝呆けていて、
間に幾人かの女房たちが挟まるようにして寝ています。

こちらでは人数が多くて、ニ宮のお住まいとはひどく様子が違っています。

お笛を吹き鳴らしながら、

『私が帰ってからも、宮は寂しく物思いに沈んでいらっしゃるであろうか。
御琴の調子は変えずにお弾きであろうか。御息所も和琴の名手でいらしたな』


などお思いになりながら臥していらっしゃいます。

『それにしても衛門督は、二宮さまを表面上は大切にもてなしていたが、
深い情愛を感じていなかったようだ。なぜなのか』


と、いぶかしく思います。

『縁を結んだとしても、見劣りするご容姿だったとすればお気の毒なことだ。
大方の世につけても、
限りなく優れていると聞くことは必ずしもその通りではないからな』


などお思いになるにつけ、ご自身のご夫婦仲を振り返ってごらんになりますと、
結婚当初から浮気する心配もなく過ごしてきた長い年月を数えるにつけましても、
北の方がいかにも我が強く威張ってばかりいらっしゃるのも
無理はないとお思いになります。

少しまどろみなさいますと、
夢の中にかの衛門督がありし日のままの袿姿で傍らに現れ、
笛を手に取って見ています。夢の中の事ですけれども、


『厄介なことに、笛に執念を抱いていたから、音を聞いて出てきたのだな』

と思っていますと、

「笛竹に ふきよる風のことならば 末の世ながき 音につたへなん

(この笛を吹くのが我が子であるならば、
子々孫々まで我が音色を伝えてほしいものです)


私の思いとは違うようでございましたが」

と言いますので、『では、誰に』と問う前に、
夜泣きなさる若君のおん声に目が醒めてしまいました。
お子はひどくお泣きになってお乳を吐いたりなさいますので、
乳母も起きて騒ぎます。

北の方も灯火を近くにお取り寄せになって、
額髪を耳はさみして一生懸命あやしていらっしゃいます。

たいそうよく肥えて、
丸々とした豊満なうつくしいお胸を開けてお乳を含ませていらっしゃいます。

お子はたいそう可愛らしい君で、肌も白くうつくしげです。

母君のお乳はさっぱり出ないのですが、
気休めにお口に含ませて慰めておあげになります。
男君もお側にお寄りになって、


「どうしたのです」

とお尋ねになります。

魔除けに米など撒きますので騒がしく、
先ほどのしんみりとした夢の事などもすっかり紛れてしまったようでございます。





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最終更新日  August 13, 2016 09:19:46 PM
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