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釈迦楽

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December 23, 2005
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カテゴリ: 教授の映画談義



というわけで、このところずっと疲れ気味だった私も、休みに入った途端、気力・体力とも充実してきて、何だかやる気満々です。で、その勢い余って、今日の午後、NHKの衛星放送でやっていた古い日本映画、『無法松の一生』を久しぶりで見てしまいました。現代ものの日本映画にほとんど興味がない私も、この時代の邦画は決して嫌いではないんです。

この映画、もちろん年配の方ならご存じの方も多いと思いますが、九州は小倉で明治・大正の時代を生きた一人の人力車夫、無法松こと松五郎の一生を描いたもの。無法松を演じるのは若き日の三船敏郎です。

気はいいけれど乱暴者で、地元では「無法松」の呼び名で知られた松五郎が、ある時、線の細い、気の弱そうな男の子を見かけるところから話は始まります。どうやらいいとこのぼんぼんらしく、近所の男の子らのように木に登ったりできないので、皆に苛められているらしい。そこで松五郎は、彼に木登りの一つもできないでどうする、勇気を出して登ってみろ、などとけしかけるわけ。ところが、しばらくして松五郎が同じ場所を通りかかると、先程の坊やが木から落ちたらしく、怪我をして泣いている。半ば責任を感じた松五郎は、この坊やを家に送り届けるのですが、これがまた立派なお屋敷なんですな。その後彼は坊やを病院に連れて行ったり、あれこれ世話を見てやることになるのですが、無法松は男一匹ですから、なんとしても御礼がしたいという坊やの母親の言葉を抑え、「あっしだって、たまには損得勘定なしに人助けをすることもあるんです」と言って名乗りもしなければ礼を受け取りもせず、その場を立ち去ります。

ところで、この坊やの父親というのは軍人で、妻から子供が人力車夫に助けられたという話を聞き、それが噂の暴れ者、無法松であることを知るんですね。で、この軍人かねてから豪放な無法松に一度会ってみたいと思っていたこともあって、彼を呼んで一夜、共に酒を飲むわけ。もちろん軍人と人力車夫では身分が違うわけですが、互いに気心の通じるところがあり、二人はすっかり仲良くなってしまう。

しかし、この時からさほど時を経ずしてこの軍人は病気で亡くなってしまいます。一粒種の男の子を抱えて未亡人となってしまった奥さんは、途方に暮れてしまうのですが、縁あってこの一家に関わりのできた無法松は、気も弱く、体力もないこの男の子を、父親のように強い男に育てるために力を貸して欲しいと未亡人から頼まれ、事あるごとに坊やの面倒を見るようになるんです。凧の上げ方を教えてやったり、泳ぎを教えてやったり。一緒に見に行った町の運動会では、飛び入り参加の500メートル走で、車夫の実力を遺憾なく発揮し、1等をとってみたり。男の子はそんな無法松を、まるで父親のように慕いながら、次第に強い少年へと育っていきます。

しかし、そんな幸せな時間も、そうそう長くは続きません。少年はやがて年頃となり、次第に年老い始めた車夫から「ぼんぼん」などと呼びかけられるのを恥ずかしく思うようになる。また無法松が年甲斐もなく、軍人の後家さんに懸想しているのではないか、などという町の噂も出始める。かくして無法松は、この未亡人や少年と距離を置かざるを得なくなっていくんです。

ところが、そうなった頃から松五郎は、自分が確かに未亡人に対して恋心を抱いていることを自覚するわけ。無論、生前、一度だけとはいえ、自分を家に招いて一夜の宴を催してくれた軍人への義理もありますし、いかに零落しつつあったとはいえ、自分と未亡人ではやはり身の程が違うということも重々分かっている松五郎は、その思いを決して表には出しません。しかし、そのことで彼は悶々とした日々を過ごすことになる。

そして、そんな失意の日々の中で、無法松は長いこと止めていた酒を飲み始め、生活も荒み、ついにある冬の日、親譲りの心臓病からか、それこそ道端に行き倒れて死んでしまいます。若き日、暴れ放題で小倉の町にその名を知られた無法松の最期としては、あまりにも寂しい死に方でした。



ま、お涙頂戴といえば、そうでしょう。しかし、演じている役者がいいのか、監督がいいのか、見せるんですなあ、この映画。まず三船敏郎がいい。若い時のエネルギーの固まりのような無法松もいいし、恋心を抱きながら、未亡人とぼんぼんのために尽くす健気な男としての松五郎もいい。そして哀しい最期を遂げる松五郎の哀れさ。そういう無法松の一瞬一瞬の表情が、見ているものの心に残るんです。もう青年になってしまった「ぼんぼん」に頼まれて、小倉の祭りを彩る「祇園太鼓」を叩く無法松の、いわば人生最後の華となる場面など、思い返すだけでほんとに涙が出ます。

そして周りを固める役者もいいんですよ。未亡人役の高峰秀子は言う迄もなく、映画の始めの方で暴れる無法松を諫めるやくざの親分を演じた笠智衆もすごい存在感です。また最初の方にしか出て来ない軍人役の芥川比呂志のかっこいいこと。

それから映画に写し出される明治・大正時代の日本の風景・風俗の懐かしさ。もちろん、私にとってもそれは実際には見たことのない、参加したことのないものではありますけど、それでも何故だか懐かしいと思えるんですよね。

そういうこともすべて含め、今日の午後は、無法松と呼ばれた男を描いた映画を見て、昔の日本、そしてそこに生きたやくざな男の純情にガツンと打たれたワタクシなのでした。





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Last updated  December 23, 2005 07:13:39 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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