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September 16, 2012
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カテゴリ: わけ分からん



 でね、イギリスってのは昔から緑豊かな大地でございまして、特に田舎なんかに行くと深い森がある。と、そこから例えば「ロビンフッド伝説」とか、そういう類の文学的表象が現れるわけ。いい時代でございます。

 ところが18世紀に入りまして産業革命が起こる。産業革命ってのは、要するに蒸気機関の時代ですが、この時代、蒸気をどうやって作るかってーと、もちろん、石炭を燃やして作る。石炭ってのは、イギリスで採れる唯一の天然資源みたいなもんですからね。じゃんじゃん燃やす。

 で、これがですね、イギリスの、とりわけロンドンの風景を一変させる。工場から排出される黒い煤煙、これが黒い霧となって大英帝国の首都を黒々と包み込んでしまうわけ。実際、この頃のロンドンを描いた絵も展示されていましたが、川沿いに工場の煙突が延々と立ち並び、モクモクと黒い煙が上がっている不気味な風景が描かれておりました。そのため、誰だったか、この時代の有名な作家さんが、首都ロンドンを評して「目に映るもの、煙突以外になし」という一文を綴っているのだとか。

 しかも、煤煙を出すのは工場だけではない。家々の暖房、これだって石炭ストーブでやっているわけですから、冬になると住宅地の家々の煙突からもモクモクと煤煙が上がる。だからロンドンでは、とりわけ冬になると煤煙被害というのが酷いんですな、昔から。どのくらい酷いかというと、人が呼吸困難に陥って何百人単位で死ぬほど酷い。特に赤ん坊が死ぬケースが多かったようです。

 で、この「黒い霧に包まれたロンドン」ってのを文学表象するのが、19世紀後半のディケンズだったりするわけよ。それからその暗さに乗じて犯罪が行われれば、シャーロック・ホームズも活躍することになる。「切り裂きジャック」だって、ロンドンの黒い霧の向こうからふいに現れると。

 一方、中流の上より上くらいの人達は、そんな煤煙に煤けたロンドンなんかはおさらばしちゃって、田舎の本宅に引きこもり、しかし田舎じゃすることもないので、せいぜい隣近所で社交に精を出すことになる。これが、ジェイン・オースティンの世界ですな。

 とまあ、そんな感じでイギリスの姿と、それを作家たちがどう描いたかというところが、時代ごとに展示されている。なかなか面白い企画でしょ?


 ところで、こんな感じで歴史的に石炭の煤煙に悩まされてきたイギリスですが、この「黒い霧のロンドン」がいつ頃から改善されたかというと、これが案外遅くて、1956年以降でございます。



 で、この法律によって、急にではないですが、徐々にロンドンの黒い霧は少なくなり、今日に至ると、まあ、大雑把に言えばそういう具合らしい。


 それにしても各家庭の暖房の要だった石炭の使用を法律で一気に禁じてしまうというのは、大変なことだったのではないかと思いますなあ。電気・ガス・灯油といったものへの転換は、スムーズに行ったのでしょうか。その辺は、文学者たるワタクシには、それこそ専門外なのでよく分かりませんが。

 しかし、一つ思うのは、「黒い霧の根本原因は石炭なのだから、その改善のためには石炭の使用を法律で制限するしかない」というプリンシプルを一度決めたら、それが大変だろうがなんだろうが、実際に法律を作って「石炭禁止」を粘り強く断行するという、そのイギリス人のガッツね。これがスゴイ。って言うか、エライ。

 ま、大体イギリス人ってのは、昔から「プリンシプルを決めて、方法を決めたら、あとは何が何でも断行」というスタイルでやってきたわけで、これがこの国の強さなんでしょうな。スペインの無敵艦隊を破り、フランスのナポレオン軍を破り、さらにはドイツのヒトラーをも打ち破った、その国としての強さの根っこは、多分、このスタイルにあるような気がします。ヒトラーがV2ロケットの「重力の虹」をイギリスに向って描いた時ですら、チャーチルは「ヒトラーには負けない」というプリンシプルを打ち出し、そのプリンシプルに国民も応えるだろうと期待し、実際、国民はこれに応えた。一旦、何かを断行するとなった時のイギリス人の頑固さを、ヒトラーは読み切れなかったんでしょうな。

 で、そんなイギリスで教育を受け、イギリス人の気質を呑みこんでいた白洲次郎は、「日本にはプリンシプルがない」と嘆いた。我慢することにかけては日本人だってイギリス人に負けないはずなのに、プリンシプルがないばかりに・・・と。


 さて、そんなことを考えながら日本に帰ってきたワタクシが、ですよ、日本に帰って一番に目にしたのが、自民党総裁候補者数名を並べてのインタビュー番組でございました。

 で、インタビュアーの人が、「民主党は2030年代までに原発ゼロにすると言ってますけど、あなたのご意見は?」と尋ねると、数名の総裁候補者全員が否定的な答えをした。曰く、「代替エネルギーのめども立っていないのに、原発ゼロを宣言するなんて、民意におもねっているだけで、責任政党のやることとは思えない。それに原発に関するノウハウが失われれば、使用済み核燃料の処理すらままならない」と。

 えーーー、イギリスじゃあ、庶民の暖房の要だった石炭の使用を禁止する法律をバンッと作って、ロンドンの黒い霧を追い払ったのにぃぃ?? 

 「石炭ストーブを禁止なんかして、イギリスの家庭を凍えさせるつもりかあ!」とか、そういう政治家が当時のイギリスにも居たかも知れませんけれど、そういう政治家の言う通りにした方が良かっただろうと、彼らは言うのでしょうか・・・?

 ま、日本の民主党にプリンシプルがあるかどうかは分かりませんが、自民党の総裁候補にプリンシプルがないことは見て取れるな。




 短期間とはいえ、イギリスに行って帰ってきて、色々なことを考えさせられるものでございます。





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Last updated  September 16, 2012 11:31:58 AM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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