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August 10, 2017
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カテゴリ: 教授の読書日記
オグ・マンディーノのおそらく最も有名な作品と思しき『世界最強の商人』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 オグ・マンディーノは、自己啓発思想を小説の形で打ち出す人、すなわち自己啓発小説家なんですが、これもまた自己啓発ライターの一つのパターンかなと。

 つまり、自己啓発思想ってのは、シンプルだからね。だから、ノンフィクションとして書いたら、同じことの繰り返しになってしまう。そこへ行くと、同じ思想を元にしていても、フィクションとして書くのであれば、フィクションの方の筋書きを変えてしまえば、同じ思想を何度でも主張できるところがある。無論、ノンフィクションとして同じことを繰り返し書く自己啓発ライターも沢山居るけれども、「手を変え品を変え」という意味では、自己啓発小説家の方がサービス精神旺盛、なのかもね。

 さて、で、この作品ですが、時代設定がすごい。何しろ、イエス・キリスト誕生の頃の話ですからね。2000年前の設定なのよ。

 ダマスカスにハフィッドという「世界最強の商人」が住んでおりまして。しかし彼は既に年老い、自分の資産を部下たちに分け、事実上引退生活に。しかし彼には一つだけ、やり遂げなければならない使命が残っておりまして、それは次に「世界最強の商人」の称号を継ぐ後継者を探すことだったんですな。

 そこで場面は過去に遡るのですが、ハフィッドは若き頃、パトロスという名の「世界最強の商人」のラクダの世話係だった。だけど、ハフィッドは野心満々、ラクダ世話係などという地位に満足せず、パトロスのような大物になりたかったと。というのも、当時彼にはリーシャという金持ちの娘に恋していて、彼女と結婚するためにも是非、金持ちになりたかったわけ。

 で、その野心を聞いたパトロスは、ハフィッドを試すことにしたと。で、パトロスは自分が扱う最高級のローブをハフィッドに渡し、これを売ってこいと命じるんですな。もし、見事そのローブを売ることができたら、さらに仕事をあげてもいいぞと。

 で、ハフィッドはやる気満々、意気揚々とそのローブを持って一人、市場に乗り込むのですが、既に盛名を獲得しているパトロスの行商隊の一員としてモノを売るのと異なり、まったく無名の青二才のハフィッドがいくらローブを売ろうとしても、人々はまったく相手にしてくれないわけ。で、足を棒にして売り歩いても、結局、ローブを売ることができなかった。

 で、自信を失い、絶望して、それでもまた明日、頑張ろうと、ハフィッドはさる洞窟で野宿をしようとする。宿に泊るほどのお金もなかったもので。



 で、その光景を見たハフィッドはたまらなくなり、パトロスの商標のついた超高級ローブをこの夫婦にタダで渡してしまうんですな。

 ハフィッドは、かくしてローブの一枚も売ることができず、それどころかその貴重な商品を見知らぬ夫婦にタダで渡してしまって、敗残者のようにパトロスのもとに戻ります。

 しかし、打ちひしがれて戻ったハフィッドを、パトロスは驚異のまなざしで迎えます。というのは、夜だというのに、燦然と輝く星がハフィッドを追いかけるように付いてきて、昼のように明るかったから。そしてハフィッドの打ち明け話を聞いたパトロスは、商品のローブをこの上なく有効に使ったのだと知り、彼を後継者と定めて、彼にある宝を引き継がせることにした。その宝とは、巻物の束であり、パトロス自身、この巻物に書いてあることを実行して、「世界最強の商人」の地位を手に入れていたんです。

 それから幾星霜、ハフィッドもまたこの巻物の教えを実行し、「世界最強の商人」になり、彼もまた次の後継者を探していたと。

 で、それではその巻物には何が書いてあったか。無論、これが商人(=セールスマン)として成功するための自己啓発的格言であったことは言うまでもありません。

 で、その巻物を順に説明しますと、第一巻(これが一番重要とされる)は「私は今日から、新しい人生を始める」というもの。良い習慣を身につけ、その奴隷となれ、そうすれば、その習慣が顕在意識を通じて潜在意識に到達し、良い方向に自分自身を向けてくれるだろうと。

 第二巻は「私は今日という日を心からの愛をもって迎えよう」というもの。愛をもって一日をスタートさせれば、いいことあるよと。

 第三巻は「私は成功するまでがんばりぬく」というもの。失敗することは多々あるけれど、かならずそれに見合う成功があるのだから、その成功を手に入れるまでがんばれよと。

 第四巻は「私はこの大自然の最大の奇跡だ」という認識を持てというもの。自分はかつてこの世に生まれた、あるいはこれからこの世に生まれる誰とも異なるユニークな存在なのだから、そのユニークさを武器にしろと。

 第五巻は「私は今日が人生の最後の日だと思って生きよう」というもの。人生には無駄にする時間なんかないよと。

 第六巻は「今日、私は自分の感情の主人になる」というもの。感情をコントロールし、元気がなければ元気を出し、調子に乗り出したら謙虚さを取り戻し、というように、常に自分の運命を自分で操縦しろと。



 第八巻は「今日、私は自分の価値を100倍にする」というもの。人生の目標を明確に定め、それに向って常に向上していこうと。

 第九巻は「私は今、行動する」というもの。頭で分かっていたとしても、実際に行動に移さなかったら意味がない、だから、今、動き出そうと。

 第十巻は「成功を求めて祈ろう」と。それもただお金持ちになれますようにと祈るのではなく、自分の目標に到達できるよう、それに向って頑張れるよう、力を与えて下さいと祈れと。

 ま、ハフィッドはこの10巻の巻物の教えをすべて実行し、成功したわけですな。

 さて、再び場面は戻り、年老いて後継者を探していたハフィッドの元に、ある日、ぼろをまとった旅人が訪れます。パウロと名乗るその男、もとは公職についていて、イエス・キリストを神の子と認めたステファノという人物の処刑に立ち会ったこともあると。



 すると再びイエスがパウロに顕現して、「自分のことを世界に伝えるノウハウを学ぶために、『世界最強の商人』と呼ばれる人物のもとへ行け」と命令したと。

 そこでハフィッドがパウロに、イエスなる男がどんな人だったかを詳しく伝えてくれと頼み、パウロがイエスのことをあれこれ伝えるんですが、十字架で処刑されたイエスの数少ない持ち物の中に、イエスの血のついたローブがあった。そしてそのローブにはパトロスの標章が! 

 そしてハフィッドは、このパウロこそ、例の巻物を継ぐべき人物と見抜き、彼の生涯の仕事が終ったのでした。めでたし、めでたし。

 というお話・・・。

 ・・・って、おいっ! 使徒パウロをセールスマンにしていいのか? イエスの言葉は売り物だったのか! 

 ま、それはさておき。

 この自己啓発歴史改変小説を読みながら、私、一つ思ったことがありまして。

 それは何かと申しますと、アメリカ人にとって「セールス」って一体、何なのだろう? ということ。

 アメリカの自己啓発本を読み漁っておりますと、セールスの話がすごくよく出てくるんですわ。逆に言うと、アメリカの自己啓発本の大半は、セールスマン向けに書かれていると言っても過言ではない。

 つまり、大金持ちになる前提が、良きセールスマンたること、っていうね。

 で、思うのですが、日本人にそういう発想ある? 金持ちになりたい、そのために、まずはセールスマンにならなきゃ! って思う? 

 私はそう思わないんだな。家内に尋ねても、金持ちになるために、まずはセールスマン、という発想はないと言ってましたし。

 だけど、アメリカはそうなのよ。まず商品を売れと。

 で、さらに思うに、やはりここにアメリカならではのプラグマティズムがあるのではないかと。

 例えばエジソンのように発明するとか、ビル・ゲイツのようにパソコンおたくとして成功するとか、野球やフットボールやバスケの選手として活躍するとか、芸能界でスターになるとか、そういうのは、特殊な才能が必要なわけよ。誰もがそういう才能を持って生まれてくるわけじゃない。

 じゃ、特殊な才能がない、普通の人が金持ちになるにはどうすればいい?

 商品売るしかないでしょ。セールスマンなら誰でもなれる。だけど、良いセールスマンになって頭一つ抜け出すには、心がけが必要だ。

 その心がけが、自己啓発なんじゃないの?

 そう考えると、「無一物から金持ちへ」というアメリカン・ドリームを実現する上で、一番、公平な道が、セールスマンになることなんじゃないのかと。

 しかも、アメリカの自己啓発思想における「セールスマン思考」のすごいところは、「良いセールスマンになるための心がけは、その他のジャンルのビジネスにも応用できる」と言い募るところなんですわ。

 なぜなら、結局、すべては「売り物」だから。

 いい医者として成功したいなら、自分がいい医者であることを売り込まなくてはならない。自分が才能あるアーチストであるなら、そのことを誰かに売り込まなくては始まらない。

 イエスの教えだって、それが良い物であるならば、それを売り込まなくてはならない。

 だから、オグ・マンディーノの『世界最強の商人』では、パウロをセールスマンに仕立てちゃったんじゃないのかと。

 すべては売り物。だから、良きセールスマンになるための自己啓発思想は、すべてのジャンルのビジネスに応用可能だ・・・

 そういう発想があるんじゃないかしら。

 ということで、『世界最強の商人』の衝撃の結末を読みながら、私は「アメリカ人にとってセールスとは何か?」という、興味深い問について、思いを巡らせていたのでございます。




世界最強の商人 (角川文庫) [ オグ・マンディーノ ]





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Last updated  August 10, 2017 02:53:09 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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