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August 17, 2017
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カテゴリ: 教授の読書日記
永江誠司という人の書いた『カーネギーとジョブズの人生を拓く天国の対談』なる奇妙奇天烈な本を読みましたので、心覚えをつけておきましょう。

 本書のタイトルにある「カーネギー」とは名著『人を動かす』で知られる自己啓発本の大家デール・カーネギーのこと。「ジョブズ」はもちろん、アップル社のスティーブ・ジョブズでございます。

 ちなみにこの二人、既に鬼籍に入っていますし、そもそも生きた時代も全然違いますから(カーネギーは1888年生まれ、ジョブズは1955年生まれ)、両者がこの世で出会ったことなどあるわけがない。

 その二人が、天国で対談したと。

 はあ?

 つまり、この二人が対談することになったらどういう展開になるか、それを永江誠司という人が妄想したと。その妄想した対談を記したのが本書であると。

 もうね、この時点で、この本が超弩級のトンデモ本であることは決定しているわけですね。

 以下、本書から引用します:


 働き盛りに亡くなったジョブズが自分の身近な人になったことで、カーネギーは彼に関心を持つようになった。斬新な製品を作り、印象的なプレゼンテーションをし、人の心を動かし、購買行動に導く彼の手法に、カーネギーも魅せられていたのである。(中略)

 そこでジョブズはカーネギーに連絡をとることにした。幸いカーネギーのほうでもジョブズに関心を持っていたので、二人はカーネギーの住む館で会うことになった。(中略)
 ジョブズは、昼過ぎにカーネギーの自宅に車で到着した。門を通り抜けるとボストンコモン(アメリカ最古の公立公園)の周辺にあるような古いイギリス風の館が見えてきた。館の奥の方から、カッコウの鳴き声が聞こえてくる。
 車を玄関の横に止めると、なかから初老の紳士が出てきて、ジョブズをカーネギーのいる部屋まで案内してくれた。カーネギーは、雲のように柔らかいソファーのある部屋にジョブズを迎え入れた。

ジョブズ: ハーイ! ミスター・カーネギー。初めまして。スティーブ・ジョブズです。お会いできて嬉しいです。ちょっと道を間違えて、遅れてしまいました。

カーネギー: やあ、スティーブ。デール・カーネギーです。私のことはデールと呼んでくれ。ところで、このあたりは最近住人が増えてね、道を間違えやすいんだよ。しかし君のヒゲ、よく似合っているね。イッセイ・ミヤケのデザインによる黒のハイネックセーターにリーバイスのジーンズ、それにニューバランスのスニーカーか。iPhone のプレゼンテーションのときと同じスタイルだ。

ジョブズ: そうです。よくご存知ですね。これが、私のスタイルです。あなたは写真で見たように、今日も品のよい服装ですね。

カーネギー: ありがとう。(5−7頁)


 ・・・・

 私の自己啓発本の研究歴も大分積み重なって来て、たいていのことには動じない風になっては来ましたが、この本は久々に出くわす驚愕のシロモノですな・・・。

 で、以下、カーネギーとジョブズ、それぞれの本から取った一節を引いて、それを元に両者があれこれ対談していくのですが、もちろん、対談と言っても、それ全部、永江氏の空想というか妄想ですからね。例えばジョブズの発言として「アップルを追放された時は辛かったけど、気を取り直してがんばりましたよ」というような趣旨のことが書いてあっても、それは永江氏が考えた台詞ですから。そこから読者が何かを学ぶことができるのかっていうと・・・どうなの? できるの?

 本書の副題である「アドラー哲学を実践して得た100の金言」というのも、一体、何のことやら。本書に書かれた一連の妄想の中で、カーネギーがアドラー哲学の影響について云々している箇所なんてわずか2、3カ所しかない(それだって、あくまで妄想ですから)。ただ著者の永江氏が、多少、(あくまで多少ね)アドラーのことについて知っているらしいというだけのことでありまして。



 多分、この人、カーネギーについてもジョブズについても、大して知りゃーしないんだろうね。

 永江氏というのは、福岡教育大学の名誉教授で、それなりの数の本も出しているようですが、この1冊を読めば、残りのレベルも大体見当がつくというもの。

 それにしてもこの本、一応、講談社でしょ。よく出したな。ノーマルな編集者だったら、「カーネギーとジョブズが天国で対談した、という体の本を出したいんだけど」と申し出があった時点で、鄭重にお断りするだろうと思うのだけど。

 ま、私としては、「自己啓発本の中には、こんなのまであるんだよ〜!」という、いわば爆笑・噴飯モノのネタとして使わせてもらおうかと思っていまして、その意味では非常に有用な本でしたが、そういう意味での面白さに興味がない方には、無縁の本かも。



カーネギーとジョブズの人生を拓く天国の対談 アドラー哲学を実践して得た100の金言 (講談社+α新書) [ 永江 誠司 ]





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Last updated  August 17, 2017 07:43:10 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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