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August 18, 2017
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カテゴリ: 教授の読書日記
泣く子も黙るパナソニック創業者・松下幸之助大人の世紀の自己啓発ベストセラー、『道をひらく』を読みましたので、心覚えをつけておきましょう。

 ちなみにこの本、もともと松下大先生が創立したPHP研究所の雑誌『PHP』に掲載されていたコラムをまとめたもので、1968年5月に初版が出てからおよそ50年の間に520万部超が出版され、日本におけるベストセラーの歴代第2位。(第1位は黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』で580万部。ただし別なカウントをしている資料もあるため正確なところは不明。)私の持っている版で「238刷」だもんね。お化けだよ、お化け。

 松下幸之助本人は「この本はええですなあ。わても毎晩、読んでます。しまいにゃ1000万部は出るんちゃいますか」と言ってますからね(そういう本人の肉声による録音が存在する)。まあ、でも、現在もなお売れ続けている本だし、今ではサンリオの「ハローキティ」とコラボした『ハローキティの「道をひらく」』などという姉妹本まで出版されているのだから、そういうのも合算すれば1000万部到達までそれほど掛からなかったりして。さすが商売の神様、松下翁のやることは違うわ。

 それにしても松下幸之助とハローキティのコラボって・・・。

 それはともかく、本書には一応「章建て」的なものがあって、それぞれ「運命を切りひらくために」「日々新鮮な心で迎えるために」「ともによりよく生きるために」「みずから決断を下すときに」「困難にぶつかったときに」「自信を失ったときに」「仕事をより向上させるために」「事業をよりよく伸ばすために」「自主独立の信念をもつために」「生きがいある人生のために」「国の道をひらくために」という標題の下、10個から15個くらいのまとまった文章が書かれているんですな。で、それぞれの文章はすべて見開き2頁に収まるコンパクトさ。もともと雑誌『PHP』のコラムとして書かれたものなので、どの文章も字数がほぼ同じなわけ。

 要するに、どの頁であれ適当にパッと開けば、見開き2頁に収まる松下翁の貴重な貴重な自己啓発的訓話が読めると。そういう仕組みでございます。

 で、この121篇の人生訓を通読して驚くのは、その質的な均一さ、です。

 121個もエッセイが連なっていたら、出来の善し悪しのムラがありそうなもんじゃん? ところがないの。そういうムラがまったくない。どれもほぼ同じ出来。

 そういう意味では、これはもはや「お経」に近いね。20世紀の「商売経」。丁稚から叩き上げで商売の神に仕え、しまいにはお上人様になった松下翁が、我ら凡俗の徒に商売の何たるかについておしえを垂れると。で、このおしえをお経のように日々拳拳服膺しておれば、いずれあなたもいっぱしの商売人(別に商売人じゃなくてもいいかも知れないけど)になれるかも、ってなシロモノでございます。



 一つ例を挙げてみましょうか:


「自分の仕事」
 どんな仕事でも、それが世の中に必要なればこそ成り立つので、世の中の人びとが求めているのでなければ、その仕事は成り立つものではない。人びとが街で手軽に靴を磨きたいと思えばこそ、靴磨きの商売も成り立つので、さもなければ靴磨きの仕事は生まれもしないであろう。
 だから、自分の仕事は、自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで、ほんとうは世の中にやらせてもらっている世の中の仕事なのである。ここに仕事の意義がある。
 自分の仕事をああもしたい、こうもしたいと思うのは、その人に熱意があればこそで、まことに結構なことだが、自分の仕事は世の中の仕事であるということを忘れたら、それはとらわれた野心となり小さな自己満足となる。
 仕事が伸びるか伸びないかは、世の中がきめてくれる。世の中の求めのままに、自然に自分の仕事を伸ばしてゆけばよい。
 大切なことは、世の中にやらせてもらっているこの仕事を、誠実に謙虚に、そして熱心にやることである。世の中の求めに、精いっぱいこたえることである。おたがいに、自分の仕事の意義をわすれたくないものである。(144−145頁)


 ま、こんな感じよ。お説ごもっとも! としか言えないじゃない。

 ちなみに、「大切なことは、世の中にやらせてもらっているこの仕事を、誠実に謙虚に、そして熱心にやることである。世の中の求めに、精いっぱいこたえることである。」ってな具合に同じ内容の事柄を二度畳み掛けるのが、松下翁の文章のクセでありまして、この独特のしつこさ、関西人だねえ。こういう丁稚上がりの叩き上げっぽい、ねっとりした文章のクセが、洗練された文章を好む私のような関東人には何とも鼻につくわけよ。

 もう一個行っちゃう?


「熱意をもって」

 もう考えつくされたかと思われる服飾のデザインが、今日もなおゆきづまっていない。次々と新しくなり、次々と変わってゆく。そして進歩してゆく。ちょっと考え方が変われば、たちまち新しいデザインが生まれてくる。経営とは、仕事とは、たとえばこんなものである。
 しかし、人に熱意がなかったら、経営の、そして仕事の神秘さは消えうせる。
 何としても二階に上がりたい。どうしても二階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかす。階段をつくりあげる。上がっても上がらなくても・・・そう考えている人の頭からは、ハシゴは出てこない。
 才能がハシゴをつくるのではない。やはり熱意である。経営とは、仕事とは、たとえばこんなものである。
 不思議なこの経営を、この仕事を、おたがいに熱意をもって、懸命に考えぬきたい。やりぬきたい。



 この文章なんか、ほとんどアレだよね、引き寄せだよね。「やろうという思いが強ければ、すべては実現する」という。実地に苦労した人は、結局、こういう結論にたどり着くと。そういうことなんでしょうな。

 とまあ、本書に書いてある一つ一つの訓話は、かくのごとくすべて同レベルで素晴らしいわけですけれども、自己啓発本というのは、つまるところ、「何が書いてあるか」よりも「誰が書いたか」が重要視される文学ジャンルでありまして、上に例を挙げて来たような一連の商売経も、もちろんそれ自体として「20世紀の商売人版徒然草」的な価値はありましょうが、しかしそれ以上に、他の誰あろう、あの商売の神様、一代で松下産業を打ち立てたかの松下幸之助が書いているからこそ価値があるところは否定できない。

 ま、神様の書いたものだから、『道をひらく』も520万部が出回るわけね。

 しかし、本当に今でもこの本、ガンガン売れているのかなあ・・・?

 ひょっとして、パナソニックに入社すると、新入社員全員、もれなく入社式の日にこの本がもらえるとか、そういう風になっていたりして。それだったら毎年、パナソニックの新入社員分は出版されるわけだしね。

 あるいは・・・・この手帳大のこの本が、実はパナソニック社員の社員証だったりして。ICチップが組み込まれていて、これで社員食堂の支払いも出来るようになっていたりして。

 松下翁なら、やりかねないねえ・・・。



道をひらく [ 松下幸之助 ]



ハローキティの「道をひらく」 [ 松下幸之助 ]





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Last updated  August 18, 2017 08:53:49 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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