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January 14, 2025
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カテゴリ: 教授の読書日記
このところブッコフに行くことが多く、その都度、常盤新平さんの本がないかどうか、見て回るんですけど、まあ、置いてないね! 常盤さんが書かれた本というのは結構沢山あるはずなんだけど、こういうところにはめったに出回らない。

 ついでに言うとね、山口瞳の作品も全然置いてない。どちらも直木賞作家なんだし、もうちょい、古本が出回っていてもおかしくないような気がするのだけど、まったく見あたりませんな。ブッコフじゃなくて、神保町とかの老舗古書店とかに行けば、さすがに置いてあるところもあるのかもしれませんけれども。

 さらについでに言うと、参考になるかと思って常盤新平さんの作品について云々した論文とか、そういうのはないかと思ってCiNii で調べるんだけど、一つも出てこない。常盤新平について論じようという国文学者が一人もいないってことですな。

 なるほど。そういう扱いなのね。全然知らないけど、国文学者って、何を研究しているんだろうね? いまだに森鴎外とか、夏目漱石とか、そういうのなのかな? アメリカ文学者がいまだにフォークナーだ、なんだって言っているのと同じか。


 さて、それはともかく常盤新平さんのエッセイ集『熱い焙じ茶』を読了しましたので、心覚えを。

 仕事で常盤さんの本を続けざまに読んでいて、彼の身辺雑記にもそろそろ飽きてきたんですけど、このエッセイ集はねえ、割といいんじゃないでしょうか。

 何がいいかというと、自分が書きたいから書いているという感じがする。他のエッセイ集は、雑誌から頼まれて無理やりひねり出したっていう感じがする時があって、そういう、書かざるを得ないから書いているというエッセイは、変に読者サービスに徹した感じがしてあまり好ましくないのだけど、これはそうじゃない。癖がなく、ごく自然な感じ。

 とはいえ、内容は他のエッセイ集と変わらず、行きつけの喫茶店やら寿司屋やら蕎麦屋とその店にまつわる思い出だとか、ニューヨークに行って街歩きをした話だとか、山の上ホテルは素晴らしかったとか、仙台の高校時代に英語を教えてもらった先生たちは個性があって面白かったとか、競馬は楽しいとか、そういう話。

 仕事がらみでこのエッセイから得た情報としては、1960年代に氏が「男性自身」の連載に気づき、以後「山口瞳の時代」となった、という認識をしていること、またこの時代にアーウィン・ショーの「夏服を着た女たち」や「80ヤード独走」の翻訳を手掛けたこと、1967年の秋、『卒業』が公開され、S&Gの「サウンド・オブ・サイレンス」が街中に流れるNYに初めて行ったこと、1969年に早川書房を辞めたこと、『罪人なる我等のために』は、出版社の一室で書き続けてきたのだけれど、最後の部分だけは山の上ホテルで書き上げたこと、ゲイ・タリーズの『汝の父を敬え』を翻訳してから4,5年後に、シチリアを初めて訪れたこと、「外国に対して、異文化に対して、僕などはすぐに身がまえるところがある。猜疑心にあふれた目で見たり、妙にへりくだったり、卑下したりして、どうも素直になれない。(中略)だから、ニューヨークに行ったときは、おのぼりさんをきめこんでしまう。そのほうが僕にとっては気が楽なのだ。/そうではあるが、僕は大いなる刺激を受けて、東京に帰ってくる。(中略)たとえおのぼりさんでも、ニューヨークを歩いたおかげで、自分が好奇心が強いのをあらためて知った。好奇心があるから、いくらでも歩けるし、退屈することがない。/もし僕がアメリカから学んだものがあるとすれば、それは、つねに好奇心をもてということだろう。ものごとを好奇の目で見るとき、じつに楽しいし、疲れを忘れてしまう。好奇心がなくなるというのは、身も心も老化したということだ(164)」というお上りさん意識を持っていたこととか、そんな感じ。




追伸:ここでこの本の実物を紹介しようと思ったのですが、古本としてすら、どこにも売っていなかったのでした。悲しいですなあ。興味のある方は、私と同様、図書館に行って借りだしてみてください。





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Last updated  January 14, 2025 01:40:09 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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