窓辺でお茶を

窓辺でお茶を

September 13, 2007
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カテゴリ: 舞台
日生劇場にて宝塚歌劇団公演「キーン」を観ました。
公式サイト

作詞・作曲/ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト
脚本/ピーター・ストーン
潤色・演出/谷正純  翻訳/青鹿宏二

 19世紀に実在したシェークスピア役者エドモンド・キーンを描いた作品で、デュマの戯曲をしたサルトルの戯曲を下敷きにしているそうです。シェークスピアの台詞がたくさん使われ、劇中劇もあります。安欄けいさん主演の「シークレット・ハンター」が宝塚らしい薔薇色の夢の典型なら、こちらは宝塚の限界を超えるような試みと言えるでしょう。主演の轟悠さんの力の見せ所です。 以下、ネタばれですので、ご注意ください。

 ドルリーレーン劇場で活躍するシェークスピア役者キーンは絶大な人気を博していて、「キング」と呼ばれていましたが、妥協のない衣装、贅沢と浪費、自らが貧しい境遇に育ったことから大道芸人や娼婦、貧しい人たちに気前良くお金をやったりおごったり、劇場に招待したり、怪我をした人のためにチャリティー公演をしたりしていたために借金をかかえる生活をしていました。貴族に招待されたり、プリンス・オブ・ウェールズとは友人のようにつきあっていましたが、所詮、舞台を降りれば卑しい身分の役者、法の外におかれた存在です。人が絶賛するのは舞台の彼であって自分ではない。キーンとは誰なのか、と悶々とします。数々の女性と恋愛ごっこをしてきたキーンがデンマークの大使夫人、エレナ・デ・コーバーグ公爵夫人だけには本気になります。ところがプリンス・オブ・ウェールズもエレナに惚れてしまったのです。

 オセロを上演する日、エレナにはプリンスを無視するよう頼み、プリンスにはエレナと同席しないよう頼むキーン。けれども、ふたりは同じ桟敷で、急遽代役でデスデモーナを演じている素人の商人の娘を指して嘲笑する始末。それを見たキーンは劇を離れてプリンスに非難のことばを投げつけてしまいます。人々はキーンを非難し、キーンの名声は一転して地に堕ちてしまいました。キーンに助けられた貧しい人たちだけがキーンの味方をしようとしますが、群集に暴力をふるわれてしまいます。
キーンはエレナに一緒に逃げようといいますが、エレナも所詮キーンの舞台を観て恋に恋していたのだと知ります。
皇太子を侮辱した罪でキーンは逮捕されますが、皇太子は舞台で謝罪するなら減刑すると言います。舞台でキーンはシェークスピアの台詞を次々引用するうちに、舞台が、役が、自分をつくるのだと悟り、水を得た魚のように生き生きと語り始めます。謝罪のことばでなく台詞ばかりではないかと最初怒った皇太子の顔にも微笑が浮かびます。



 「シークレット・ハンター」でラテン系男性を演じていた柚希礼音さんが今回は皇太子を貴族然と格好良く演じていました。
宝塚の限界を感じたのは、オーディションで出演者を決めるなら、脇役まで実力派で固めてひきしまった舞台になると思うのですが、これからおもしろい舞台が始まるぞと期待させるべき幕開きの歌とダンスがちょっと迫力不足だったりするところです。
民衆がキーンをいっせいに非難するようになっても、キーンは私達の王様と言い続けて暴力をふるわれた貧しい人たちが、「深い霧が晴れれば太陽がみえる」「私達にはこれ以上失うものはないのだから、一歩ずつ前進しよう」と言う場面、感動ものなのですが、これで声量と歌唱力があったらもっと力があるのですが… 

 とはいえ、見ごたえのある舞台です。宝塚向きロマンスではないためか、客席に空きがあるので(千秋楽は完売ですが今なら)もう一度見てみたいと思います。






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最終更新日  September 13, 2007 11:21:15 AM
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