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映画が始まって、タイトルが出ます。 アルレタ
という人らしいです。歌が歌われて、字幕に 「今は沈黙があるだけ」
と出ました。感じのいい歌ですが、何語なのかぼくにはわかりません。こういうところが、教養のなさとが哀しいです。
見舞いに来た女性があきらめたように病室を出てゆく。壁を向いて寝ていた老人が起き上がり、体につけられたチューブやコードを勝手にとって、立ち上がります。
「なんや、案外、元気やないか。」
アパートに帰ってきた老人 ロレンツォ(レナート・カルペンティエリ) を待っていたのは階段に座りこんでいる新しい隣人 ミケーラ(ミカエラ・ラマゾッティ )でした。
「コケティッシュという言葉があったな。」
老人のどこかに、彼女が潜り込む隙間でもあるかのように、すいすい近づいてくるのです。
「イヤ、ちがうな。偏屈な老人をふと心配にさせる『空気』が彼女を包んでいるんだ。」
造船所で働く夫 ファビオ(エリオ・ジェルマーノ) と、二人の子供がいる隣の家族の暮らしが映ります。若い母親は ミケーラ です。これが実の家族たちと折れ合いない老人の新しい 「家族」 です。
「ちょっと、横にいてやらなきゃあ。きっとそう思っている、この爺さんは。」
破局は隣りの家族にやってきます。銃を手にして死んでいる ファビオ
。倒れている子供たち。病院に搬送される ミケーラ
。家族だと偽って、病室に入り込み、生死の境をさまよう ミケーラ
に付き添う ロレンツォ
。
警察は悪名高い弁護士だった老人の、今ここで行っている 「行為」
と、その法律的な 「嘘」
とを追及してきます。
取り調べに立ち会った娘 エレナ(ジョバンナ・メッツォジョルノ)
が証言します。 ロレンツィオ
が入院していた病院から出て行った女性です。
「父は心を許した、身寄りのない隣人に手を差し伸べただけです」
ロレンツォ が叫びます。
「お前は黙れ。俺をボケ老人だと思ってかばうな」
やはり、ここでも拒絶された エレナ
は、静かにその場を立ち去っていきます。
入室を禁じられ、待合室で眠り込んでしまう老人の夢に現れて笑いかける ミケーラ。
「きっと会いに来てね。」
彼女の死とともにさ迷い歩くのは老人です。やつれはてた老人が、娘の前に姿を現します。ベンチに座り込んだ老人は、差し出された手を遠慮がちに握り、それを強く握り返す娘がいます。
母を裏切り、死に追いやった 「父」を許せない娘
と、老いた父との和解の物語。言ってしまえばそういうことになるのでしょうね。しかし、映画はもう少し深いんじゃないでしょうか。
娘、息子、かつての愛人、隣の家族、子どもたち。様々な視線の先に、一人のわがままで偏屈な老人がいる。彼は、たぶん、本当に自分を受け入れてくれる 「やさしさ」
を求めていたのかもしれませんね。
「誰でもはじめはそうだから・・・」
引っ越しを繰り返し、新しく住む街や、その街の人間に受け入れられないと苦しむ ファビオ
に掛けた言葉が、 ロレンツィオ
自身を語っていたに違いないと、ボクは思うのです。会いに行かなければ「やさしさ」には出会うことはできない。

拒絶し続ける老人の姿を演じた レナート・カルペンティエリ
という役者と、彼を取り巻く女性陣の雰囲気がとてもいい映画だった。
「さあ、家に帰ろう。」
監督 ジャンニ・アメリオ Gianni Amelio
原作 ロレンツォ・マローネ
原案 ジャンニ・アメリオ アルベルト・タラッリョ
キアラ・バレリオ
脚本 ジャンニ・アメリオ アルベルト・タラッリョ
撮影 ルカ・ビガッツィ
音楽 フランコ・ピエルサンティ
主題歌 アレルタ
キャスト
レナート・カルペンティエリ(ロレンツォ)
ジョバンナ・メッツォジョルノ(娘・アラビア語の法廷通訳エレナ)
ミカエラ・ラマゾッティ(隣人夫婦の妻ミケーラ )
エリオ・ジェルマーノ(隣人夫婦の夫ファビオ)
グレタ・スカッキ(ファビオの母アウロラ)
アルトゥーロ・ムセッリ(息子サヴェリオ)
ジュゼッペ・ジーノ(ジュリオ )
マリア・ナツィオナーレ(元愛人ロッサーナ)
レナート・カルペンティエーリ・Jr.(フランチェスコ)
ビアンカ・パニッチ(ビアンカ)
ジョバンニ・エスポジート(ダヴィデ)
原題「La tenerezza(やさしさ)」
製作年 2017年 イタリア 上映時間 108分
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