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「象徴化されたデフォルメ感」 が、残ったというのが正直な感想です。
「あらゆるものから捨てられた一人の人間」 の、過酷といえば、あまりにも過酷な戦争体験を、
「人間」が「人間」をやめる「血みどろの姿」として描き切った 監督塚本晋也 に脱帽しました。
私の家を売った金は、私に当分この静かな個室に身を埋める余裕を与えてくれるようである。私は妻は勿論、附添婦の同室も断った。妻に離婚を選択する自由を与えたが、 驚くべきことに、彼女はそれは承諾した。 しかもわが精神科医と私の病気に対する共通の関心から感傷的結合を生じ、私を見舞うのをやめた今も、あの赤松の林で媾曳しているのを、私はここにいてもよく知っているのである。 復員した 田村 は、 「美しい妻」 からも捨てられるのです。 「PTSD」 という概念があります。帰国したベトナム戦争従軍の兵士たちの症状から、アメリカの精神医学界で、 1980年代に確立された と思いますが、 大岡昇平 は1940年代の後半、すでに、
どうでもよろしい。 男がみな人喰い人種であるように、女はみな淫売である。 各自そのなすべきことをなせばよいのである。
「従軍兵たちを最後に奈落へ突き落とすのが、帰ってきた『平和』な社会であること」 を見破っていたのではないでしょうか。
「映画は最後に口籠った」 という印象をぼくは受けました。そこが、この映画に対する不満と言えば言えます。 「グロテスクな平和」 という視点は、ないものねだりでしょうか。
涙が止まらなくなったシーン があります。
田村一等兵
がどこまでも広がるジャングルを、丘の上からずっと見るシーンです。
涙の理由はいうまでもありません、この後ろ姿の兵士こそ、 大岡昇平
その人だと、ぼくには見えたからです。
空間的な「世界把握」 にこそ、その文体の独自性があると思います。
「帰ってきた」作家 大岡昇平 の脳裏に、生涯、何度、去来したことでしょう。
「忘れられない一本」 になったことは間違いありません。 拍手!
監督・製作・脚本・編集 塚本晋也
原作 大岡昇平
撮影 塚本晋也 ・林啓史
音楽 石川忠
助監督 林啓史
キャスト
塚本晋也(田村一等兵)
リリー・フランキー(安田)
中村達也( 伍長)
森優作( 永松)
中村優子(田村の妻)
山本浩司(分隊長)
2015年 日本 87分 2019・9・12シネ・ヌヴォー
「 大岡昇平さん って、戦争に『参加』したの?この書き方って、なんか変じゃない?」 マジギレしていました。
「えっ、どういうこと?」
「参加って、変じゃない? 大岡さん が生きてたら、キレれるでしょ。せめて、参加させられたでしょうよ。運動会じゃあるまいし。」
大岡昇平 は、戦争に「参加」したのでしょうか? ぼくと チッチキ夫人 は変なことにこだわっているのでしょうか。
ヤッパリ「戦争に参加」なんていいかたは、間違っています。 そう思ったことは、書き留めておこうと思います。読む人に、不愉快を感じさせることはあるかもしれませんが、これに関しては仕方がないことです。
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