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2019.12.24
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​​ 大沢真幸・橋爪大三郎「ふしぎなキリスト教」(講談社・現代新書)
 12月に入ってしばらくしたころかな、バスで星陵台を通過して、垂水駅に向かっていると、「高校前」のバス停から、まだ、昼過ぎなのにおおぜい高校生が乗ってきました。​

​「そうか、もう、期末テストの時期なんだ。」

​​ ​ 隣の席の腰かけた女子高生が 「倫理」 の教科書を広げて読み始めたので、なんか、とても気になって、覗き込みそうになってしまうのを、なんとか辛抱して、素知らぬ顔をしながら思い出しました。​
​ この高等学校で、お勤めしていた10年ほど前に、生徒さん相手にこんな本を 「案内」 してましたねえ。​
​※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※​
​​ ​​  「赦しと責任」 という文章で国語の教科書に出てきましたが、著者の 大澤真幸 の新刊 「ふしぎなキリスト教」 ( 講談社現代新書 ) の紹介です​
​​​​​ 大沢真幸 京都大学 で教えている気鋭の 社会学者 ですが、その彼が聞き手になって、 キリスト教 について、実に基本的なんだけれど皆が知らないこと、特に日本人にはよく解っていないことを質問すると、その疑問に答えるの が東京工業大学 で教えている ​橋爪大三郎​ という宗教社会学の先生。​​​​​
​ まあ、 大澤先生 もよくご存知のことを質問するわけですから、一種のやらせインタビューみたいなもんですけれどこれがなかなか刺激的なんです。なにしろ対談ですから、読みやすいことは間違いありません。​​​​​​
​​​​ 受験生である諸君もそろそろ 「世界史」 や、 「倫理」 なんて教科をまじめにやり始めているのではなかろうかと思うのですが、 世界史 、とりわけ ヨーロッパ史 あたりをまじめにやり始めて気にかかっている人はいるかもしれませんね。​​​​
​​​​ ​​​  「倫理」 デカルト とか ヘーゲル なんて近代初頭の哲学者の名前が出て来はじめるとちょっと引っかかる。うーん、引っかからないか。ナチスやシオニズムを言葉では知るわけだけど、これって何だろうと思う。えっ?思わない?そりゃあ困った(笑)。​​​
​​​​​​​​​ あのね、わかってないようだから、ちょっとエラそうに言うけどね、そもそも、 ギリシア文化 から始まって ローマ帝国 。それが 東ローマ 西ローマ と分かれて、 神聖ローマ帝国 とかがあって、 王権神授説 なんてものが大手を振ってあらわれる ヨーロッパ社会の権力争奪戦 にあって、 キリスト教 がキーになっているようなのだけれど、 キリスト教 って、実はよく解らないでしょ。​​​​​​​​​
 そう、だいたい、ユダヤ人て何者なの?ヨーロッパの人たちはユダヤ人はいじめてるのに、一方では自由平等ってなんでしょうね。自分たちが信じているイエス・キリストってユダヤ人だったんじゃないのとか。
​​​​​​​  ユダヤ教 キリスト教 と、ついでにいえば、 イスラム教 とは、もともと同じ宗教じゃないの。信じている神さんおんなじじゃないの?なのに キリスト教 の人たちはユダヤ人を差別して、 イスラム教徒 とは戦争する。最近では 9 11 の後、当時のアメリカ大統領 ブッシュ がいきなり 「クルセイダーだ(十字軍ね)」 と口走ってアフガニスタンを攻撃し始めたのには驚きませんでした?​​​​​​​
​ 日本の文化や宗教観からすると、ブッシュのやったことはなかなか理解しづらい事件でしたが、 キリスト教文化 の社会にはこういう発想があるんだということは教えられた気が、ぼくはしたんですが、そのあたり気になりませんか。​​​ ​​
​​​​​​​​​  近代科学革命 の二大スーパースター ( まあ、ぼくが勝手にそう思っているだけかもしれませんが )の一人 、あの ニュートン先生 だって怪しげな キリスト教徒 だったりするらしいし、もう一人の、哲学や数学の デカルト だって キリスト教 の真面目な、どころか、熱烈な信者だったらしいですよ。
「われ思う故にわれあり」 という、まあ、自己発見が反キリスト教ならわかる気がするけれど、神様はご存知だけれど、そんな神様に頼らなくても人間の存在を説明できるんだということになると、

「何でそんなことにこだわるんだ?」

​  とならないですかね。

「どうなってるのヨーロッパって?」
「キリスト教って何 ?

 ​ そんな疑問湧いてきませんか。​​​​​​​​​

​​​ 科学や哲学に限らず、芸術、音楽や美術なんて、もう、キリスト教なしには考えられないですよね。音楽だったら バッハ なんて、みんな宗教音楽だと思うし、この本の腰巻の絵は レオナルド・ダ・ビンチ 「最後の晩餐」 という有名な絵だけれど、日本人は遠近法がどうの、構図がどうのなんてことをわかったふうに解説するけれど、ヨーロッパの人にとってこれは聖書の有名なシーンであることがまず重要だったんじゃないでしょうか。​​​
​​​​​​  イスラム教 ではお金を貸したりした場合、今でも利子を禁じているらしいし、 ユダヤ教 だってそうだった。 シェークスピア の戯曲 「ベニスの商人」 で金貸しの ユダヤ人シャイロック が敵役で出てきますが、彼は利子を要求したのでしょうかね。利子を正当化したのは、 キリスト教 だけだというのはどうなっているんでしょうね。利子という金の殖やし方なしに現代の資本主義なんて考えられないでしょう。
​​​​​​
​​​​​ まあ、あれこれ並べ挙げてみたけれど、この本を読めば、必ずしも、すべてがスッキリ!というわけではありません。むしろ、そういう ヨーロッパ文化 キリスト教 の不思議に気づくようになるというべきかも知れません。
 教科書から、半歩ほど、外に出るだけかもしれませんし、かえって分からないことが増えちゃうかもしれませんから、勘違いしないでくださいね。
 なにか新しいことに気づいて歴史を眺めれば、出来事の原因や結果が重層化して、違う流れを感じ始めるということがあるでしょう。歴史を勉強する面白さは、きっと、そこから本物になっていくのです。センター試験形式のプリントの穴埋めが上手になっても、歴史の本当の面白さには、まだ手は届いていないかもしれません。
  できれば、通学のバスの中ででも、お読みください。バスの中で、教科書を広げてに赤線引いてるのも、ちょっと寂しいでしょ。(S)  2011 09 05
​​​​​



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最終更新日  2023.12.03 01:46:07
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