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人は時間のなかに生きる。時間によって拘束され、形成される。だが、私自身はその時間を理解できたと感じたためしがない。いや、曲がるとか、逆戻りするとか、どこかにパラレルに存在するとか、そんな理論上の時間のことではなく、ごく日常的な時間、時計に従って規則正しく進行する時間のことだ。(P6) 次第に失われていくとは言いながら、彼の意識のなかには生きてきた60数年の記憶が積み重なっており、何気ない瞬間に湧き上がってくる、かつての 「時間」 に戸惑いながらも、浮かび上がってくる 「記憶の映像」 のなかに、彼の 「今」 をつくりだした契機が潜んでいることを確認するかのように、落ち着いて、知的な口調で男は語り始めます。それが 「終わりの感覚」 と名付けられたこの小説の始まりでした。
その出来事がやがて水増しされてエピソードになり、おぼろな記憶になり、時の経過による変形を受けながら事実になった。出来事そのものにはもう確信が持てなくても、少なくともそれが残した印象を忠実に語ることはできる。というか、私には、せいぜいそのくらいのことしかできない。
(P6)
「あなたはまだわかっていない。わかったためしがないし、これからもそう。わかろうとするのはもうやめて。」
数十年ぶりに再会した ベロニカ
がメールの返信のなかに残したこの言葉が、作品全体に響き渡っているかのような、読後感でした。
追記2021・11・07
この小説は 「ベロニカとの記憶」
という邦題で映画化されていて、2018年、日本でも公開されたようですね。イギリスの芸達者な俳優さんが ト二―(アレックス)
と ベロニカ
を演じていると思うと、なんだかワクワクしますが、うーん、アマゾン・プライムかネット・フリックスで探せば見つかりそうです。
「うーん、これは見たい!」
まあ、そういう小説ですね。
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