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「借りてばかりで、返さないのは、ちょっとあかんのじゃないだろうか。」 と殊勝なことを思いついてリュックいっぱいの本を担いでお返しに行ってみると、いかにも真面目そうな司書の方から
「えーっとですね、ちょっと延滞がひどいですね。8月末迄 貸出禁止 ですね!」 と申し渡され
「アワワ!」 でした。ほぼ、半年前ね。
「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」 でしたね(笑)。
「ああ、あの本の著者か?題名が、ちょっとイヤでスルーしたな。」 とか思いだしましたが、
「この3年間で「だいじょうぶ」が口ぐせになってしまった。」 という書き出しの 「はじめに」 から読み始めて、とまらなくなりました。短いエッセイを集めた1さっつなのですが、次から次へと止まりません(笑)。
なんなんだ、この「????」は? はい、かっこの中にどう書いていいのかわからないので ??? なのですが、まあ、取り合えず思いつくのは 「吸引力」 ですかね。 「馬が合う」 というのでもいいかもですが、内容はともかくとして 、語り口 が気に入ったんでしょうね。
子どものころ、人気の遊び歌があった。 ここまでが 実況中継 、で、ここからが、著者である 岸田奈美さん の 気持ち 。
「奈美ちゃん、奈美ちゃん、どっこでしょう~♪」
保育園の先生が歌う。
「ここでっす、ここでっす、ここにいます~っ♪」
子どもらは大喜びで、返事をする。
母が歌う。
「良太くん、良太くん、どっこでしょう~♪」
返事はない。
弟はいつもどこかにいたけど、いつもここにはいなかった。
ジッとしていられない弟だった。だまっていられない弟だった。保育園でも、学校でも、歩道、公園でも、むちゃくちゃに跳ねまわっていた。軌道がまったく読めないスーパー・ボールみたいだ。
捕まえられるのは、母だけ。
弟を取り押さえるときに発揮する、母の爆発的な初速は、ラグビー選手のようだった。
保育園へ行く途中のことだ。
弟が国道へ飛び出した。一瞬だった。
母の足の間を急回転ですり抜け、彼にしか見えないなにかを追って、自由な魂みたく駆けてった。
道路のド真ん中で、弟はピタッと立ち止まる。
凍り付いていた母の時間が動いた。声もかれる絶叫だった。母は死ぬ覚悟で体を投げ出し、弟の服のフードをガッとつかむと、歩道へ引きずり戻した。
大型トラックが、轟音とともに走り去っていった。
あと5秒、遅れていたらだめだった。
母は地面にへたりこみ、震えながら、弟を抱きしめて放さなかった。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ」
幼かったわたしには、知らなかったことがたくさんあった。 と、まあ、こうです。いかがでしたか?
弟がダウン症で生まれてきたこと。
身体がむずむずするから、手をつなぎたがらないこと。
フード付きの服ばかり着ていたのは、命綱だということ。
必死で弟の命を守ろうとする母の姿が、近所で不思議そうな視線にさらされていたこと。
弟がおもちゃを持って公園に行くと、親にそっと手を引かれて、離れていく子供たちがいたこと。
療育の先制の「愛が足りない」「しつけがなってない」という言葉で、帰り道に母が唇をかみしめながら、弟に頬をよせて泣いていたこと。
どんなに疲れ果てていても、悔しくても、母が外で笑顔を絶やさなかったのは弟を嫌わないでいてくれる人が、弟の命を守ってくれる人が、どうかひとりでも増えますようにという、祈りだったこと。
そんな苦労、わたしや弟は。なにひとつ知らなくてもいいように、「奈美ちゃんと良太が生きているだけで、ママはうれしい」と、何度も何度も、語り続けてくれたこと。
わたしはなんにも知らなくて。
いま、あの日に戻れたら。
国道沿いで、へたりこんで、泣いている母に会えたら。
「だいじょうぶ」って、100回言ったる。(P71)
追記
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