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2023.01.04
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カテゴリ: 玉昭令 全52話



第31話

端木翠(ダンムーツェイ)は展顔(ヂャンイェン)がくれた飴細工を持って幕舎に戻った。
幼い頃から修練に明け暮れる毎日だった端木翠、将来は村落を率いて父の端木(タンボク)村と母の虞山(グサン)村を守らねばならず、母から″甘い物を食べると気が緩み、戦で判断力が鈍る″と叩き込まれて来た。
「(ペロリ…)この味、10年ぶりだ、懐かしい」
それにしても展顔はなぜ自分の好物が分かったのだろうか。
一方、無罪放免となった展顔はこのまま端木営で丞相の指示を待つことになった。
没収された巨闕(キョケツ)も手元に戻り、ようやく一息ついた展顔、そこで乾坤袋から思い出の人形を取り出し、端木翠への想いを募らせる。
「何としてでも私を思い出させる…沈淵(チンエン)から出るんだ」


しかし再び故気(コキ)が蔓延して状況は一変、朱雀通りで人族と幽族の争いが勃発し、殺人まで起こってしまう
上官策(ジョウカンサク)は張瓏(チョウロウ)と趙武(チョウブ)を連れて現場へ駆けつけたが、3人も故気を吸い込んで様子がおかしくなった
すると幽族の鶴雪(カクセツ)が駆けつけ、付近の故気を消してくれる
正気に戻った上官策はひとまず民を屋内に避難させ、外出時は鼻と口を覆うよう府令を出した…

紅鸞(コウラン)が目を覚ますと端木営にいた。
温孤(オンコ)から内通者の件が解決したと聞いた紅鸞は衣羅(イラ)に会いたいと頼み、墓前で敵を討てたと報告する。
「阿弥(アビ)に聞いたの、端木将軍は女だけど兵を率い、戦場に出て女子を守ると…
 端木営では女も男も平等で皆が尊重されている」
紅鸞はもっと早く端木将軍と出会えていたら衣羅を死なせることもなかったと涙した。
「端木将軍のそばにいたらきっと幸せに生きられるわね…かたや幽族は奴隷のように抑圧されている」
しかし今の2人では1日も早く人族と幽族の争いが終わり、平穏な日々が送れるよう願うことしかできない。

成乞(セイキツ)のせいで人族が警戒を強め、新たに間者を送ることも難しくなってしまう。
「他の策を講じねば…そうだ、頭(カシラ)から叩こう」

丞相・江易(コウイ)は成乞が内通者だったことから万全を期して作戦を変更すると決めた。
そこで先鋒を觳閶(コクショウ)に変更、端木翠は面白くない。
一方、江文卿(コウブンケイ)は正体を隠しながら兵営の様子を探っていた。

「成乞の正体がもう露見してしまうとは…」
本来なら安邑の決戦は凄惨を極め、端木翠は多くの兵を失うはずだった。
しかし展顔が内通者を暴いてしまったため、端木翠は打撃を受けることなく安邑を落とせるだろう。
江文卿は展顔が沈淵に来たことで様々な変化が生じていると気づいた。

展顔は丞相の幕舎の前で言い争う端木翠と觳閶を目撃した。
どうやら安邑攻めの先鋒が交代になったらしい。
怒りが収まらない端木翠はそのまま遠乗りに出ると、やり場のない怒りを岩にぶつけていた。
そこへ展顔がやって来る。
展顔は鞭で岩を叩くより、憂さ晴らしに馬で勝負しないかと誘った。
「望むところだ!」
展顔は端木翠が無類の負けず嫌いだと知っていた。

端木翠は無我夢中で馬を駆けているうち、いつの間にか鬱々とした気分も晴れていた。
2人は馬を引きながらのんびり歩いて引き返したが、展顔はこの機会に端木営に入りたいと頼む。
しかし端木翠は同族しか入れないと難色を示した。
「だが戦が迫ればそうも言ってはいられな…(はっ)」
その時、展顔は視線の先にある木の幹に何かが張り付いているのを見つける。←無理くりwww
「繊維が粗い…人族の衣ではないな」
すると付近に見慣れぬ靴の跡があり、たどってみると兵営に続く道へ出た。
「まずい、急いで戻ろう」

人族の兵営が寝静まった頃、幽族の刺客が潜入した。
しかし危ないところで端木翠と展顔が駆けつける。
2人は刺客を排除したが、端木翠は手のひらを斬られていた。
驚いた展顔は咄嗟に端木翠の手をつかんで確認すると、その時、端木翠の傷口から流れた血が巨闕に滴り落ちる。
すると驚いたことに巨闕は端木翠の血を吸い込んだ。
「まさか私の血で修復したことが?」
「思い出したのか?」
「いいえ…大哥に神剣の話を聞いたの」

刺客の襲撃を聞いた觳閶は慌てて端木営に駆けつけた。
しかし幕舎で親密そうな端木翠と展顔を見つける。
端木翠はひとまず展顔を下げたが、觳閶はよそ者の展顔に警戒するよう釘を刺した。
「展顔がそなたを慕っているという噂だ、入隊は愛慕からだと…」
觳閶は自分の許嫁として自重するよう迫り、1日も早く婚姻を結んで軍を強化したいと訴える。
すると端木翠は思わず自分との婚姻は戦力を増幅する手段なのかと聞いた。
「他に目的が?」
「そうね、あなたが正しい、私も同意見よ」

翌朝になっても端木翠は手の出血が止まらなかった。
心配した楊鑑(ヨウカン)はすぐ軍医を呼んだが、なぜか治すことができない。
するとちょうど通りかかった温孤(オンコ)が駆けつけた。
端木翠の傷を見た温孤は幽毒だと気づき、霊力を使って排出させようとする。
しかし治療中の温孤を見た楊鑑が幽族だと気づいた。
やがて端木翠が黒い血を吐き出して意識を失うと、楊鑑は温孤が危害を加えたと誤解して投獄してしまう。

…現世の蓬莱では司法星君・楊鑑が七星灯(シチセイトウ)で端木翠の元神(ゲンシン)を呼び戻そうとしていた
すると七星灯に火がともり、端木翠が無事だと分かる
安堵する楊鑑だったが、そこへ神仙たちが駆けつけた
「人間界の故気がひどくなっている、このまま広がれば人間界は大惨事じゃ」
しかし端木翠に伝達する術がなく、楊鑑はいよいよの時には自分が赴くと約束した

一方、啓封でも鶴雪がこの怪奇現象は民たちが外部から意識を操られているせいだと説明していた
しかし話を聞いたところで上官策には何の手立てもない
すると趙武が細花流(サイカリュウ)を訪ねようと提案した
「それで?」
「それで…あれ?何を言いかけたのか…誰かの名が浮かんだのだが…」
「…端木門主?」
張瓏がようやく端木翠の名前を思い出し、上官策たちは急いで細花流へ向かった

その頃、端木草盧(ソウロ)では青花(セイカ)小仙と薬瓶が主人の帰りを待っていた

「はあ~主人はいつ戻るのかな?」
「主人って誰のこと?記憶にないわ」
「三界一の美貌を誇る神仙だ!…ん?たぶん、そうだったような〜名前は〜何だったっけ?」
「…端木翠?」
「そうだ!端木翠だ!」
青花は端木翠が過去に執着すればするほど現世での関わりが薄れて行くことを思い出し、このまま主人を忘れたくないと嘆く
一方、上官策たちは端木橋に到着した
しかし3人はなぜここへ来たのか思い出せず、呆然と立ちすくんでしまう…

展顔は紅鸞の協力を得て温孤を牢から連れ出し、端木翠の治療を任せた。
その時、端木翠は夢の中で端木草盧にいたが、ここがどこなのか分からない。
すると寂れた草盧に誰かが立っていた。
男はゆっくり振り返ると、次第に白いもやが晴れてはっきりと顔が見える。
これまで顔が分からなかった男、それは展顔だった。
しかし展顔はいきなり背後から見覚えのある長槍で突き刺されてしまう。

すると楊鑑が幕舎に戻って来た。
温孤が端木翠を治療していると気づいた楊鑑は剣を抜いたが、咄嗟に展顔と阿弥が立ちはだかる。
「治療の邪魔をしないでください!」
その時、端木翠がようやく目を覚ました。

展顔と紅鸞は霊力を使い果たした温孤を休ませるため居所へ戻った。
紅鸞は正体を隠せなくなった温孤を心配したが、展顔は端木将軍が守ってくれるはずだという。
すると紅鸞も安心し、何があろうと温孤について行くと決めた。

楊鑑は端木翠がすでに温孤の正体に気づいていたと知った。
しかし温孤は人族を傷つけたことがなく、端木翠は温孤を信じるという。
「温孤がいなかったら私は死んでいたわ…」



その夜、展顔は端木翠に付き添っていた。
すると端木翠がふと目を覚まし、もしや巨闕が折れたことがあるか聞いてみる。
「夢を見たの…私は自分の血で巨闕を修復していたわ、現実なの?」
「…これから話すことは荒唐無稽に思えるだろう、だけど事実だ
 私はここの者ではなく君と千年後から来た、ここは沈淵、君の過去だ
 現実を思い出さないと出られなくなってしまう…」
展顔はここに長くいるほど現実に戻るのが難しくなると説明し、現実の世界も自分たちを忘れて行くと訴えた。
しかし端木翠は到底、受け入れられず、話を終わらせてしまう。

翌朝、端木翠は義兄に″沈淵″を知っているか尋ねた。
楊鑑は誰に聞いたのかと驚きながら、伝説では神女(シンニョ)が沈淵を開いて天地を創ったと言われ、つまり沈淵とはもう一つの世界だという。
「我々がいる世界とは別の世界のこと、そこに入るとたぶん幼い頃の自分たちに会えるだろう
 死んだ仲間たちとも会えるのかもしれない…」
「ここが沈淵の可能性もある?」
「バカなことを、神女と同じ力を持つ者でなければ開けぬ」
「母は神女の子孫よ、私も力を継いでいたら虞都(グト)に会える?」
しかし何かしらの子孫だと名乗るのが村落では常套、楊鑑は幽毒の後遺症かと取り合わなかった。

半妖だとばれた温孤は高伯営で壮絶ないじめを受けていた。
温孤もさすがに我慢の限界、手のひらに龍気を集めたが何とかこらえる。
その時、端木翠が現れた。

端木翠は兵士のいじめを容認している高伯褰に激怒、温孤を端木営で引き取ると決めた。
すると高伯褰は厄介払いできたとばかりに喜んで温孤を譲る。
端木翠は憂さ晴らしに温孤を連れて夕陽を見に出かけた。
「将軍…なぜ幽族の私のために高将軍と対立したのですか?」
「お前こそ正体が露見しても私を救ったではないか」
「母は人族の医者でした、私は半妖のため他の幽族ほど強くない
 役立たずの邪魔者といじめられてきたのです、だから正体を隠して人族に紛れました
 でも正体を知った人族には獣のように扱われる…どこへ行っても嫌われます
 将軍だけが差別しなかった…そんな将軍の危機を見過ごしたら獣にも劣ります」
「それが質問の答えだ、命を懸けてくれる兵を守れなければ将軍である資格はない
 温孤、お前を信じる、だから自分を蔑むのはやめろ、私が認めた男なのだから…」
「将軍!命に変えても戦い抜き、信頼に応えます!」

つづく





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最終更新日  2023.01.04 16:35:10
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