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2023.02.08
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カテゴリ: 玉昭令 全52話



第15話

姚蔓青(ヨウマンセイ)は想い人と引き裂かれ、部屋に閉じ込められていた。
思い詰めた蔓青は首を吊ったが、運良く端木翠(ダンムーツェイ)が駆けつけ、白綾を切ってくれる。
実は蔓青には劉向紈(リュウコウカン)という想い人がいた。
娘が幽族と通じていると知った父親は激怒、展顔(ヂャンイェン)を利用して隠匿しようと思いつき、宿に誘き寄せて薬を嗅がせたという。

端木翠は悲しみに暮れる蔓青に芍薬の花を返した。
愛おしそうに芍薬を抱きしめる蔓青、すると劉向紈の残像が現れる。
…蔓青、私はもうこの世にいない、これは残留した精神なんだ…

聞けば新たに任命された天道使君が幽族の追放を命じ、人族との婚姻も禁じられたという。
しかし劉向紈は天に背いても蔓青と夫婦になると決意、駆け落ちしようと夜の桟橋で待ち合わせした。
すると天兵が現れ、桟橋の手前で殺されてしまう。
「すまない、別れの時だ…元気で」
「一生を共にする約束でしょう?…あなた以外に誰も愛さない」
端木翠は愛し合う2人の最後の時間を邪魔しないよう出て行った。
やがて父親が蔓青に薬湯を届けに来たが、寝台ですでに息絶えた娘を発見する。
蔓青は花嫁衣装をまとい、大事そうに枯れた芍薬を抱きしめていた。

蔓青は遺書に真実を書き残していた。
父親は正気を失い、娘が生きている幻を見ているという。
展顔は無事に解放され啓封府に戻ったが、端木翠は蔓青の最後の言葉を思い出すとやるせなかった。

天道使君は文曲星君と季笙(キショウ)に別れを命じ、今度は劉向紈と姚蔓青が天道使君のせいで悲しい結末を迎えた。
「蓬莱に異変が起きてる…こんなの人間界を守ってきた蓬莱のやり方ではない!」
憤る端木翠、すると展顔は蓬莱で何が起きているか調べようとなだめた。

蓬莱では司法星君・楊鑑(ヨウカン)が天道使君・江文卿(コウブンケイ)に諫言していた。
「迫害すれば反発を招きます、幽族の中には啓封に潜んで王を探す者がいるとか…

「王を探す者だと?…天兵に伝えよ、啓封の民に夜間の外出禁止を命じる
 街に潜む幽族をくまなく探し、すべて捕縛せよ」
すると江文卿は自分で編纂した法典を渡し、人間の行いを制すると伝えた。
「お前が人間界に赴き、役所に届けてくれ」

展顔は端木草盧(タンボクソウロ)で汁粉を作った。
しかし端木翠が部屋にこもってなかなか出てこない。
展顔は仕方なく汁粉を持って部屋に入ると、端木翠は慌てて切り落とした白髪を隠した。
窓から庭を眺めながら汁粉を飲む端木翠、その時、展顔は化粧台にある白髪に気づいてこっそり手に入れる。
「…たくさん食べてくれ、おかわりもある」

展顔は独りで中庭に出ると端木翠の白髪を見た。
…端木、何を隠している?神位を失った君はこれからどうなる?…
すると風が吹き、端木翠の白髪は飛んで行った。



人間界を監視している江文卿は端木翠が老いて行く姿を見ながらほくそ笑んだ。
しかし急に激しい頭痛に襲われ、慌てて香袋を取り出す。
一方、端木翠の白髪はもはや隠し通すことができないほど増えていた。
薬瓶は温孤(オンコ)が生きていたら黒髪を保つ薬も作れただろうと嘆く。
そこで端木翠は温孤が残した薬を片っ端から見てみたが、その時、義兄からもらった符縄(フジョウ)の仙力が尽きそうなことに気づいた。
…私はもう長くないということ?…

展顔は上官策(ジョウカンサク)にある頼み事をした。
「やっと端木と共に人生を歩めるんだ…」
「兄弟の頼みだ、引き受けた、任せてくれ」
するとそこへ端木翠がやって来た。
展顔は急激に衰え始めた端木翠に驚き、困ったことがあれば一緒に向き合おうという。
しかし端木は笑ってはぐらかし、展顔の衣を縫うため採寸を始めた。

端木翠は自分に残された時間がわずかだと気づき、展顔に尽くした。
震える指で衣を縫い、啓封府には差し入れを届けて展顔の世話を頼む。
その日は展顔が端木翠に合わせて食べなくなった肉料理を草盧で振る舞った。
すると端木翠は展顔が身を守れるよう神器の護身傘を譲るという。
「武術ができるから私は大丈夫だ」
「強敵が現れた時、私がいなければどうするの?」

端木翠はうっかり口を滑らせ、気まずい空気が流れた。
「ぁ…呪文を教えるわね」
しかし呪文を唱えるだけでも体力を消耗し、端木翠は傘を落として倒れてしまう。
展顔は咄嗟に端木翠を抱き留めたが、端木翠は惨めな姿を見せるのが嫌で部屋を飛び出した。
「端木!」

展顔は端木翠を追いかけ、橋の上で捕まえた。
「時間があればもっとできることがあるのに…でももう…」
「私が悪かったのだ、言う通り覚えるから見捨てないでくれ」
「違うの…私が悪いの、あまりに気が急いてしまって…」
すると端木翠は気を失ってしまう。
その時、楊鑑が現れた。
「縁が尽きたのだ」
「違う!」

実は端木翠は天道使君の正体を突き止めようと義兄を呼び出していた。
楊鑑は義妹に心配をかけまいと明かさずにいたが、その時、端木翠の白髪を見て驚愕する。
『失ったのは本当に法力か?…神位であろう?』
端木翠は仕方なく神位を失ったと認め、これで展顔と添い遂げられると強がった。
しかし神位の保護を失えば瞬く間に老いて死んでしまうのは必至、楊鑑は符縄に自分の魂力(コンリキ)を注入し、無理に神器を使って魂力を失わないよう念を押す。
すると端木翠は思わず楊鑑に抱きついた。
『大哥…三界で最も素敵な哥哥よ…』

展顔は倒れた端木翠に付き添っていた。
楊鑑の話では神位を失った端木翠は次第に衰弱し、寿命が尽きて死んでしまうという。
…残された時間は長くない…
展顔はなぜ早く気づかなかったのかと己を責めながら泣いた。
その時、端木翠が目を覚ます。
「展顔…なぜ泣いているの?」
「私はもっとしっかりするべきだった…私が悪いのだ」
「確かにそうね…呪文を教えても覚えないもの…?…何を考えているの?」
「君をずっと見ていたいと…」
「髪が真っ白になってしわくちゃになっても嫌いにならないでね…」
「どんな姿になろうとずっとそばにいるよ」

楊鑑が中庭で待っていると展顔がやって来た。
「彼女を救う手立ては?」
「…端木の神位は沈淵にいる時に奪われた、だが今の端木に再び沈淵を開く力はない
 このままでは衰弱し、やがて魂が砕け散る」
「嫌だ…そんなの」
楊鑑も蓬莱で医仙や文献を片っ端からあたったが、神位を失った者が老いを免れた前例はなかったという。
身代わりになれるものなら義兄である自分がなってやりたいが、今回ばかりは打つ手がなかった。
「あとどのくらいですか?」
「分からぬ…数ヶ月かもしれないし数日かもしれぬ、今すぐかも」
楊鑑はどんなに辛くても端木翠の前では笑顔でいるよう頼んだ。
端木翠にとって一番辛いのは展顔が悲しむ姿を見ることだという。

翌朝、端木翠が目を覚ますと展顔がいた。
まるで眠っている間に殴られたのかと思うほど身体の節々が痛むという端木翠、すると展顔は薬湯を飲ませ、端木翠を抱き寄せた。
「…私がいなくなっても変わらず幸せに暮らして欲しい、時々は懐かしんでね」
「″いなくなる″って?」
「人間には必ず死が訪れる、神仙だって同じ千年を繰り返すだけ、うんざりするわ
 だから数百年か数千年、眠ることがあるの」
「神仙はどこで眠るんだ?」
「巨石になる者もいれば、深海の樹木になる者もいる、帰墟(キキョ)に行く者も…
 展顔、もし私が眠りにつくなら何になればいい?」
「端木…君を失いたくない、だって君は私の全てだから」
「私は消えない、あなたから離れない」

展顔は端木翠と出かけることにした。
そこで覚えたばかりの呪文で護身傘を操ってみせると、端木翠は飲み込みが早いと喜ぶ。
しかし端木翠が急に立ちくらみを起こした。
展顔は端木翠を背負い、そのまま朱雀街の錦繍布荘(キンシュウフソウ)まで連れて行く。
「なぜここに?」
「入ってみよう」
すると店主の李瓊香(リケイコウ)が上官策に頼まれていた花嫁衣装を持って来た。
「お代はいいわ、結婚祝いよ」
実は展顔は端木翠に内緒で上官策に婚礼の準備を頼んでいた。

草盧に端木翠の婚礼衣装一式が届いた。
展顔は端木翠を抱きしめ、一緒に過ごせる時間が1年でも1日でも一瞬であろうと構わないという。
「君と出会えたことに感謝している、端木…妻になってくれ」
「はお」


つづく


( ;∀;)ァァァ…展顔…





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最終更新日  2023.02.08 17:08:57
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