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2009年02月14日

ジョン・ノイマイヤー自作を語る　Part3

カテゴリ： BALLET

ジョン・ノイマイヤー自作を語る
ベニスに死す
（トーマス・マンの小説による）
音楽：J.S.バッハ　リヒャルト・ワーグナー
演出・振付：ジョン・ノイマイヤー
舞台美術：ペーター・シュミット
衣裳：ペーター・シュミット　ジョン・ノイマイヤー
2003年12月世界初演（ハンブルク・バレエ）

他のシーンを見てください。最近の私にとって重要なテーマは創造者と作品の関係。創造者と世界の関係。
「ベニスに死す」はトーマス・マンの小説が下敷きになっています。芸術家、書くことに行き詰った作家はベニスに行き、すばらしいと思う男性を見て、すべてを捨ててこの若いダンサーについていこうとする。その時ベニスにはコレラが流行していて、彼についていくためここで過ごしてしまう。
（これから見る場面の）コレオグラフィーは厳格な様式を持ったもの。感情にあふれたものではない。理性的に作り上げられたものです。最初の部分、フリードリヒ大王の振付を考えているところ。

（映像上映　ベニスに死す　ロイド・リギンズ（アシェンバハ　振付家）とイヴァン・ウルバン（フリードリヒ大王）

フリードリヒ大王がバッハに依頼して、このヴァリエーション（の音楽）を作ってもらった。それが「音楽の捧げもの」。
私が考えたのはクリエーターと作品の関係。愛の物語でもある。（芸術家のスランプ）衝撃を受けて落ち込んで（創作が）進まない状況、作れないという困った状況を創ろうと思った。
またそれから逃げてしまうという関係も作ろうと思った。
（芸術家は）作品を早く完成させようとするが、頭で考えている。心を開けないので混乱状態ですね。

はっきりしたと思います。一つ一つは美しいステップ、だが複雑になっていくので混乱する。自伝的部分もある。新しいものを作りたいのに出てこない困った状況を表そうとした。

（映像上映　てんでに踊る群舞とその前で踊るアシェンバハ(リギンズ)）

「ベニスに死す」は有名な映画もありました。ヴィスコンティの作品です。それにはマーラーの「アダージェット」（交響曲第5番第4楽章）が使われていて、その曲が逆に有名になりました。その音楽を使おうと思っていました。
最初は理性的で、ものを組み合わせて作り上げるのがアシェンバハ。対立が生じる。理性と感情的な世界、ディオニソス的世界との対立。それでワーグナー（の音楽）を用いたのです。対立が表現できると思う。感情と理性の。

（映像上映　さきほどの場面　頭にきて椅子を放り投げるアシェンバハ）

ここから感情的になる。あとのパドドゥをお見せします。大きな出来事、ベニスでタジオに出会う場面です。

（映像上映　アシェンバハ（リギンズ）とタジオ（エドウィン・レヴァツォフ）のパドドゥ　アシェンバハはあいさつ、自己紹介したいのだができない。ボール遊びする少年　ついには少年の方がアシェンバハと握手し去っていく。せつないような思いつめたような、崩壊直前のアシェンバハの表情。）

この音楽はワーグナーです。ワーグナーのピアノ曲はあまり知られていないのですがすばらしい作品があります。ワーグナーが「トリスタンとイゾルデ」を書いた頃の作品です。よく気持ちを表しているものがあります。
このバレエで最も重要なのは、アシェンバハがフリードリヒ大王の作品を完成することができないということ。テーマは何なのか？ホモセクシュアルの関係ではない。イタリアの批評家が見て、これは生と死（？）のストーリーだと言いました。アシェンバハは自分が作る人物に愛情を持つわけだが、それは人生に対する愛に読み替えられる。それは彼にとって死を意味する。彼の生にとって愛情を持つことをするわけなのです。以上が見ていただきたかったものです。（拍手）

Part4 に続く

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