2012年01月10日
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Wolfgang Koch Interview


A Role for Life: Wolfgang Koch and Die Meistersinger von N?rnberg
The Royal Opera’s Die Meistersinger von N?rnberg
[19 December 2011-8 January 2012]
Mansel Stimpson talks to Covent Garden’s latest Hans Sachs...

バリトンのヴォルフガング・コッホにとっては、あらゆるオペラの役の中でハンス・ザックスの役が最高の役である。彼は2004年に初めてこの役をやった。私はコッホがコヴェントガーデンでのグレアム・ヴィック版の再演の準備をしているときに話をした。グレアム・ヴィック版は1993年に初演され前回の公演は2002年だった。

「ホントにすごい役で、たとえ100年この役を歌ったって新たな発見があるでしょう。僕が最初にビーレフェルトの小さな劇場でこの役をやったのは37歳の時で僕にとって大きな出発点でした。その2年後、またフランクフルトでやって、次のステップは、2008年ティーレマン指揮でウィーンでやった時でした。この役は大変歌唱シーンが長いということと、心理的な奥深さが必要という点において大変な役なんです。回を重ねるにつれ、この役と共に成長し、自分自身の人生や年齢や経験によって豊かになっていくものです。」

コッホにどうしてワーグナーの役があなたの中心的レパートリーになったのか尋ねたら、彼はシンプルに、そういう定めだと語った。

「僕はドイツ人ですから、ワーグナーが中心にならざるをえません。そうしない道理はないですよ。」

コッホはミュンヘン郊外の小さな村の出身だ。家庭環境にクラシック音楽の素地はなかったが、自分がいい声をしていて、ものになるかもしれないと思っていた。1970年代をその村で過ごし、村を出たくなった時、自分の声はそのための手段にできると思った。



コッホはミュンヘンの音楽大学に進んだが、本当に大きな意味があったのはバリトンのヨーゼフ・メッテルニヒ(2005年没)に師事したことだった。

「メッテルニヒ先生はフェルダーフィンクというミュンヘンから南に20キロほど離れたところに住んでいて、僕は歌唱の基本的なことについて教わりました。先生は50年代に活躍していて1950年にロイヤルオペラで英語で上演されたカール・ランクル指揮の「さまよえるオランダ人」に出演した方です。僕が習った頃、先生は75歳で、音楽的にも歌唱の技術的にもとても大切なことを教わりました。人生経験も豊富で、とても優しくて親しみやすい人柄でした。彼に言われたことはいつも理にかなったことで、こき下ろすことはありませんでした。そういう行為がいかにたやすく若者をダメにするかわかっていたからです。」

メッテルニヒはワーグナーに重きを置いていたんでしょうか?「基礎的なことを教えるためにワーグナーは使ってました。さまよえるオランダ人とかローエングリンとかをね。でも中心的だったのはむしろヴェルディです。先生は1953年に「運命の力」でメト・デビューしました。イタリアものが得意なドイツ人には珍しいバリトンだったのです。ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスよりも美しい音楽なんて無きに等しいですけど、それでもイタリアのオペラは看過できないものです。僕はヴェルディを歌うのが大好きですよ。」

ヴォルフガング・コッホのヴェルディ好きは、シモン・ボッカネグラ役を引き受けたことにも表れているが、R.シュトラウスも大好きで、アラベッラのマンドリカやザロメのヨカナーンもやっている。ワーグナーに至っては、ハンス・ザックスに加えて、ローエングリンのテルラムント、トリスタンとイゾルデのクルヴェナル、ニーベルングの指環のアルベリヒをやっている。コッホはこのアルベリヒ役で来シーズンロイヤルオペラに帰還するのである。しかしながら彼のレパートリーについては別の側面もあることを申し添えなくてはいけない。ドイツ以外では多かれ少なかれ知られていない作品への傾倒である。フランツ・シュレーカーの「狂える炎(イルレローエ)」、オルフの「賢い女(クルーゲ)」、プフィッツナーの「パレストリーナ」、スコットランド生まれのドイツ人作曲家オイゲン・ダルベールの「低地」。

「20世紀前半は、わくわくするような音楽が生まれた時代でした。シュトラウスやプフィッツナーがいた時代にシェーンベルグやベルクもいたのです。そしてシュレッカー、ショスタコーヴィチ。あまり演奏される機会がない作品ですが、聴く価値がある作品です。僕はこういう作品を歌うのが好きです。事実、ブゾーニの「ファウスト博士」は僕のバイエルン歌劇場デビュー作品で、大きな経験を与えてくれました。ピエール・ブーレーズとショスタコーヴィチのオペラをやりましたし、キリル・ペトレンコとはショスタコーヴィチの「鼻」をやりました。プフィッツナーの「パレストリーナ」の3つのバリトン役をすべて歌いました。」コッホが、世間に知られてないのが不当だと強く思っている作品がある。「すごく好きなのに今では演奏されないイタリアオペラがあります。イタロ・モンテメッツィの歌劇、「三人の王の愛」(L'amore dei tre re)は1940~1950年代にアメリカで上演され、今では唯一知られている彼の作品となっています。こういう状態を「知られている」と言えればですけどね!」

「マイスタージンガー」については、この中世のニュルンベルクを舞台にしたオペラが、長い時間をかけて語られる深い人間描写がもっとも特徴的な喜劇であると論じるのは簡単なことだ。それでは、ワーグナーの他のオペラとはどう違うのだろうか?「比較するならば、マイスタージンガーは他の作品とはすごく違いますが、同時に、結局はそんなに違わないとも言えます。ワーグナー作品の特徴は、登場人物の心理的な多層面が描かれていることです。初期の作品のローエングリンを除いて、それはトリスタンにもリングにも、パルジファルにもマイスタージンガーにもあります。その違いは、マイスタージンガーは人間の思いやりとユーモアを含んでいるということです。悲劇的叙事詩のリングや、ラブストーリーであるトリスタンにはユーモアはありませんが、マイスタージンガーにはユーモアがあり、かつそれによって心理的深みが何も減じられていないのです。」

≪中略(ストーリー解説)≫

それでは作品に対する視野を広げるためにコッホはこれらのことは補足的なことだと思っているのだろうか?コッホは実在のハンス・ザックスについての書を読んだりするのだろうか?もしくは台本だけに集中するのだろうか?
「多くのテーマについては、それらが等しくそうであるかどうかは別にして、考慮を要する問題ですし、それでそのプロダクションの出来が計られるのです。ザックスが実在の人物であったことは重要なことではなく、重要なのは彼の時代背景なのです。この物語は、人々が皆プロテスタントという時代に起きるのです。ザックスが若い頃は信仰問題でもめごとが起きるという困難な時代を過ごしました。そしてマイスタージンガーの作曲と歌唱法の規則が確立された時代でした。ザックスはその形式をヴァルターに覚えるように教え込みます。というのもワーグナー自身が革新的であり、ヴァルターは新しい音楽を象徴する人物で、彼らは明らかによく似ているのですが、これはこの作品を誤解するもととなりがちです。音楽的伝統は、新しものを創り出す過程においては打ち壊さなくてはならないのかもしれないという問題をはらんでいます。古いものだけを大事にしていれば、音楽は博物館行きとなり、死んでしまうでしょう。しかしもし大事にしておくべきだった古い規則を捨て去ったら…、古い規則に従うのではなく、使いこなしていけばよかったのに…。それがワーグナーの意向です。だから彼はバッハ、モーツァルト、ベートーベンを尊敬していました。ザックスはヴァルターに、古い規則を知って、自分の閃きを表現できるよう変えていけばよいと教えたのです。他のマスタージンガーたちは新しいことに対処できる準備がなく、ヴァルターにも面喰っていました。ようやく5時間のオペラが終わる頃、彼らは気付くのです。」

「他のワーグナー作品の重要な役もそうですが、ザックスの役も、物語の最後から遡って考えなくてはいけません。マイスタージンガーの聖ヨハネの日は、ザックスのこれからの将来が定められる日です。すべての人間関係が変化していきます。ダーヴィトはマッダレーナと結婚し自分で仕事を始めます。彼と言わば愛憎関係にあったベックメッサーとの仲は壊れました。エヴァはヴァルターと共に新しい生活を始めます。」ヴォルフガングは、作品を徹底的に読み替えてしまうドイツのプロダクションに慣れっこなので、グレアム・ヴィックのプロダクションについては絶賛しています。
「とても明晰で正確なプロダクションです。初めてオペラに来た人にも何が起きているのかマイスタージンガーがどんな作品なのかわかるようにできています。長い上演時間の間、解説を読む必要も何もありません。今回はアントニオ・パッパーノとの初仕事であったという意味でも忘れ難いです。皆が言うように彼は「歌手の味方」の指揮者ですし、偉大な音楽家であり、温かい、人間味にあふれる人柄で、そういう雰囲気で仕事ができます。


「ワーグナーの時代と、後のナチの台頭した時代を考えてみなくてはいけません。ナチスはすべてを凌辱し、ワーグナーも確かに凌辱されたのです。ドイツの芸術家としてワーグナーはドイツ芸術を守りたかった。だから「マイスタージンガー」はとてもドイツ的な作品であると主張したかったのです。最後の場面は妻のコジマに影響を受けているのかもしれませんが、当初はなかったものです。芸術について語られる部分で出てくるものです。同じマイスタージンガーの2幕の幕切れのシーン(※訳注:3幕の冒頭のことだと思われる)に注目してみてください。ザックスは昨夜の原因不明の大暴動について「狂気」と表現しています。‘Wahn!’モノローグを作曲するに当たりワーグナーは間違いなく数十年後に起こることを予見していたのです。理由もなく起きてしまう(狂気)、それが人間というものの性分です。ベートーベンもゲーテも、ワーグナーも、ヒトラーもしかり。皆歴史の中の一部分なのです。」

≪了≫

***

Musikhochschule = 音楽大学






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最終更新日  2012年03月04日 09時04分05秒


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