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二十数年前の2月の夜、私は、少し緊張して名古屋駅のホームにいました。
周りには、大きな荷物を持った家族連れや旅慣れたような人達が思い思いにホームで列車を待っていて、長距離旅行をするという雰囲気が盛り上がっていました。
初めて、泊りがけの1人旅に出る私は、少し贅沢をして、寝台特急「はやぶさ」のA個室寝台券を持ち、その中にいました。
初めての列車の個室は、ゆっくり過せた半面、なにせ西鹿児島着が14時頃ということもあって、少し、寂しくもあり、若かったこの身には、退屈であったことも事実。
しかし、いざ西鹿児島に着き、降りるとなると、このまま乗っていたいという気持ちにさせられたのも、事実でした。
この時は、名古屋から西鹿児島まで乗り、当時、まだ健在だった鹿児島交通や鹿児島市電を周り、城山公園など鹿児島市内を観光、桜島を眺め、満足した旅になりました。
それから、「明星」「あかつき」「なは」「日本海」「つるぎ」「はくつる」「ゆうづる」…とくに、「あかつき」や「なは」「日本海」には、何度も乗って、ブラブラと九州や東北、北海道を旅しました。
この間、一人用B個室寝台「ソロ」などができた一方で、少しずつ、寝台特急が減っていき、列車の選択肢がなくなっていくのは、寂しくもありました。
今日、ついに「はやぶさ」「富士」が廃止になりました。
今、この時間、走っている列車を持って、「はやぶさ」「富士」…いえ、九州へのブルートレインは、全廃となります。
かつては、日本の列車の代表格だった東京や大阪から九州への夜行列車の歴史は、今日で最後となります。
時代の流れと言ってしまえば、それまでですが、夜、ふと時計を見て、「ああ、今あの列車は、あのあたりを走っているな」などと思うことも、段々とできなくなってきて、なんだか、旅というものが、自分から遠のいたようで、少し、悲しくもあります。
願わくば、いつか、単なる「移動」ではなく、「旅」を感じさせる列車が、ささやかでも復活してくれればと、思います。