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2007/04/19
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カテゴリ: 病気・医療関連
衝撃の事実! がん治療先進国アメリカの敗北 1
衝撃の事実! がん治療先進国アメリカの敗北 2
衝撃の事実! がん治療先進国アメリカの敗北 3

「非常に優秀で資金も豊富な研究者が世界中で1万人以上の患者を対象に、こうした新しい分子標的薬剤の臨床試験を実施した」とダナファーバーがん研究所のブルース・ジョンソンは言う。「アストラゼネカはイレッサを試験した。アイシス・ファーマスーティカルズとイーライリリーはアイシス3521と呼ばれる化合物を試験した。いくつもの企業が数千万ドルもの資金を投じたが、結局、何の成果も得られなかったのだ」。
何らかの明らかな成果を上げた分子標的薬剤はノバルティス ファーマの「グリベック」である。これは腫瘍を抑制するだけでなく、救命効果も示している。慢性骨髄性白血病(CNL)という珍しい白血病や、消化管間質腫瘍(GIST)というさらに稀な胃がんに劇的な有効性を示している。初期段階の報告は、ほかの3つのがんにも程度の差こそあれ有効性があるようだと述べている。グリベックの成功は、長年にわたる「がんとの闘い」で我々が取ってきた戦略が正しかったことを立証するものと考えられている。
しかし、グリベックですら、当初の期待とは異なるものだった。CMLは複雑ながんではない。この病気では、たったひとつの遺伝子変異によって、がん細胞の増殖シグナルの伝達が引き起こされる。グリベックは巧みにこの致命的なシグナル伝達を遮断する。ちなみに一般的ながんでは5~10個程度の遺伝子変異がみられることが多い。もうひとつ言えることは、「単純な」がんですら、賢くなるということだ。(生涯服用しなければならない)薬に長年さらされている悪性細胞は、グリベックが阻害する細胞内シグナルの伝達系を変異させ、薬剤耐性を獲得する。
道理で、がんは心臓病よりもずっと厄介な病気であるわけだ。ジェネテックのコマーシャル・ダイアグノスティック部門のシニア・ディレクター、ボブ・コーヘンは「複数の進展はないだろう」と言う。完全には腫瘍を破壊しない薬を使うと、(生き残った)細胞から異質性が進化して、“回りのことなんかどうでもいい!こんな薬にめちゃくちゃにされてたまるか!”などと言い出す。そこで研究者は突如としてこうした複雑なメカニズムを手なずけようと、細かく分析し始めた。これが現状だ」そして、こうした理由から、早期に複数の方法によって攻撃を加えることしか、この病気を退治できるチャンスはないのである。
3剤、4剤、5剤と複数の薬を使用する併用療法という治療法がある。もちろん、こうした実験的な化合物のカクテル療法は、医師がHIVをコントロールするために使用した方法である。HIVの急速に変異するウイルスはかっては死刑宣告を意味していた。今回インタビューしたほぼすべての臨床医学者および科学者は、同様のアプローチが新世代の抗がん剤に必要だと考えている。しかし、ここでも、がん研究の組織的な力関係がこうした開発をほとんど不可能なものにしている。
承認されていない複数の薬を臨床試験で併用すると、製薬会社は法的および規制にかかわる問題を多く抱えることになり、安穏とはしていられない。製薬会社に勤務する多くの腫瘍学者は、政府やがんセンターの研究者と同様に一般大衆の健康のために努力を重ねているが、新しいアイデアを試すことにはやや消極的かもしれない。結局のところ製薬会社の望みは、治験中の化合物がFDAに承認されることなのだ。2~3の承認されていない薬がいっしょに試験される場合、どの薬に効果があり、どれにないのか、また服作用の原因はそのうちの1つの薬なのか、あるいは組み合わせによるものかを見極めるのはより困難である。「データベースの管理、結果の解釈、データの所有という点からみれば、困難さは一段と増す」とイーライリリーのピースは付け加えた。

◆がんについての考え方を一新する
奇妙に聞こえるかもしれないが、これまでの多くの失敗、そしてさらに重要なことに今後の勝利にとって、がんの定義は重要な意味を持つ。約2,400年前のギリシャの医師ヒポクラテスは、がんを、体中に広がり「カニの足のように」体のほかの部分をつかんでしまう病気と述べた。同様に、今日の医学の教科書には、がんは増殖している腫瘍細胞が、細胞同士の間にある薄いたんぱく質でできた基底膜を押し破るときに始まると書かれている。がんになるためには、悪性細胞が体のほかの部分を侵略しなければならないとは、なんともしゃれた言い方だ。
ダートマス・メディカルス・スクールの薬理学および医学教授であるマイケル・スポーンはこうした考え方を「まったくのナンセンス!」と切り捨てる。彼は続けて言う。「我々はがんのこうした定義に1890年から縛られている。私もメディカルスクールで、侵襲があるまではがんではないと教えられた。これはまるで、真っ赤な炎が納屋の屋根からふきあがるまでは火事とは呼べないと言っているのと同じだ」。
実際、がんはこれより早く始まっている。そしてこのことにこそ、がんを押さえ込む最良の戦略があると最近NCIから「Eminent Scholar」の称号を受けたスポーンは考えている。長年にわたり我々のなかでくすぶり続けている燃えかすを積極的に探し出し、大きな火事になる前に消し止めようではないか、と。まず、がんが命にかかわる悪性の段階に入るのを防ぐのだ。
30年以上NCIに勤務したスポーンは、研究者のがんに対する考え方を変えるべく、長年尽力している。がんを、急速に増殖する細胞からなる侵略的なグループという「状態」ではなく、発ガンと呼ばれる「プロセス」と見なしてほしいのだ。スポーンによると、がんは様々な細胞形質転換や時には長い潜伏期間を経て発現する多段階の病気なのだ。
よって、特に病変(医師には形成異常、異常増殖、前がん状態として知られる)が起きた重大な局面では、こうしたプロセスを初期段階で阻害することが鍵を握ると考えられる。これを行うには医療関係者が、発がんの初期段階にある人は「健康」で治療に及ばずとの考えを捨てる必要がある。がんに向かって進んでいる人は健康ではないのだ。
この理論は至極まっとうであるうえ、今すぐ始められる点でも素晴らしい。前がん状態の細胞変異は様々な種類のがんへの進行を意味する。こうした変異の多くは比較的容易に発見でき、取り除くことができる。また、既存の薬や治療法で症状を改善できるものも多い。
最適な例としてパップスメア(子宮がん検査)が挙げられる。これは子宮頚管の細胞の前がん変化を発見するための検査だ。こうした簡単な検査、そしてこれに続いて病変部位の外科的摘出が1950年代に始まって以来、子宮頸がんの罹患率と死亡率はそれぞれ78%と79%も低下した。パップスメアが実施されていない国では子宮頸がんは女性の主要な死因のひとつとなっている。
結腸がんについても同じことが言える。結腸の腺腫性ポリープ(器官内膜の病変)のすべてが悪性で侵襲的なものになるとは限らない。しかし、結腸がんはこうした異常なプロセスを経てはじめて致命的なものとなるのである。バレット食道(がんの前兆)から角質増殖(頭と首のがん)まで、形成異常に似た状態は枚挙にいとまがない。確かに一部のがんについてはこうした検査が行われているが、その範囲を大幅に拡大していくことが必要だ。
発がんを示唆するバイオマーカーは、その精度が高まってはいるものの、信頼性が高いというには程遠いとの不満の声や、もっと詳しい情報が得られるまで結論を出すのは控えるべきだといった意見が一部に聞かれる(聞き覚えがあるコメントだ・・・)。一方、心臓病の研究者は正反対のやり方で、がん研究を大幅に上回る成果を収めている。高コレステロールや高血圧だからといって必ずしも将来、循環器疾患にかかるとは限らないが、とりあえずこうした症状は治療の対象となるのだ。
より早く前兆を発見すること(前がん状態を示す血液、尿、あるいは皮膚標本中のたんぱく質の状態や、進行する公算が大きい極めて早期のがんの発見)で大きな成果を収めているがん研究者はほんの一握りである。例えば、NCIで病理学のヘッドを務めるランス・リオッタは、先端技術を用いた血液検査で卵巣がんを発見できることを示した。この検査では女性の血液中にある約70種類のたんぱく質に固有な「クラスタパターン」を識別することができる。「我々は以前には知られていなかった数多くのマーカーを発見した」と彼は言う。これにより数多くの人命を救える可能性がある。既存の薬で早期の卵巣がんは90%以上が治癒可能であるが、末期では75%が死亡する。早期のたんぱく質検査により膵臓がんの延命率も改善されているとリオッタは語った。
しかし、こうした戦略には費用がかかる。バイオマーカー、および早期病変(その大半が侵襲性のがんにはならない)を発見するための大規模な検査は医療制度の大きな負担となり、致命的ではない病変摘出のため危険を伴う外科手術が増加する可能性があるとの声も一部に聞かれる。だが、何もしないコストはもっと大きいことも確かである。

(出典:PRESIDENT Online)

次へ続く





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最終更新日  2007/04/19 08:16:51 AM
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