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2007/04/19
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カテゴリ: 病気・医療関連
衝撃の事実! がん治療先進国アメリカの敗北 1
衝撃の事実! がん治療先進国アメリカの敗北 2

◆なぜ「転移」の研究がなされないのか
因果関係が不明な多くの問題が、がん研究の足かせとなっている。どちらが先だったのか?薬の有効性を判断するためのFDAの不完全な判断基準か、それとも薬をテストするための製薬会社の不完全なモデルか?
こうした疑問が投げかけられるのは、不完全な動物モデルのせいで、研究者に人の腫瘍も治癒できるとの誤った期待を抱かせる開発初期段階だけではない。FDAが患者の症状改善を裏付けるデータを探す臨床試験最終段階にも同様の疑問が当てはまる。そして、こちらの影響のほうがより重大だ。この場合の不完全なモデルとは腫瘍の緩解と呼ばれるものだ。
マウスや人の腫瘍が縮小し、それが薬の作用で起こっていることを確認できれば胸が躍る。腫瘍の縮小が良い兆候であるのは間違いないからだ。よって、これが大半の臨床試験の主な評価項目や目標のひとつになっていることは容易に理解できる。目で見て分かり、測定可能な目標であることが大きな理由である(がんの新薬についての新聞記事で「反応」と書いてあれば、それは腫瘍の縮小を指す)。
しかし、マウスモデルと同様に、腫瘍の緩解自体は、実際には病気の改善を正確に予見するものではない。化学療法や放射線療法で腫瘍が縮小することは度々ある。これによって外科手術によるがんの摘出が容易になるケースもある。そうでなくても、少なくともある程度の時間稼ぎにはなるだろう。しかし残念なことに、がんに侵された細胞が一つ残らず切除されない限り、緩解が見られても患者の生存率は改善しない公算が大きい。
というのは、腫瘍が極めて悪性であると診断された時、すでに10億個以上の細胞を持つブドウ程度の大きさになっていることが多いためである。発見される前に、こうしたがん細胞の一部はすでに分裂し、体の他の部分へと移動を始めている可能性が高い。これを転移という。
こうした細胞の大半は他の細胞や器官に定着しない。血流の激流に入った転移細胞は生き残りを賭けた苦しい戦いを余儀なくされる。しかし、転移のプロセスは始まっており、10億個もの細胞は狂ったように分裂して増殖し、血流の中を進もうとする。そしてもちろん、一部は転移に成功する。
最終的にがん患者を死に至らしめるのは局所的な腫瘍ではなく、転移のプロセスである。死因の実に90%が転移なのである。活発な細胞が骨、肝臓、肺、脳、その他の致命的な部分に広がり、大きな打撃をもたらすのだ。
がん研究者はこのたちの悪い現象を押さえ込もうと長年にわたり努力し、複雑な転移メカニズムについて研究を重ねてきたと読者は考えるだろう。ところが現実はそうではないのだ。1972年以降のNCIの助成金に関するフォーチュン誌の調査によると、例えば特定のがん(乳がんや前立腺がんなど)における転移の役割や、プロセスそのものの理解を目的とした転移に焦点を当てた研究提案は全体の0.5%にも満たなかった。昨年NCIの助成金を獲得した8,900件近い研究提案のうち、92%には転移という言葉すら使われていなかったのだ。
転移が軽くあしらわれているのは、「難解だから」とM.D.アンダーソンのジョシュ・フィドラーは述べている。「難しいことを研究しても見返りがないからね」。そしてこう付け加えた。「助成金の審査員は焦点を絞った研究提案を好む傾向にある。例えば、この抗体を使ってこうする、ああするとまくしたてれば、たぶん助成金をもらえるだろう」。
転移は広範囲にわたる概念である。体の隅々にまで及ぶ現象で何十というプロセスから成り立っている可能性がある。これほど可変要因が多い現象について反復可能な実験を行うのは難しい。しかし、こうした研究こそが必要なのだ。だが、研究者は再現可能な結果を数多く生み出せる、より簡単な実験を選んでいるとワインバーグは言う。残念ながら「データが積み重なることで、研究者は何か意味のあることをしているという錯覚に陥ってしまう」と彼は述べている。
データを積み上げたいとの欲求は新薬開発の規制プロセスの核心にも影響している。FDAの使命は薬の発売を承認する前にその安全性と効能を確認することである。よって規制当局は、薬が臨床試験である程度有効だったという確固たるデータを確認する必要がある。しかし、そもそも、何かが起こるのを阻止するための「活動」を見るのは難しい。体内を循環するたんぱく質など、がん細胞が他の細胞に広がり始めたことを示す適切なバイオマーカーがあると思われるが、現時点ではそれが何なのかは分かっていない。
よって、当然のことながら、製薬会社は転移の問題(患者を死に至らしめている原因)を解決することには重点を置かず、腫瘍を縮小させる薬の開発(患者の死亡とは関係のない)に焦点を当てているのだ。
いずれにせよ、こうした薬の多くが承認を取得している。もちろん承認されない薬も多数ある。そしてFDAは相変わらず、「がんとの闘い」を長期化させていると非難されている。しかし、非があるのは審判ではなく、選手のほうだろう。なぜなら腫瘍を縮小させる薬の多くが標準的な治療法と同程度の効果しか示していないからである。
昨年8月にブリティッシュ・メディカル・ジャーナルで発表された重要な研究のショッキングな結果もこうした問題のある現状を裏付けている。イタリア人の二人の薬理学者が1995年から2000年までに欧州で承認された新しい12のがん治療薬の臨床試験結果を詳しく調査し、適応症ごとに標準的な治療法との比較を行った。その結果、生存率の改善、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の改善、安全性の向上などの面で、いずれの新薬にも何ら大幅な優位性は認められなかった。しかし、これらの新薬はすべて、古い薬の何倍もの価格が付けられ、中には350倍のものさえあった。

◆なぜ新薬は期待はずれなのか
新薬開発で使用される不完全なモデル、腫瘍縮小についての執着、個々の細胞のメカニズムに注目するあまり体全体で起きていることをほとんど無視してしまうこと。こうした間違いはすべて臨床試験段階で顕在化する。臨床試験とは新薬やそのほかの医療プロセスを人でテストするための3段階から成る厳格に管理されたシステムだ。依然としてこれは新薬が研究段階を経て承認されるための唯一のプロセスであるが、このプロセスに不満を持たないがん研究者はいないだろう。
2003年2月、がんセンターの部長をはじめとする学識経験者の会議は、臨床試験が「長く、困難な」プロセスであり、規制に縛られていると結論付けた。大幅な改革や資金面での更なる支援がなければ、「このシステムは引き続き非効率で反応に乏しく、費用がかかりすぎる公算が大きい」と結論付けた。
患者はこの承認プロセスから得るものはほとんどないと考えている。成人がん患者のなんと97%が治験に参加しない現状を見ても、これは明らかだ。
臨床試験には大きな問題がふたつある。ひとつは、臨床試験費用の大半を負担する製薬会社には、試験対象の化合物として承認が得られる公算が大きいものを選ばざるをえない抗し難い動機がある点だ。これは試験期間が長期にわたり、莫大な費用がかかることからも明らかである。
さらに、この臨床試験システムにより製薬会社は最も重症の患者に最も有望な新化合物を試すことを余儀なくされる。こうした患者では薬の効果(例えば腫瘍の縮小)を見るのは比較的容易だが治癒はほぼ不可能である。その時点ではすでにがんは広がりすぎており、腫瘍はかなりの遺伝子突然変異を起こしている。よって、初期段階の患者には効き目があるかもしれない薬が承認されるチャンスは永久に失われる(有望とされてきた新薬が結局期待はずれとなっている大きな原因のひとつは、これかもしれない)。
ふたつ目の問題はさらに深刻だ。臨床試験の目標が、人の命を救うことではなく、「適切な」科学を行うという見当違いのものになっている点である。これは悪い治療を行っているという意味ではない。治験に参加した患者は特に丁寧な治療を受けている。しかし、治験の本当の目標は、治療Xは治療Yよりも優れているといった仮説を立証することにある。そして、残念なことに、この非常に長い治験プロセスによって得られた情報がほとんど何の役にも立っていないケースが多いのだ。新薬が既存の治療法よりも平均10%多く腫瘍を縮小することを10年以上かけて発見したとしても、どれほど多くの人の命がこれで助かるのだろうか?
直腸結腸がん治療薬として2月に承認された2つの新薬、「アービタックス」と「アバスチン」を例にとろう。いずれについても、臨床試験に必要な患者数を登録するだけで何ヵ月を要した。その後、治験に参加した医師は事前に設定されたうんざりするような手順に従い、投薬を行い、膨大なデータを集めていく(イムクローン社とFDAの有名なトラブルは臨床試験を適切に設定しなかったことから発生した)。
そして臨床医学者が長年にわたる臨床試験から得たのは、標準的な化学療法の投薬計画にアバスチンを加えると末期の結腸直腸がん患者約400人に平均4.7ヵ月の延命効果が見られたということである(これに先立つ乳がん患者への治験は失敗した)。この病気の末期患者は通常16ヵ月以上は生存しないことから、腫瘍学者はこうした効果をかなり顕著なものと考えている。
そしてアービタックスであるが、これは確かに腫瘍を縮小するものの、延命効果はまったく示していない。なかには同薬で良好な結果を得た患者もいたが、治験グループの平均延命率に変化はなかった。それでも、アービタックスは主に、すでに承認されているほかの治療法がすべて効果がなかった場合の併用療法として承認されたのだ。1週間当たりの投与費用は2,400ドルである。
同様のことがアストラゼネカのイレッサについても言える。イレッサは新たな生物製剤特効薬であり、がん細胞の分子レベルの信号伝達を阻害するように開発された化合物である。イレッサが症状の緩和や生存率の向上といった患者のためになる効能を持つことを示した治験はひとつもなかった。このことはアストラゼネカが強気のプレスリリースのなかで、当然の事のように認めた事実である。それでもFDAは、治験に参加した患者の10%に腫瘍に縮小がみられたと述べ、昨年、ある種の肺がんに対する最後の手段として同薬を使用することを承認した。

(出典:PRESIDENT Online)

次へ続く





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最終更新日  2007/04/19 08:11:49 AM
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