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「事案の概要」
A(昭和38年生)は、平成14年4月、印刷及び広告代理店業務等を主たる業務とするY1に再雇用され、その子会社であるY2又はY1の支店において、クリエイティブ・ディレクターの肩書で広告物の作成の業務に従事していたが、平成17年12月、赴任先の住居近くのマンションの11階から飛び降り自殺した。そこで、Aの遺族であるXらは、Aは、長時間労働によりうつ病を発症して自殺するに至ったと主張し、Yらに対し、不法行為又は債務不履行に基づき損害賠償請求した。
「判旨」
亡Aの業務は、時間外労働が多く、休日出勤も少なくないものであり、かつその内容も業務量が多く、心理的負担もかかるものであったと認められるから、加重なものであったと認められる。
Yらは、亡Aの業務量は、丙と比べて少なく、亡Aの業務量の少なさを心配する声さえあったから、その業務は過重ではない旨主張する。なるほど、丙は、職場における最終施錠者であることが多く、その労働時間・時間外労働時間も長時間に及んでいること及び担当案件の数自体は、亡Aよりも多かったことが認められる。しかしながら、前記認定の亡Aの労働時間、業務量、業務内容に照らせば、丙の業務時間や、手持ち案件の数が亡Aのそれよりも多いからといって、同人の業務が過重でなかったとはいえない。したがって、Yらの上記主張は採用できない。
ところで、労働者が過重な業務を継続することにより、精神疾患を発症し、これにより自殺を招来することがあることは、周知の事実である。そして、亡Aは、前記認定のとおり、過重な業務に従事していたものであるところ、本件全証拠に照らしても業務以外に、同人がうつ病を発症する原因となるような事情はうかがえない。そうすると、亡Aは、過重な業務により、前記認定のとおりうつ病を発症し、これによって本件自殺に至ったものであると認められる。
以上によれば、Yらは、亡Aの労働時間を適切に管理せず、同人の労働時間、休憩時間、休日等を適正に確保することなく、長時間労働に従事させ、作業内容の軽減等適切な措置を採らなかったものであるから、安全配慮義務違反が認められる。そして、被告らの上記安全配慮義務違反と本件死亡との間には、因果関係が認められる。
したがって、Yらは、本件死亡について安全配慮義務違反の債務不履行責任あるいは不法行為責任を負うと認められる。
判例時報2133号131頁
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