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「事案の概要」
本件は、破産者Aの代理人である弁護士がYを含む債権者一般に対して債務整理開始通知(受任通知)を送付した行為が、破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たるか否かが問題となった事案である。
本件の原判決は、支払の停止に当たらないとしたが、本件通知と同じ法律事務所の同じ書式の債務整理開始通知について、別件である東京高判平成22年12月20日は、支払の停止に当たるとしており、判断が分かれている状況にあった。
「判旨」
破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」とは、債務者が、支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払いをすることができないと考えて、その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解される。
これを本件についてみると、本件通知には、債務者である甲野が、自らの債務の支払いの猶予又は減免等についての事務である債務整理を、法律事務の専門家である弁護士らに委任した旨の記載がされており、また、甲野の代理人である当該弁護士らが、債権者一般に宛てて債務者等への連絡及び取り立て行為の中止を求めるなど甲野の債務につき統一的かつ公平な弁済を図ろうとしている旨をうかがわせる記載がされていたというのである。そして、甲野が単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないという本件の事情を考慮すると、上記各記載のある本件通知には、甲野が自己破産を予定している旨が明示されていなくても、甲野が支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払いをすることができないことが、少なくとも黙示的に外部に表示されているとみるのが相当である。
そうすると、甲野の代理人である本件弁護士らが債権者一般に対して本件通知を送付した行為は、破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たるというべきである。
判例時報2169号9頁
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