「入っていいぞ」
と、ヒトラーが言った。
エバにとっては、はじめて目にする、 この山荘内での愛人の仕事場だった。
そもそも、政治や商売にはまるで興味が無かったエバにとっては、この執務室の中は、とても殺伐とした空間のようにも感じられた。仕事にしか生きがいを持たないような男たちが使っている、ごく普通の書斎にである。
ただし、 部屋の奥の方に飾ってある大きな鏡だけが、ひどくエバの目を引き付けた。この書斎には、あまりにも場違いな感じがする、 アンティークな縁取りのついた鏡なのだ。
まるで、エバの気持ちを読んだかのごとく、ヒトラーは、この鏡の前にまで歩み向かったのだった。
「お前も、こっちに来い」
と、ヒトラーがエバに命じた。
訳も分からぬまま、エバは言われるままにするしかなかった。
シュネーヴィットヒェン(白雪姫)の魔法の鏡だ」
ヒトラーは、いきなり、そう告げたのだった。
(つづきは 「ルシーの明日とその他の物語」 で)
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