「もしもーし。いますか」
と、私は、開きっ放しのドアから顔を突っ込んで、声をかけてみた。
「おたくの郵便物が、うちに届いていましたよ」
いるのかいないのか、すぐには彼は現れなかった。
そこで私は、もっと大胆に部屋の中を覗き込んでみたのだった。
信じられないほど贅沢な家財道具とかは見当たらなかった。むしろ、質素なほど部屋の中は置かれているものが少なく、やはり、彼は低所得のただの庶民だったらしいと分かって、私は少し安心したのだった。
その時、部屋の奥からトイレの水を流す音が聞こえてきて、間もなく、彼が慌てて姿を現わした。
「わざわざ、すみません」
私の前に対峙した彼は、うろたえた感じで、そう口にした。なんだか、部屋の中を見られたくないような様子だ。
この男、何をそんなに弱っているのだろう。私が見た限りでは、そんな隠し事があるような部屋にも感じられなかったのだが。
私は、さりげなく、もう一度、部屋の中を見回してみた。そこで、地味な内装の中でも、テレビの近くの壁に貼られていた女性のヌードポスターが、ひときわ目をひく事に気が付いたのだった。 (つづく)
「ルシーの明日とその他の物語」
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