例えば、通常の陶芸工房ではお弟子さんや一般の方がグループ単位で決まった時間に伝統工芸に ついて教え、体験してもらうというコンテンツが多いのですが、それでは富裕者層は満足しません。本物のプロから教わりたいという気持ちが強いのです。富裕層向けの取り組みをされている 岐阜県の加治田刀剣さんでは、刀匠自らがマンツーマンで教えるというスタイルを取っています。 誰にでもできる体験ではないので付加価値がつき、高価格でもとても喜ばれます。この体験コン テンツは1人10万円近い料金設定ですが、外国人が殺到しているそうです。このように人間国宝 から直接手ほどきを受けて何かを作る体験など、値段は高くても一歩踏み込んだ特別なサービス の提供が必要になります。
次に「融通のきく体制」もポイントになります。富裕層は、貸し切りたいとか、普段は非公開になっているところに入りたいなどの要求が強く、特別感を大事にしています。一般の旅行者と同じものを見るのではなく、自分だけのために開けてほしい。そういった高い要求のオーダーがある ので、柔軟に対応できるような体制を整えておくことも重要です。
あるホテルのコンシェルジュの方は、富裕層のお客様から「東京大学の〇〇先生が万葉集を研究していると聞いた。うちの娘が大学で日本文化を勉強していて、今日その教授から直接レクチャー を受けたいと言っている」といったオーダーを受けたこともあるそうです。想定外のカスタムオー ダーに対していかに柔軟な対応ができるのかというところで、ビジネスが左右されます。
さらに言えば商品性、つまり商品としてきちんと完成されているのか、たやすく手に入らない稀少性があるのかという点も重視されています。「1日1人限定」とか「高価である」ということが 重要です。日本人は高品質のサービスを安く提供したがる傾向にあります。実は、価値に見合った 料金設定が大事なのです。富裕層は価値のあるものに対してはいくらでもお金を払うので、決して 安売りをする必要はなく、自信を持って値段をつけることが大切です。
これは富裕層をターゲットにした『Luxury Travel』に限った話ではありません。地域のブランド を作っていくにあたり、まずは地域の観光資源についてしっかりと把握する必要があります。実 は今あるもので十分だということです。大事なのはそれをインバウンドのビジター、あるいは富裕層の心に刺さるよう磨き上げていくことです。また、点だけで旅行する人はいませんので広域で 連携することが大切です。何かひとつフックになるようなコンテンツをもちながら、広域で連携してルートを作り、シェアしていく必要があります。さらには、ストーリー性やその土地に根付い た歴史や文化をしっかりと伝えていくことで、日本ならでは、その土地ならではの魅力が生まれます。テクニカルな部分ではしっかりとターゲットを絞り込んだプロモーションを実施していくことも大切です。
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