- アメリカ政府と暗号化技術 -
1941年、日本海軍による真珠湾攻撃を機にアメリカは情報収集機関を統合し、第二次世界大戦中は日本軍の通信を傍受し戦況を有利に運びました。
そこへ「公開鍵暗号」という大きな敵が現れようとしていました。
公開鍵暗号が一般化すると盗聴ができなくなるからです。
アメリカの政府機関は、ホイットフィールド・ディフィー(前述)の学会やマイクロソフト社へ圧力をかけます。
暗号化技術が「兵器」と見なされ、兵器の輸出にあたるからという理由です。
NSAとしては、国際テロリストや犯罪組織、麻薬機関などが暗号化技術を使い、盗聴できなくなっては国家安全保障が揺らぐというのです。
日本でも少し前に特定秘密保護法案が提出されましたね。確か強行採決されました。
1988年、アメリカネバダ州の核実験場で行われた反核デモ。これに関わったとして、フィル・ジマーマンが投獄されます。
1980年代、中米での紛争にアメリカが関与することに反対する平和運動に参加していた仲間の事務所に、捜査令状も持たないFBIが侵入しフロッピーディスクを押収しました。
フロッピーディスクには運動家の名簿が入っていました。
ジマーマンは暗号化技術が絶対に必要だと活動のかたわら、暗号化技術に必要な数学を独学で学び、暗号化プログラムを開発します。
ソフト開発を始めて6年目の1990年、もう少しで完成というとき、アメリカ議会に法案266号が提出されました。
通信業者は捜査当局の求めに応じて内容を開示しなければならないというものです。
この法案が通れば、暗号技術を持つこと自体が違法行為になってしまいます。
そこでジマーマンは完成を急ぎ、完成した暗号化ソフトを知人の手を借り無償でインターネット上に公開します。暗号化ソフトは瞬く間に世界中に広まります。
これで事実上、暗号化ソフトは法で取り締まることができなくなりました。
このソフトはPGP(Pretty Good Privacy)といいます。
- バナー -
インターネットを利用した特徴的なサービスとして、ジョナサン・ネルソンが始めた「バナー広告」があります。
バナーとは今さら言うまでもありませんが、インターネットを使った広告媒体で、Yahoo!など無料サイトや、ブログなどに貼ってある画像で、クリックするとその広告が開き、うまく行くとそこで売買が発生するものです。
バナー広告は、いつ誰がどの広告を開いたか、きちんと記録されるのでクリック数に対する広告費に取りこぼしがないことと、契約が成立した場合、広告主から何パーセントかの報酬を得られる利点があります。
仮に成約率が1パーセントとしても、クリックが1万回あれば、統計的に100件の売買が成立することになります。
署名活動をする場合、一万人の署名を集めるのは気の遠くなる作業です。しかし、
その1万回を実現できるのがインターネットなのです。
ジョナサン・ネルソンは、わずかな資本をもとに、ビルの倉庫を改造したオフィスで開業し、あっという間に社員15人の会社を設立します。
社長としては食事を摂る間もないほど忙しい仕事ですが、バナーを貼る広告主としては寝ていても商売が発生するという、インターネットならではの商業形態が出来上がりました。
ただ、商業は常に変化して新しい形態を生み出します。
微妙においしいのは、クリック数に対して、ワンクリックいくらという商業形態でしょう。
例えばバナーが一回クリックされたら、広告主が5円払うというもの。バナーを貼るサイト運営者は一か月のクリック数に5円を掛けた収入があります。
でも実は、おいしいのはここではありません。
例えば広告主には1クリックごとに8円を徴収し、サイト運営者には5円支払い、差額の3円を実入りにするというもの。仲介人、いわゆるブローカーです。
広告主は広告料の支払いがあり、クリックがあれば、まったく売れなくても広告料の支払いが発生します。また、自社サイトを運営するコストがかかります。
サイト運営者は本来、広告主から8円の収入があるものを5円しか回収できません。
仲介人は、まさに寝ていても儲かるのです。
人々の生活に革新をもたらしたインターネット。商業形態にも大きな変化が生まれました。
町の商店街は衰退に拍車がかかります。
便利なインターネットではありますが、先日起きた座間市の事件のように悲劇も生み出します。
インターネットで儲けた人もいれば、巨額の借金を抱えた人もいます。
でも今後インターネットがなくなることはないでしょう。
「インターネットの起源」 - 終 -
参考:
NHK 新・電子立国「第9回 コンピューター地球網」
Wikipediaほか
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