読書: Susan Cain, 『Quiet』 ── 高度感受性とドーパミン作動報酬系



高度感受性というのは 90 年代に新たに提唱された, 主として内向的な性格の人に多く見られる気質の類型である. 他人の苦しみや悩みや喜びなどの感情を敏感に察知してあたかも自分自身の事柄のようにその感情を深く共有してしまう. このような気質の持ち主としてエレノア・ルーズベルト (Eleanor Roosevelt) がアイコンのように取り上げられている.

ドーパミン作動報酬系というのは, 主として外交的な性格の人に多く見られる気質のメカニズムで, 周囲の環境や社会の動きに迅速に対応し行動を起こす仕組みである. このような気質を持った人間が多いのは金融業界で, サブプライムローン問題, IT バブル崩壊およびリーマンショックの時の出来事を通じてこの気質について語られている. マーケットの暴落によって金融のプロフェッショナルを含む大量の投資家が大きな損失を被った. しかしそんな中でも確実に利益を手にした人々がいて, ウォーレン・バフェット (Warren Buffett) はそのような一人である. 彼らは混乱の中でどのような思考を取ったのか. 彼らのドーパミン作動報酬系の仕組みは他の大損をしたトレーダーたちと何が違ったのか.

最初に読んだときには, エレノア・ルーズベルトやウォーレン・バフェットに代表されるこれらの人たちを, 超人的な能力の持ち主 (もっと言えば超能力者) のように思った. 事実として, たとえばエレノア・ルーズベルトは最初のファーストレディーとして人権問題において成し遂げた大きな足跡がその誠実な人柄と共に未だに称賛されているし, ウォーレン・バフェットはすでに伝説的な投資家として知らない者がいない.

けれども, 本を何回か読み返す中で, 彼らの内にある独自性とか異質性が際立って見えてきて, 彼らは社会の中で普通に幸福に生きることができたのか, できているのかといったことのほうが気になってきた.

彼らのような人々が, 時にある面において傑出した能力を示すことは確かにあると思う. しかし同時に大きな生きにくさや周囲への違和感も抱えているのではないだろうかと感じる.
著者のスーザン・ケインの, 何とかして彼らを知りたい, 彼らのことを伝えたいという熱も感じられる二章である.

自分としての結論に辿り着いたとは言えない. 時間を置いてまた読み返すときのために思ったことを書き留めておく.
【このカテゴリーの最新記事】
posted by 底彦 at 13:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日常生活

2017年05月04日

この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/6231977

この記事へのトラックバック
ファン
検索
<< 2024年12月 >>
1
2 3 4 5 6 7
8
9 10 11 12 13 14
15
16 17 18 19 20 21
22
23 24 25 26 27 28
29
30 31
最新記事
最新コメント
眼科の定期検査 〜 散歩 by コトタマ (02/15)
眼科の定期検査 by 三文字寄れば文殊のヒフミヨ (09/21)
本を読んで過ごす by 底彦 (12/13)
本を読んで過ごす by ねこ (12/12)
数学の計算をする by 底彦 (12/04)
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
仕事 (59)
社会復帰 (22)
(44)
コンピューター (211)
(1)
借金 (8)
勉強 (13)
(13)
数学 (97)
運動 (8)
日常生活 (1407)
(204)
健康 (38)
読書 (21)
プロフィール

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ
にほんブログ村
にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村
にほんブログ村 IT技術ブログ プログラム・プログラマーへ
にほんブログ村
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: