ニュートン別冊 ゼロからわかる心理学 知れば知るほど面白い!心と行動の科学 から
監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス
発達の心理学
中年期は人生の転換期
最も安定、充実している時期と言われる一方、
中年クライシスという言葉も有名です。
仕事では責任ある地位につき、やりがいを感じる一方で、
その責任の重さや、
体力や能力の限界、
親の介護など
様々な事態に直面する時期です。
人生の正午とも言われ、
最も充実した時期であるとともに転換期とも言えます。
この中年期を詳しく研究したのが、
心理学者のダニエル・レビンソン(1920〜1994)です。
レビンソンは様々な職業に就く中年の男性について
詳細な面接調査を行った結果、
人生には大きく3つの移行期が訪れると考えました。
その移行期は
前成人期への移行(17〜22歳)、
成人期(中年期)への移行(40〜45歳)、
老年期への移行(60〜65歳)
であるといいます。
レビンソンは特に40歳から45歳における移行が重要だと考えました。
ここが人生の折り返し地点であると考えたのです。
ここは自分のやってきたことを再評価して、
自分がこれからできることについて考え、
新しい生き方を見つけ出す時期としました。
中年期は、徹夜が無理だと感じたり体力の衰えを感じたりと
老いへの自覚が出てきます。
また、仕事面で責任が増してくる一方で
限界が見えてくる場合もあるでしょう。
一方、親の介護が始まる時期でもあります。
これまでの生き方について振り返る機会も多くなります。
また、家庭で子育てを見なってきた女性では、
子供の独立が大きな転機になります。
育児だけに力を注いできた女性の場合、
子供が独立すると、
自分の存在意義がなくなったように感じ、悩むことがあります。
子供の独立は、自分が新しいことに取り組むチャンスだと捉え、
仕事や趣味、勉強など
新しい人生を始める
準備をすることが重要だと考えられてます。
エリクソンによるライフサイクル論では、
前成人期は、
パートナーや周りの人たちと
親密な関係を築いていく時期とされます。
一方、中年期の課題は、
子供や次の世代を育てることになります。
つまり、自分の子供を産み育てることや、
次世代に残す仕事や作品を生み出し、
次の世代に継承していく
といったことに取り組む時期だといいます。
中年期以前は、
個人のライフサイクルの中だけの課題に取り組んできましたが、
中年期は世代間という
長い時間軸や
社会とのつながりを考えるという意味で、
それまでと大きく異なると言えます。
これがうまくいかなければ、
関心は自分自身にとどまり、
停滞の状態になるとされます。
そして老年期への移行時期では、
改めて社会との関わり方について
バランスの良い点を見つけていくことになります。