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2018年09月14日

スポーツ選手の筋損傷リスクにエストロゲン受容体遺伝子のT/C遺伝子多型関連 順大、Cの塩基を1つ有するごとに筋損傷リスクが30%低下



順大、Cの塩基を1つ有するごとに筋損傷リスクが30%低下

QLifePro 医療ニュース2018年9月13日 (木)配信 一般内科疾患整形外科疾患その他

 順天堂大学は9月10日、エストロゲン受容体遺伝子の個人差のひとつであるT/C遺伝子多型(SNP)が、
筋スティフネス(筋硬度)を介して肉離れなどの筋損傷リスクに関連することを明らかにしたと発表した。

この研究は、同大大学院スポーツ健康科学研究科の熊谷仁研究員(日本学術振興会特別研究員)、福典之先任准教授らの研究グループによるもの。

研究成果は「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載された。

 スポーツ傷害の予防は、アスリートの競技成績やキャリアにおいて極めて重要である。

とくに、肉離れなどの筋損傷は2016年のリオデジャネイロオリンピック競技大会で、
全スポーツ傷害のうち約30%を占める最も発症数が多い傷害だった。

また、東京オリンピック・パラリンピックを目前に控えていることからも、アスリートにおける筋損傷の予防法の確立が求められている。

 筋損傷の発生頻度には性差が存在し、
 女性で発症率が低いことが明らかにされている。

このことから、女性ホルモン「エストロゲン」の働きが筋損傷に対して保護的に作用する可能性が考えられる。

エストロゲンの働きは、男女ともにエストロゲン受容体の遺伝子多型によって調節されることから、研究チームはエストロゲン受容体の遺伝子多型が筋損傷の発症に関連するのではないかと考えたという。

 研究グループは、トップレベルの日本人アスリート1,311名を対象に、筋損傷の受傷歴とエストロゲン受容体遺伝子多型の関連を調査した。
その結果、SNPのT/C多型のCの塩基を有するアスリートでは、筋損傷の既往歴が低いことが示され、さらにCの塩基を1つ有するごとに筋損傷リスクが30%低下することが判明したという。

 次に、このメカニズムを検討するため、
筋肉の伸びにくさの指標であり筋損傷の危険因子である筋スティフネスに着目。

成人男女261名を対象に、超音波剪断波エラストグラフィによって筋スティフネスを評価し、T/C多型との関連を検討した。

その結果、筋損傷のリスクが低いCの塩基を有する対象者は、筋スティフネスが低いことが明らかになった。これらの研究結果から、エストロゲン受容体遺伝子多型のCの塩基を有する者では、筋スティフネスが低く、その結果として筋損傷の受傷率が低いことが示唆されたとしている。

 近年、世界的にスポーツ傷害に関連する遺伝要因を解明することの重要性が指摘されており、
その背景としてトレーニングなどの外的要因のみを考慮したアプローチのみでは傷害発症を抑制できていない点が挙げられている。

今回の研究成果は、トレーニングといった外的要因と遺伝子多型といった内的要因の両方を考慮した筋損傷予防プログラムの確立に貢献できる可能性があるという。

しかし、多数の遺伝子多型が筋損傷に関連していると考えられているので、
多角的なアプローチにより遺伝要因の全貌を明らかにする必要がある。

研究グループは、スポーツ傷害に関連する多くの遺伝要因を明らかにし、外的要因だけでなく遺伝子多型といった内的要因も考慮した新たなスポーツ傷害の予防プログラム確立に繋げていきたいと述べている。
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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