新型コロナ(COVID19)ワクチン
ワクチンと新型コロナウイルスと検疫
【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第5回から抜粋
公開日:2020/05/12 企画・制作 ケアネット
>COVID-19のワクチンは武漢での発生当初から
世界各国で盛んに研究開発が進み、
4月28日現在で90以上のワクチン候補が誕生し、
うちすでに6ワクチンはヒトに対する第I相試験に進んでいる。
古典的な弱毒化または不活化の手法は当然試されているが、
既知のコロナウイルスでさえ、
充分な効果のあるものが登場していない。
新興病原体に対するワクチン開発で近年主流になっているのが、
”遺伝子組み換え手法”で、
ヒトへの病原性がない他のウイルスに目的ウイルスの遺伝子を
組み込むことで特異抗原を産生させ、
そのまま“生”として、または不活化してワクチンとする。
2018年から続いているコンゴ民主共和国でのエボラ出血熱
アウトブレイクで濃厚接触者へのring vaccinationとして
行われているワクチンも遺伝子組み換え“生”ワクチン
(rVSV-ΔZEBOVワクチン)である。
2012年に登場したMERSコロナウイルスにはこの手法で
ワクチン開発が進められ、動物実験までは行われている。
COVID-19ワクチンの開発手法もこれを採用しているチームが多い。
そのほか、核酸ワクチンという手法もある。
ウイルス粒子ではなく、ヒトの免疫系が反応しうる
ウイルス抗原部分をコードしたウイルスゲノム(
RNAのまま、またはDNAに変換)を
ワクチンとして接種し、
ヒト細胞に取り込ませることで抗原を産生させ、
それに対する免疫応答を惹起させる。
コロナウイルスの持つタンパクのうち
特にヒト免疫が反応しやすいもの(サブユニットと呼ぶ)
だけを抽出してワクチン成分とする
サブユニットワクチンもある。
2003年に登場したSARSコロナウイルスに対しては
すでにサブユニットワクチンが開発済みであるが、
SARSが完全に封じ込められた影響もあり、
サルでの動物実験に留まりヒトでの治験実績はない。
これら以外にもワクチン開発技術には大小の異同があり、
それぞれのチームが研究開発のしのぎを削っている。
わずか4ヵ月あまり前に世界に登場した病原体に対して、
すでに90以上のチームがワクチン開発に着手している
ことには希望が持てるが、
しかし安全かつ効果のあるワクチンの開発は
決して容易なことではない。
COVID-19ワクチンへ希望は持ちつつも過剰な期待はせず、
感染拡大防止の努力を徹底した上で、
既存ワクチンの接種を遅れることなく
推し進めることこそが医療職の使命と言える。
講師紹介
守屋 章成 ( もりや あきなり ) 氏名古屋検疫所 中部空港検疫所支所 検疫衛生課
https://www.carenet.com/series/vaccine/cg002544_g005.html?utm_source=m15&utm_medium=email&utm_campaign=2020050605