…いろいろ、ハマりやすい性格なんですよね。
その映画はニュージーランド人のピーター・ジャクソン監督が、イギリスが舞台である物語をニュージーランドで撮影した3部作の構成だったのですが、そのうちの第2部「The Two Towers(二つの塔)」が金曜ロードショーか何かでTVでやっていて、確か第3部「The Return of the King(王の帰還)」が映画館で上映するという時だったと思います。
私はこの作品について全く知らず、本当に偶然TVをつけたらやっていたので、見てみたという出会いでした。
長い歳月を経て、時間的にこの「The Lord of the Rings」の前のお話となる「ホビット」という映画の3部作も2012年から公開・制作されているようです。(?@思いがけない冒険、?A竜に奪われた王国、?Bゆきて帰りし物語)。
「The Lord of the Rings」は物語や登場人物のバックグラウンドの設定がかなり緻密で、様々な「種族」が登場し、しかも特殊な「言語」があったりします。今人気のロールプレイングゲームとかの着想も、この「The Lord of the Rings」が元になっているとも言われているようです。
物語の内容は8〜9割が暗い感じのお話で、原作となった「指輪物語」のイギリス人の著者J.R.R.トールキンは「寓意は無い」と公言していたようですが、人によっては「息子を戦地や特攻隊に送り出す親の心境」とか「死にに行く物語」のように見えるそうです。
とても長くて、原作の方はファンでも「時々ダレル」と言うくらい展開が遅い場面もあったりする物語ですが、その内容をごく簡単に言うなら、「世界を統べる力をもつ“指輪”を永遠に葬るために、滅びの山の火口へそれを捨てに行く旅の物語」という感じです。
その旅は、事情があって命がけの旅で、「行ったら帰って来れない」ような旅。
旅の途中に命の危険が沢山ある。
しかも指輪を確実に葬らなければ世界が悪の冥王に支配され、全ての種族が苦しむことになってしまうという、「世界の運命を背負っている」ほどの重い責任を担っている。
エルフ、ドワーフ、人間、ホビット、賢者、様々な種族が居るけど、この重大な責務を担うことになったのは、ある意味では一番向いていないような「ホビット」という種族でした。
私が、この映画や物語のどこに一番感動したかと言うと…言葉で表すのは難しいのですが、「弱さも愛せる」という感覚を初めて理解した感じです。そして「弱かったり、力の無い者でも、何かを成し遂げることが出来る」という事を教えられたというか、希望をもらったというか。
このお話は本当はもっと深くて、あとキリスト教的な意味合いとかもあるような気がします。でも物語のある一つの切り口として私が理解したのは、そのような事でした。
ホビットは身体が小さくて戦闘能力も低いし、賢者ほど賢くもない。ただ素朴で、お酒を飲んだりおしゃべりして笑うのが好き。指輪を渡されたホビットの青年「フロド」も戦うとあまり強くなく、旅を同行してくれる仲間に何度も助けられます。
それからこの指輪は特殊な力を持っているのですが。
持ち主の精神を蝕むというのか…持ち主の支配欲・権力欲をかきたてたり、信頼できる人へ疑念を抱かせるような力があります。
そのためフロドは、自分自身の内面ともずっと戦い続けなければいけませんでした。
でも実はその精神力が、ホビットだけの持ちうる強さでした。
人間は力を、賢者は知恵をもっているけど、心が悪に転じてしまったら指輪の力を悪用してしまう。
ホビットは素朴で力は弱いかもしれないけど、強い心を持っている。だから、この重大な責務を全うできるのはホビットではないかと、指輪を託されたのでした。
フロドは弱くても本当に一生懸命で。しかも行ったらほとんど生きて帰って来れる可能性の無い旅に、ただ使命感だけで向かっていく。そんな尊い姿に、ちょっと戦いが弱かったって、仲間に疑心暗鬼になってしまったって、まるごとが愛しい存在だなと思ってしまいました。
それから旅の仲間達も、それぞれの立場における「正義」や「信条」があり、悲しいことにそれが互いに相容れないことがあって衝突してしまったりもします。でも、その人にとってはそれが正しくて、それぞれが真剣に生きている。
その「自分にとって正しい生き方」を全うしようとしたり、上手くいかなくて葛藤する登場人物たちの姿を見ると、現実世界の人々が生きる姿に重なるような気がしました。
多くの人が、自分の生き方というものについて悩んでいるように思います。「これでいい」と思えたり、思えなかったり。みんなが弱さや何かしらの欠点を持ちながら生きているという事に気付かされた感じでした。
それから私は、以前は自分の欠点を挙げては「自分ってダメだな」と落ち込んでばかりいたのですが。自分も同じで、欠点や弱さがある人間だ、それはしょうがないんだと初めてそう思えました。自分の弱さを初めて受け入れられた感じでした。
逆に弱さも欠点も無い自分だなんて、自分は何様になるつもりだったのだろう…。
それは自分の欠点を克服する努力をしなくて良いとか、妥協の意味では無いのですが。
「ありのままの自分を理解して受け入れられた」そんな感じです。
みんなが弱さを抱えて、でも一生懸命に生きている。それは愛おしい姿だと思いました。
この映画「The Lord of the Rings」の第1部「The Fellowship of the Ring(旅の仲間)」、第2部「The Two Towers(二つの塔)」、第3部「The Return of the King(王の帰還)」は、とても見ごたえのある物語だと思います。
第1部のホビットの住む「ホビット庄」の美しい描写や、フロド役を演じた「イライジャ・ウッド」の美しいエメラルド・グリーンの瞳には、本当に魅了されてしまいました。
このホビット庄の描写だけでなく、他の舞台や小道具、さらにアクターが身につける衣装まで、制作スタッフの情熱は素晴らしいと思います。
またアクションが好きという人にもオススメな気がします。制作当時として先端的技術だった撮影方法により、躍動感溢れる画が楽しめると思います。
それからちょっとグロめな敵キャラが好きという人も、監督がけっこうマニアックな感じで、クオリティの高い気持ち悪めのキャラクターを楽しめると思います。
そして物語の世界観をひきたてるBGMでは、戦闘シーンでは臨場感を出したり、ある時は雄大な大地の広がりを感じさせ、またある時は神話のような雰囲気を作り出すというような、様々な音楽が楽しめます。
映画3部作のエンディングテーマ、Annie Lennox(アニー・レノックス)の『Into The West』という曲は、旅の仲間達が一生懸命に生きた物語を見た後に聴くと、泣かずには居られないような感動的音楽です。
『Into The West』
以前イギリス人の知人に、「最後にフロドが西へ旅立つというのは何を意味しているのか?」と質問したことがあります。
「それは、はっきりとではないけれど‘死’を暗喩しているのではないか」というのが、その人の答えでした。
あんなに一生懸命に旅を続けてついに使命を果たしたフロドなのに、現世では決して傷が癒えることがない、救われないというのはとても悲しいと思いました。
その姿は、キリスト教で言えば「自己犠牲」というものにあたるそうです。
“あなたの愛しくも疲れきった頭を
横たえなさい
夜がやって来る
あなたは旅の終わりに至ったのです”
“もうお眠りなさい
今までに訪れた者たちの夢を見て
彼らははるか彼方の岸辺から
呼びかけている”
“なぜ泣くのです?
その頬を流れる涙はどうしたのです?
じきにあなたにもわかるはず
すべての恐怖は過ぎ去っていくと”
“この腕の中で安全に
あなたはひたすらに眠っている”
“水平線に
何が見えますか?
なぜ白いカモメたちは鳴くのでしょう”
“海の向こうに
青白い月が昇る
船がやって来て
あなたを家へと運んでくれる”
“すべてが銀色のガラスに変わるのです
水面に映る光のように
あらゆる魂は束の間のもの”
“希望は
夜の世界の中に消えていく
思い出や時間をなくした 闇の中で”
“言わないで
私たちがもう終わってしまったなんて
白い岸辺が呼んでいる
あなたと私はまた出会うのだから”
“水面に光を映して
灰色の船は
西へと進んでいくのです”
3部作の一つ一つも結構長く、それが3作品なので、全部見るにはちょっと体力がいるかもしれません。
時間と体力があったら、ぜひ一度、見てみて下さい。
◎第一部:「旅の仲間」
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◎第2部:「二つの塔」
ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 コレクターズ・エディション [DVD] 新品価格 |
◎第3部:「王の帰還」
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『井戸に差し込んだ光』より若干、新しめ、明るめなお話(^^;)??
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