米海軍が2020年3月に就役させた、サンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦12番艦(LPD-28)が登場しました。
サンアントニオ級といえば、先進マストを搭載した船で夢のマストとも呼ばれていました。
しかし、就役した12番艦フォートローダーデールに先進マストは搭載されませんでした。
先進マストは失敗作だったのか?統合マストのFFMへの影響は出るのか?!
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(1)先進マスト搭載を取りやめたサンアントニオ級!
2020年3月に、米海軍でサンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦の12番艦「フォートローダーデール」が就役しました。
公開された写真を見てみると、衝撃的な写真となっておりました。
図1 サンアントニオ級12番艦(LPD-28)
引用URL:https://www.navsea.navy.mil/Media/Images/igphoto/2002271771
サンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦といえば、近未来的なフォルムで一時期もてはやされた艦です。
図2 サンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦
引用URL:wiki
特徴的なのが、 先進マスト(エンクローズドマスト)であり現代の潮流である統合マストの先鞭といえる存在です。
果たして、サンアントニオ級の従来の設計は失敗であったのでしょうか?
1.1 先進型閉囲マスト/センサー(AEM/S)とは?
先進型閉囲マスト(又はエンクローズドマスト)は、米海軍が開発した艦艇のステルス性を考慮した新型マストです。
レーダーやセンサーといった従来型の船のマストは、艦船のステルス性を大きく損なっていました。
先進型閉囲マストは、自艦のレーダーやセンサーの特定電波周波数のみを透過させ、他の電波周波数反射を逸らせることでステルス性を確保しようとするものです。
図3 実験艦ラザフォード
引用URL:wiki
マスト内に機器を収納できることで、機器の整備性や対塩害対策などに効果を発揮しています。
現代の軍艦設計に影響を与え、統合マストの先鞭といってもよい存在です。
1.2 サンアントニオ級の先進閉囲マスト建造!
サンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦は、先進型マスト搭載の先例となりました。
図4 サンアントニオ級へのマスト搭載
引用URL:https://army-news.ru/images_stati/transporty_doki_san_antonio_4.jpg
従来型のレーダー搭載部分に、多方形のステルス性を考慮したマストを搭載しています。
比較的軽量なFPR製のカバーを使用することで、重量軽減と電波透過を両立して夢のマストと軍事技術では話題となっていました。
先進型閉囲マスト/センサーの経緯があるからこそ、統合マストへ設計が進化していきました。
1.3 30FFMも統合マスト設計へ進化している!
海上自衛隊も、従来型マストからようやく進化して30FFMにて統合マストを採用しました。
図5 30FFM(イメージ図)
引用URL:wiki
かつて、あきづき型(19DD)建造の設計時に登場した先進型プランで検討された統合マストが登場したといえます。
図6 19DD先進設計プラン
19DD(あきづき型)の時は、ちょうど防衛費削減のあおりで現実的な設計になってしまいました。
ようやく海上自衛隊も、統合マストに進化すると思ったとところで米海軍の先進マスト取りやめとなってしまいました。
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(2)建造コスト高騰が、マストを元に戻した
サンアントニオ級は、現在も建造が行われている艦艇ですが、最初の艦が起工されから20年が経過しました。
この間には建造所の統廃合などがあり、さらに1隻約14億ドルという高額な建造費となっています。
ドック型輸送揚陸艦は、強襲揚陸艦に比べると優先度が低くなります。
2.1 コスト削減のため先進マストを取りやめ!
就役したばかりのLPD-28「フォートローダーデール」については、建造コスト削減のため先進マスト搭載を取りやめたと、米海軍ニュースにて報道されています。
マストについても、従来のステルスマストに戻す設計となりました。
この設計は、サンアントニオ級の改良型となるフライト?Uにも引き継がれます。
図7 サンアントニオ級フライト?U型先行型(イメージ図)
引用URL:https://news.usni.org/wp-content/uploads/2016/12/LPD28rendering.jpg
2.2 CECによる優勢からステルス性は不要になった。
米海軍としては、CEC(共同交戦能力)の発達により、足の遅いドック型揚陸艦にまでステルス性は不要と判断したものと考えられます。
じっくりと揚陸するため、強襲揚陸艦ほどの防御性を要求しないといえます。
この辺が、米海軍コンセプトの思い切りの良さといえます。
2.3 FFMなど主力艦艇への統合マストは必要!
サンアントニオ級が、先進マストの搭載をやめたから失敗だったとは言えません。
護衛艦や駆逐艦などの艦艇にて、レーダー反射断面積(RCS)が一番大きいのはマストの部分です。
30FFMでは、統合マストが採用されたのはステルス性を確保するためでもあります。
各国の艦艇も、ステルス性確保のため統合マストやエンクローズドマスト装備の艦が出始めています。
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(3)海軍の歴史にマスト構造変革は名を刻むか!
海軍艦艇の歴史において、いくつもの技術的転換点が存在してきました。
戦艦・潜水艦・空母の登場から、主砲からミサイルへの転換など多岐にわたります。
その中で意外と、船のマストに関する技術的な大転換というのはありませんでした。
基本的なマスト構造は、船が登場したころから大きく変わっていません。
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3.1 先進マスト・統合マストは歴史に残るか?!
長い船の歴史の中で、マストについて大きく技術的大変革となったのが先進マスト(エンクローズドマスト)です。
先進マストが進化して、レーダーやセンサーを埋め込んだ統合マストが登場しました。
軍艦の歴史の中に残るかどうか、今後が見ものといえます。
3.2 マストは船の顔だぞ〜!
こぼれ話としては、19DDの計画が進む中で、エンクローズドマストの計画案を見た将官から、
『軍艦の顔であるマストをこんな変な形にしやがって(怒)!』
と激しく怒られたのは懐かしい思い出ですな。
図8 船のマスト
引用URL:https://pixabay.com/
将来的に、30FFMや次期護衛艦(07DDXになるのかな?)は、どんな評価になるのでしょう?
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