2021年03月29日
ウイグル巡る中国制裁 踏み絵迫られる日本 菅首相は4月に訪米
ウイグル巡る中国制裁 踏み絵迫られる日本 菅首相は4月に訪米
3/29(月) 8:11配信
新疆ウイグル自治区の人権問題を理由に米国や欧州連合(EU)が制裁措置へ踏み切る中、経済への影響が懸念される日本は慎重な姿勢を崩して居ない。菅義偉首相の訪米を4月上旬に控え、決断を迫られる時期は遠く無いとの指摘もある。
「何もしない国と見られるのは恥ずかしい」
中谷元・元防衛相 は、人権問題に対して日本も非難や懸念の表明だけでは無く行動が必要だと話す。首相訪米や6月の主要7カ国(G7)首脳会議に向け「この2カ月が大事だ」と強調。超党派の議員連盟を立ち上げ、日本でも制裁を可能にする法整備を急ぐ考えを示した。
一方、 加藤勝信官房長官 は23日の会見で米とEUの動きは「承知している」と述べたが、具体的な対応は明言しなかった。 「深刻に懸念し、中国政府に対して透明性のある説明を行うよう働き掛けをしている」 としたものの、外為法では人権問題のみを理由に制裁を実施する規定は無いとも説明した。
日本に取って中国は、輸出入総額の2割を占める最大の貿易相手国。2007年に米国を上回って以降、10年以上連続して首位と為って居り、新型コロナウイルス禍で経済が低迷する中で摩擦は避けたいのが実情だ。26日にはスウェーデンの衣料小売りヘネス・アンド・マウリッツ H&М が新疆ウイグル自治区で生産されるコットンの調達を停止した事を切っ掛けに、中国で外国ブランドの不買活動が活発化するとの懸念が広がり「無印良品」を展開する良品計画株は一時前日比6.8%安の2494円まで売り込まれた。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは25日付のコラムで 「両国の経済関係に悪影響を与える事を懸念した面が日本政府にあったのではないか」 と分析。関係悪化を避ける日本の姿勢には「一定の合理性がある」と指摘した。
只日米首脳会談ではバイデン大統領から協調を求められることも想定され、経済的な損失などを覚悟した上で、中国の人権問題にも同盟国と協調して強い姿勢で対応する決断を「比較的早い時期」に迫られる可能性もあるとの見方を示した。
昨年6月に施行された香港の統制を強化する国家安全維持法を切っ掛けに、中国に対する国際社会の懸念は高まり、今年に入って海警局に武器使用を認めた事も尖閣諸島周辺で中国と対峙(たいじ)する日本に取っては不安材料と為った。
16日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、海洋進出を進める中国を名指しで批判する共同文書を発表している。
報復
中国は27日、制裁措置への報復として、米国とカナダの個人や団体に対する制裁を発表。対立は長期化の様相を呈して来た。中国外務省の華春瑩報道官は日本についても 「侵略による3,500万人の犠牲者のことを忘れてしまったのだろうか」 と述べ、中国を批判するのは 「日本の利益に為ら無い」 とけん制した。
制裁を可能にする法整備を目指す国民民主党の山尾志桜里衆院議員は、1989年の天安門事件後に「一番に経済制裁解除に踏み切った国が日本だ」とした上で 「対話と協調路線で民主主義が深まる事は無かった」 と振り返る。
「人権を守る国や企業で無いと経済も追求出来ない状況に国際社会が変わり始めている」との認識であり、政府には「視点を早く変えて欲しい」 と求めた。
菅政権で外交担当の内閣官房参与を務める 宮家邦彦氏 は対中政策での日本の難しい立場を示唆した。 「日本に取って中国は重要な隣国であり、両国は地理的に離れる事は出来ない」 とした上で、制裁を可能にする法整備をしても実際に発動するかどうかはと英語でのインタビューで述べた。
(c)2021 Bloomberg L.P. Emi Nobuhiro
新疆ウイグル自治区の人権問題 とは一体何なのだろう・・・
欧米、中国に制裁を発動 ウイグル族への「人権侵害」で
2021年3月23日 発
3-29-10
画像提供 REUTERS
画像説明 中国・新疆では少数民族を収容する施設が建設されて居る
欧米各国は22日、イスラム教徒が大半を占める中国の少数民族・ウイグル族の人権を侵害して居るとして、中国当局者らへの制裁を発動した。
中国は、北西部・新疆の収容施設でウイグル族を拘束して居る。同施設を巡っては、拷問や強制労働・性的虐待の告発が出て居る。今回の制裁は、欧州連合(EU)とイギリス、アメリカ、カナダが、歩調を合わせる形で発動した。これに対し中国も、欧州各国の当局者に制裁を発動し返した。中国は虐待の疑惑を否定。収容施設は、テロ対策の「再教育」施設だと主張している。
しかしイギリスのドミニク・ラーブ外相は、ウイグル族の処遇について 「最も基本的な人権に対する恐ろしい迄の侵害」 に当たるとした。EUが中国に制裁を科すのは、1989年の天安門事件を受けた制裁以来。同事件では、中国当局が民主化デモ参加者らに発砲した。
制裁の対象
今回の制裁は、ウイグル族のイスラム教徒に対する深刻な人権侵害が非難されている、以下の新疆の中国共産党幹部らを対象としている。
• 陳明国氏=地元警察組織・新疆公安局の局長
• 王明山氏=新疆の党委員会メンバー ウイグル族拘束の「政治的な監督責任者」だとEUはみている
• 王君正氏=国営の準軍事的経済組織・新疆生産建設兵団(XPCC)の党事務局長
• 朱海侖氏=新疆の元党幹部。収容施設の運営を監督する「重要な政治的職責」にあったとされる
• 新疆生産建設兵団公安局=収容施設の運営など、XPCCの治安問題に関する活動方針の実施主体
ラーブ外相は、新疆におけるウイグル族のイスラム教徒に対する虐待を 「現代最悪の人権危機の1つ」 と表現した。
3-29-11
画像説明 新疆(しんきょう)(XINJIANG)は中国北西部に位置する。最大都市はウルムチ(Urumqi)
ラーブ氏は 「合計30カ国の仲間と共に行動することで、国際社会は基本的人権に対する深刻で組織的な侵害に目を潰ら無い、協力して責任を追及すると、最大級に明確なメッセージを中国政府に発しているのは明らかだと思う」 と議会で述べた。
一方、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、中国が 「集団虐殺(ジェノサイド)と人道に対する犯罪」 を犯して居るとする声明を発表。王君正氏と陳明国氏に対し 「恣意(しい)的な拘束や厳しい身体的虐待などの深刻な人権侵害」 への関与を巡って米政府が制裁を発動したと述べた。
カナダ外務省も 「増え続ける証拠により、組織的で国が主導する中国当局の人権侵害が明らかになっている」 とした。中国のウイグル族への処遇に関しては国際的な調査が活発化している。
中国の反応
中国は22日、EUが最初に発表した今回の制裁について 「うそと誤った情報のみに基づく」 ものだと述べた。又、ヨーロッパの10人と4組織に対し 「中国の主権と国益を大きく損ない、うそと誤った情報を悪意をもって広めた」 として、制裁を発動するとした。対象者は中国への入国と、中国との商取引が禁じられる。
対象者には、ドイツの政治家で、中国への欧州議会代表団責任者ラインハルト・ビュティコファー氏や、新疆政策専門家エイドリアン・ゼンズ氏、スウェーデンの学者、オランダの国会議員らが含まれている。
ゼンズ氏はこれまで、新疆における虐待疑惑について度々報告して居る。昨年にはウイグル族に対する強制不妊手術について報告し、国連の調査に対する国際的な要求へと繋がった。中国国営メディアは同氏を「悪名高い反中国」の人物だとし、うそを広めていると非難した。
中国への非難
新疆の収容施設では、 ウイグル族などの少数民族が100万人以上拘束されている と観られている。新疆は中国最大の地方で、チベット同様、自治が認められている。しかし実際には、両地方とも中央政府の規制を受けている。
新疆で暮らすウイグル族は、トルコ語に似た独自の言葉を話す。文化的、民族的には中央アジア諸国に近いと考えている。中国政府は、ウイグル族の女性に不妊手術を強制したり子供達を家族から引き離したりしていると非難されている。
BBCは2月、拘束されたウイグル族に対して組織的なレイプや性的虐待、拷問が行われているとする証言などを報じた。或る女性は、顔を覆った中国人男性らに「毎晩」部屋から連れ出されレイプされたと証言した。収容施設の元警備担当者は、拷問や食事を与え無いなどの行為があったと、匿名を条件に述べた。
3-29-12
画像説明 虐待を証言したトゥルスネイ・ジアウドゥンさんは2018年に9カ月間、収容施設に入っていた
中国はBBCワールドニュース(国際ニュース放送)について、ウイグル族と新型コロナウイルスに関する報道を巡って国内での放送を禁止した。中国は当初、収容施設の存在を否定して居た。その後、テロ対策に必要な措置だとして擁護した。人権侵害については否定している。
英語記事 Western states sanction China for Uighur 'abuses'