2020年、927万人の都民のうち、小池百合子を支持したのは約366万人。投票率たったの55%から考えると、恐るべき圧勝である。
そんな小池だが、インテリ層からすこぶる評判が悪い。
このギャップはどこから来るのだろうか?
2016年、女性初の東京都知事に立候補した小池だが、風向きは怪しかった。
自民党に推薦願を提出したものの、先に無断で立候補したスタンドプレーに批判が噴出し、増田寛也が推薦されてしまった。
増田は改革派知事であり、実績も十分。増田が当選するかと思いきや、小池は動いた。
たたき上げで作り上げた人脈と資金力、国会議員にも物申せる人海戦術に長けた「地方政界のドン」だった内田を、小池は「ブラックボックス」と呼び、と対立軸を作った。このお得意のパターンで東京都知事の椅子を獲得した。
「都民ファーストの会」を作り、若手政治家と共に新たな政治に取り組む。と思いきや、小池は「希望の党」という新党を結成し、民進党と組んで第48回衆議院議員総選挙を戦おうと目論む。
だが、これには「都民ファーストの会」からも疑問の声があがった。都知事就任から一年で都政に興味がなくなったのだから当然だ。その反面、小池は国政にノリノリ。自身の考えに背く議員は「排除いたします」と笑顔で発言し、大バッシングに。結果、野党は大惨敗し、小池は国政から距離を置くことを表明した。
ここから小池は東京五輪のホスト知事を務めることに目標を切り替えたと言われている。
2020年3月には
「小池知事は、「五輪中止」という最悪のシナリオを避けることができたため、大満足だったようだ。読売新聞によれば、小池知事は公邸で喜びのあまり安倍首相と“グータッチ”。朝日新聞は小池知事が翌25日に都の五輪担当の職員を訪れて3分間スピーチした模様を報じ、「終始上機嫌だった」と表現している。」(DIAMOND誌)
DIAMOND誌は『東京都のコロナ対策に垣間見える、小池知事「五輪延期問題」への執着』で続ける。
『延期した五輪の開催日が21年7月23日に決まった3月30日。小池知事はこの話題を、新型コロナウイルスに関する緊急記者会見の中で突然挟み込んだ。
この日の緊急会見の趣旨は、都内の累計感染者数が443人に達し、感染経路不明のケースが増えていることへの警戒の呼び掛けだった。しかし、小池知事は会見中に都の内藤淳福祉保健局長の発言を「ちょっと待ってください」と遮り、「先ほど組織委員会に参りまして、バッハ会長との電話会談がございまして、そのご報告をまずさせていただきます」「開催都市の都知事であります私、森(喜朗・組織委)会長、橋本(聖子・五輪担当)大臣との間で電話会談が行われまして、2021年7月23日の開催が決定をいたしましたのでお知らせいたします」などと、感染症が専門の医師らが同席する中で滔々(とうとう)と語った。
福祉保健局長の発言を遮ってまで、小池知事が言及したかった21年の五輪開催日の決定。ただその内容は会見前に既に報道されており、周知の事実だった。
3月24日の五輪延期発表は、開催都市のトップではなく安倍首相が前面に出たことがよほど悔しかったのだろうか。30日の会見では、「開催都市の知事であります私」などという表現まで使っている。
新型コロナにより都民の生命が脅かされていることへの警鐘を鳴らす会見には不似合いな発言で、小池知事の五輪への執着を感じさせたるには十分だった。』
いまや「密です」の流行語?を筆頭に、vsコロナの先頭に立っている小池だが、【東京五輪>コロナ】だった事実をメディアは報じていない。
さらに言えば、そのコロナへの取り組みも自身の人気とりの側面が強い。
小池知事は手洗いなどを呼び掛けるテレビCMに自ら積極的に出演してきたが、テレビCMの費用は7億6000万円、ウェブ広告などを含めると合計11億1000万円にも上るという(大阪府の吉村知事は費用のかからないゲストとしてテレビに出演しているらしい)。
これは2020年の都知事選前である(圧勝を作り出した結果をみれば、本当に選挙に強い)。
また、感染対策をしながらGo toキャンペーンなど経済を回したかった菅政権は都に対し、二回目の緊急事態宣言前に、営業時間を午後8時までにするよう求めていたとされるが、都は拒絶。
コロナ禍で得た人気、イニシアティブを渡したくなかったのか。結果、小池発で感染者数が増えたことをアピールし、菅政権に緊急事態宣言を要請した。菅政権からすれば、今も続く緊急事態宣言の負の連鎖の発端が小池であり、ゆえに都との連携を取りたくないのだろう。
もちろん、小池には時短に応じなかった言い分がある。
12月6日にNHKの『日曜討論』に出演し「最初午後8時で切ったところ、お店側の悲鳴が聞こえた」「多くの事業者にすると午後10時までは許容範囲であるということでこの時間にした」と飲食店を守るためとアピールしたが、
DIAMOND誌は「過去の実績によると小池百合子という政治家は、「健康」「命」を守るという大義名分のもとで「飲食店イジメ」を正当化することにより、その政治力を拡大してきたという、動かし難い事実がある」と記している。下記に続ける。
『支持者の方から「小池氏を批判したいからって、ワケのわからない誹謗中傷をするな」と怒られそうだが、実は小池氏が都内の飲食店と敵対したことは、これが初めてではない。
2016年の選挙の論点は「築地」「自民党の黒幕」だとワイドショーは報じ、都民もそれに乗った訳だが、裏では「東京都受動喫煙防止条例」を巡る政治家の駆け引きがあった。
というのも、「日本医師会は、かねてから受動喫煙防止を強く訴えていたが、自民党東京都連は後ろ向きだった。支持者の中には飲食店も多くいるし、何よりも自民党内には、タバコ農家や販売業者などタバコ関連業界を支持基盤とする、いわゆる「タバコ族」も多く存在していたからだ。では、その弱点を突いて、野党が受動喫煙防止を掲げられるかというとそうでもない。旧民主党勢力はJT労組の影響を色濃く受けるからだ」。』
それに対し、小池は東京都医師会を味方につけた。東京都医師政治連盟が今も多額のパーティー券を購入してくれている。
2021年5月現在、東京都の病床数はひっ迫していない。それを都がアピールしないのが、医師会への配慮であるのは、みえみえ。クラスターも、飲食より介護の場の方が多い。それを言えないのは、自身の公約にもある。
公約に掲げた介護離職0をつつかれたくないのだろう。
小池の目玉である“築地豊洲問題”も1年4ヶ月弱を要し、度々姿勢を転換させ、就任前同様に落ち着いた。「7つの0(ゼロ)を目指します」も、ペット処分0、コロナ禍での満員電車は解消されたが、介護離職は言うまでもなく増えており、待機児童、残業、都道電柱、多摩格差に動きはない。
ここまでを読むと、小池は悪政をしいた女帝に思えるかもしれないが、それは違う。
橋下徹が言うように、小池は「民意の風を読むのが天才的な能力がある」だけである。
総理大臣と違い、都知事は都道府県民の投票が直結する。冒頭に記したように、コロナ禍で行われた選挙で、都民の半分は投票に行かず、投票に行った都民の7割が小池を支持している。
2021年5月に緊急事態宣言が延長されたが、街頭やネットアンケートでは、ほとんどの人たちが「緊急事態宣言に効果はない」としながらも、「緊急事態宣言延長は仕方がない」と頓珍漢な回答をしている。
効果がないものを延長して何になるのだろうか?
『ドラゴン桜2』(TBS)で「国はなぁ、お前らにはバカなままでいてほしいんだ。それが本音なんだ。何にも疑問を持たず、何にも知らないまま、調べないまま、ただひたすら制度に従い働き続け金を払い続ける国民であって欲しい。国はお前らには黙々と馬車を引く馬車馬であって欲しいんだ」と語られていたが、その典型的な例といえる。
いまや、政治家にとって緊急事態宣言は人気獲りのカードでしかない。
高齢者施設や職場や家庭などが感染源にもかかわらず、なぜか飲食店に時短要請し、さらに禁酒法も制定する。医師会と戦えない政治家( https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/40579.html )が、感染対策フリをするために、政治に疎く献金をくれない飲食店を生贄にしているのだ(一方で政治家は自身にメリットのあるキャバクラには個人的に通う)。
本来であれば、「病床者数が増えていないこと」が論点になるはずなのに、国民はワイドショーに振り回され、なぜか禁酒法を支持する。そこに登場する20坪にも満たない飲食店経営者たちが「雇用調整助成金」など補助金の話をしないために、国民も飲食店経営者とシンクロできない。今回の助成金で事業を継続出来ないのは、家賃が三桁を超える大型店舗なのは算数得意な日本人ならば分かるのだろう(ディベート苦手なゆえに政治には振り回されるのだが…)。
そんな中、上場する飲食チェーン、家賃三桁をこえるグローバルダイニングが声をあげた。
「医療崩壊、本当なのか疑問に思っています。冬にウイルス感染症は増えるのは自然の摂理。これに対して(パニックを起こして)、医療崩壊とおっしゃっている国や自治体の関係者、感染症専門家の方々は何の準備もしていなかった?死者数は米国などの約40分の1しかいないのに、なぜ医療崩壊?」
ここまで読んだ方々ならば分かると思うが、
「実はこれは、日本医師会から億を超える献金と選挙協力をもらっている自民党と、同じく東京都医師会と良好な関係を築いている小池氏にとって、最も触れてほしくない話なのだ」(DIAMOND誌)
厚労省によれば、国民一人当たりの医療費は75歳以上になると、それまでの年代の一桁から約35万円に膨れ上がる。つまり、日本の医療のお得意様は高齢者ということだ。それは若者のテレビ離れが進むワイドショーにも言えるし、若者が投票にいかないから政治家にも繋がる。
そんな背景があり、グローバルダイニングは小池に狙い撃ちにされた。ただ、その女帝を作ったのは、グローバルダイニングが多く店舗を持つ東京都民であることも忘れてはいけない。
「いまや、世界の先進国でいまだにコロナパニックになっているのは、日本だけだ。アメリカ、英国などもすべて前向きで、経済が活況だというデータしか出てこない。」と『緊急事態宣言の効果は絶望的なほどほぼ皆無だ』(東洋経済)がレポートしているが、
テレビ世代の高齢者がコロナを怖がり、その高齢者は投票率が高いために、政治家はワイドショーの動向を気にしている。
そのテレビを制作しているのは、東大卒のキャリアではなく、ほとんどは下請けの制作会社である。今もっとも視聴率がとれるコンテンツはコロナ。とにかく煽る( https://fanblogs.jp/hiphopjournal/archive/214/0 )。専門家さえいれば作れる安上がりなコンテンツだからだ。
もちろん、経済は悪化し、テレビ局の収益は減るのだが、幹部はサラリーマンである。何年先よりも、目先の視聴率を打ち出せば、安泰なのが現状。
テレビ局はジャーナリズムのない『モーニングショー』や『バイキング』のようなタブロイド番組を作り、にもかかわらずリテラシーの低い国民は何も考えずに報道番組として受け取っている。
そもそもで、テレビ世代は「テレビを見ていたらバカになる」と言ってきた世代なはず。こういった矛盾が、日本初の事態で露呈されている。
『ドラゴン桜』ではないが、ウェブで経済誌を読めば、ここまで述べたことはすぐに分かる。それを知った上で、「民意を組んでくれるから支持する」のでも良いし、「風見鶏はリーダーには向かないから支持しない」でも良い。
「メディアはほとんどスルーし、小池都知事にも問いたださない。賛成なら賛成でもいいが、なぜステージ3でも要請するのか、ということをデータに基づいてぶつけるという作業をしないと、小池さんの言いなりになっているだけだと思う。しかも、その記者会見でさえ、ぶら下がり取材を除けば週に一度だけだし、知事が好きな記者を当てるだけ。この仕組みは極めて不健全だ。」(Abema Time日本公共利益研究所主任研究員で弁護士の楊井人文氏)
考える頭を持たないと、マスゴミと同じになってしまう。
皆さん、知っていますか?
2020年は、11年振りに死亡者数が減ったことを。
(文中敬称略)
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