■AAM-5と同世代の赤外線誘導AAMは何れもSAMの派生型が開発されている
■AAM-5がSAM化されないのは何故か
以前、会社にいらっしゃった航空事業部のOBの方から以下のような相談を受けたことがあります。
「〇〇くん、AAM-5を拡販するとしたら何処が良い?」(OB氏)
「陸さんのOHやAH用に売り込んだら如何でしょう。いざとなれば陸上目標へも使えますよ」(オラ)
M41戦車へ発射されたAIM-9L
画像引用元: By U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.488.022.024, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11855314
「おーいいね。」(OB氏)
「でも、AAM-5って1発6千万ですよね。陸さんから見たら1発で装甲車1両分飛んでいくことになりますよ。」(オラ)
「だよねー(笑)。」(OB氏)
その後、AAM-5は改良型であるAAM-5(B)が開発されますが(開発主任は良く存じ上げている方です)、SAMなどの派生型は開発されずに今日に至っています。
AAM-5の同世代の海外の赤外線誘導AAMは何れもSAMの派生型が開発されています。
一番有名なのは図らずもAAM-5のそっくりさん(笑)であるドイツのIRIS-Tでしょう。ウクライナにも供与されています。
IRIS-T SL(surface-launched)
画像引用元: Matti Blume - File:ILA_2018,_(1X7A6890).jpg, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=111003281 による
AIM-132(ASRAAM)はレーダーシーカーへ変更され、CAMM (Common Anti-Air Modular Missile) として艦載型や陸上型が開発されています。
A Sky Sabre air defence missile system of the Royal Artillery.
画像引用元: By Ministry of Defence - https://www.defenceimagery.mod.uk/, archived source, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116190856
勿論、我らがAIM-9も様々な派生型が開発されています。一番有名なのはRIM-116 RAMでしょう。これはAIM-9の弾体とFIM-92のシーカー及びパッシブシーカーを組み合わせ、回転させることによりジャイロの省略し、二本の長さが違うロッドアンテナへコニキャルスキャンをさせるというアイデア一杯のシロモノでした。そのため、開発に手間取り何度も開発中止の危機に陥ったり、本邦のあぶくま型DE艦への装備化が見送られるなどの紆余曲折がありました。
USS Green Bay (LPD-20)から発射されるRAM
画像引用元: U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Larry S. Carlson - この画像データはアメリカ合衆国海軍が ID 090929-N-2515C-482 で公開しているものです。パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8370861 による
少し世代が違いますが、おフランスのMICAもMICA VLSとして陸上発射型が開発されています。
Lanceur terrestre du missile "VL Mica" Exposition MBDA au salon du Bourget 2015
画像引用元: Tiraden - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=41070763 による
そして最後はAAM-5のライバルであったイスラエルのPython(XAAM-5開発時に航空事業部へラファエル社から強力な売り込みがあった)です。
SPYDER air defense missile system
画像引用元: By Ereshkigal1 - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4793482
以上のように、赤外線誘導AAMは例外無くSAMなどの派生型が開発されています。では、何故AAM-5はSAMなどの派生型が出てこないのでしょうか?
明確な答えは知る由もないのですが、恐らくは、、、、、
短SAMとバッティングするからではないでしょうか。
つまりは業界への仕事の割り振りの問題です。
11式短距離地対空誘導弾
画像引用元: 防衛省 - 出典:防衛省ホームページ https://www.flickr.com/photos/90465288@N07/39227773454/in/album-72157632230016328/, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=88146565 による
余り知られてはいませんが、11式短SAMは極めて優秀なシーカーを持ち、個人的にはこのミサイルの存在が地べた事業部がAHを手放す切っ掛けの一つになったと勝手に考えています
そんな状況ですが、近SAMと基地防SAMを統合化することにより 「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」 の開発が現在行われており、もしかすると従来の体系に何らかの変化があるかもしれません。今後の展開に期待しましょう。
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感想(0件)
Tさんのシーカー優秀なんですね。個人的にM重とかM電気と統合した方が技術的に良い物が出来るのでは?とも思いました。
新近SAMが意欲的なシロモノなら楽しみですね。いつか公で発表されるの楽しみに待ちます
コメントありがとうございます。
11式は高いんですな。。あと、地べたさんの開発品によくありがちですが、開発に時間が掛かって周りの環境が変わってしまったってのもあるでしょう。
ただ、官側がTさんのシーカー技術を高く評価しているのも確かで、Tさんを潰すようなことはしないでしょう。さらに開発中の新近SAMは、伝えられるところが本当に実現するのなら極めて意欲的なプロジェクトです。
A-SAMの時はありがとうございました。
11短SAM優秀なら何故陸上事業部で少数調達になったのか気になりました。
11短SAMはT芝、AAM-5はM重と別れてますがT芝の経営不振により調達出来ない事態を恐れたと思いますか?