最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。
3.基底核の入出力と神経回路の機能?C
3—5;ドーパミン作動系
中脳ドーパミン作動性ニューロンは,
黒質緻密部,腹側被蓋野,後赤核領域に存在する.
黒質緻密部からは被殻や尾状核に(黒質線条体投射),
腹側被蓋野からは前頭連合野(中脳皮質投射)や側座核,辺縁系(中脳辺縁系投射)に[28],
後赤核領域からは延髄網様体に投射がある[29].
(1)ドーパミンによる基底核神経回路の調節
ドーパミンは直接路と間接路の起始ニューロンに対して反対の作用を持つ[30].
運動系ループを例にとると,
ドーパミンにより直接路は活動し,
間接路は抑制されるため基底核の出力は低下するので運動は増加する.
一方,ドーパミンが減少すると直接路の活動は低下し,
間接路の活動は亢進する.
その結果,基底核の出力は増加し,運動は減少する.
従ってドーパミンレベルの変化により,
視床─大脳投射系や脳幹のニューロン群の興奮性は強く修飾される.
(2)ドーパミンと高次脳機能
中脳ドーパミン作動系は中脳皮質投射や中脳辺縁系投射,
そして黒質線条体投射を介して,
各領域のニューロン活動を修飾し,
我々の行動パフォーマンスに大きな影響を及ぼす.
特に,報酬が最大になるような行動や思考の文脈性の形成に
ドーパミンが強く関与すると考えられる[31](強化学習).
我々が特定の環境の中で最も適切なStrategyを学習し[32](順序手続き学習),
新たな環境を創造する上でドーパミンは重要な役割を演じている.
統合失調症(精神分裂病)では,中脳皮質投射の活動は低下し,
中脳辺縁系投射の活動は亢進する.
前者は前頭葉の機能低下をもたらし,
後者は辺縁系に作用して幻覚や妄想などを誘発する.
この疾患の治療にはドーパミン阻害剤を用いるため
パーキンソン病様の症状が出現することがある.
ドーパミンは運動機能のみならず精神機能にも多大な影響をもたらしている.
【引用文献】
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
旭川医科大学 生理学第二講座
高草木 薫
参考文献
28.Kandel ER : Disorders of thought and volition : Schizophrenia. In : Principles of neural science, 4th edition,
Ed. Kandel ER, Schwartz JH & Jessell TM, McGrawHill Press, Heath Professions Division pp 1188— 1208,
2000.
29.Von Krosigk M, Smith Y, Bolam JP & Smith D : Synaptic organization of GABAergic inputs from the
striatum and the globus pallidus onto neurons in the substantia nigra and retrorubral field which project
to the medullary reticular formation. Neurosci 50 : 531— 549, 1992.
30.Gerfen CR, Engber TM, Mahan LC, Susel Z, Chase TN, Monsma FJ Jr, & Sibley DR : D1 and D2
dopamine receptor-regulated gene expression of striatonigral and striatopallidal neurons. Science 250 :
1429— 1432, 1990.
31.Schultz W : Predictive reward signal of dopamine neurons. J Neurophysiol, 80 : 1— 27, 1998.
32.Hikosaka O, Nakahara H, Rand MK, Sakai K, Lu X, Nakamura K, Miyachi S & Doya K : Parallel neural networks for learning sequential procedures. Trends
Neurosci 22 : 464— 471, 1999.
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2019年05月18日
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