健康寿命を延ばす?A
メトホルミンは1950年代に
英国で2型糖尿病(一般的な糖尿病)
の治療薬として承認され、
米国では1994年にFDAの審査を通過した。
以来、第一選択薬として
数百万人の患者に処方されてきた。
今では、安価なジェネリック薬もあり、
世界で広く処方され、
世界保健期間(WHO)は
「必須」の医薬品と位置付けている。
メトホルミンは
血液からのブドウ糖の取り込みを促す
ホルモンである『インスリン』
に対する細胞の感受性を高める。
非常に多くの人がメトホルミンを服用しているため、
研究者は患者に見られる興味深いパターンに気づいた。
例えば、
メトホルミンを服用している患者は
”がんの発生率が低い”
ことが疫学的研究でわかった。
別の研究では
心血管系に対する有益な効果 が示唆されている。
さらに、糖尿病にかかると
一般的に寿命が数年短くなるのに、
英国人患者のデータに関する2014年の解析によると、
メトホルミンを服用していた年配の患者は
糖尿病でない同年代の対照群よりも
18%長生き
だった。
別の一般的な糖尿病治療薬である
スルホニル尿素剤を使っていた
患者よりも長生きであり、
長寿をもたらしたのは
糖尿病の管理ではなく、
『メトホルミン』そのもの
であることが示された。
メトホルミンが具体的にどう作用しているのか
は完全にはわかっていない。
ガレガソウという古来の生薬
に由来するこの薬の作用は
研究者の間で何十年も議論されてきた。
AMPK
AMPK(AMP-activated protein kinase)
という酵素がある。
細胞で燃料計のような働きをしており、
運動やカロリー制限などで
細胞の栄養が不足すると、
AMPKがただちに作動して、
エネルギーとなるブドウ糖(グルコース)
を細胞に届けるほか、
この輸送を助ける インスリン などの
ホルモンに対する
感受性を高める 。
また、 脂肪の分解を促進 して、
より多くのエネルギーを作り出す。
さらに、運動中には
AMPKが細胞のエネルギー生産機関である
ミトコンドリアの生成を促す 。
これらはいずれも健康を増進する。
mTORもある程度阻害するようだ。
【引用文献】
B. ギフォード(Bill Gifford)サイエンスライター
別冊日経サイエンス 人体の不思議
日経サイエンス編集部 日経サイエンス社 2018年2月17日
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