健康寿命を延ばす?B
メトホルミンが寿命を延ばす可能性はアルバート・アインシュタイン医科大学
老化研究所所長バージライ(Nir Barzilai)らの関心をつかんだ。
晴れはアシュケナージ系ユダヤ人の百寿者の大規模研究を率いた経験から、
これら長寿の人が高血糖や糖尿病を抱えている例が稀であることを知っていた。
超効率的な糖代謝は長寿の指標だ。
メトホルミンは私たちの代謝を変えて
百寿者の代謝に近づけるのかもしれない
とバージライはみている。
「糖尿病治療薬としての作用の多くは抗老化作用でもあり、
細胞機能とインスリン感受性を高める」
と言う。
実際、彼は両親が2人とも糖尿病だったので、
予防のため自分でもメトホルミンを服用している。
バージライは50歳を超えたら皆メトホルミンを
処方してもらうことを考えた方がよいとまでは言わないが
(彼自身は60歳)、
「メトホルミンはスーパードラッグに思える」と言う。
「老化関連の多くのことに関連しているようだ」。
メイヨークリニック加齢研究センターの所長で
メトホルミンの臨床試験に協力している
カークランド(James L. Kirkland)も同意見だ。
「過去60年分のデータからメトホルミンが
実に様々な症状に作用することが示されており、
それらを総合すると、
メトホルミンが老化の基本プロセスに
作用していると考えて良いだろう」と言う。
だがヒトで抗老化薬候補を試す際には
もう一つ別の壁がある。
『時間』だ。
従来の寿命研究は完結までに数十年、
文字通り一生を要する。
これに対して2015年に承認された
『TAME』という臨床試験は別の方法を採用する。
TAMEは T argeting A ging with Me tforminー
メトホルミンにる老化抑制
メトホルミンを服用する健康な被験者と服用しない被験者
で単に寿命を比較するのではなく、
各被験者の加齢関連疾患の進行を調べるのだ。
老化の特徴の1つとして、
高齢者は高血圧や糖尿病、心疾患、認知障害といった
慢性症状がいくつも現れる傾向がある。
これら複数の疾患が重なった
「併存症」
は高齢者を苦しめる主要因となっている
(医療費増大を招いていることは言うまでもない)。
TAME研究では糖尿病や高血圧などの加齢関連症状がすでに1つ
現れている高齢者にメトホルミンを投与する計画だ。
これを5〜7年に渡って追跡し、
メトホルミンを服用しないとに同意した対照群と比較して、
他の加齢関連疾患の発症時期に早い遅いの差
が出るかどうかを調べる。
メトホルミンが本当に老化を遅らせるなら、
併存疾患の発症を食い止められるはずだ。
【引用文献】
B. ギフォード(Bill Gifford)サイエンスライター
別冊日経サイエンス 人体の不思議
日経サイエンス編集部 日経サイエンス社 2018年2月17日
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