a.きのうのライブ盤なあ、関西のヒトってユーモアのレベル高いしなあ、芸人より素人のほうがオモロかったりするし、
b.しかし、がらっと変わって今日はクラシック音楽、
a.ワンツウースリーで思い出した、クラシック音楽の若大将、ベートーベンのまだ青さが残る交響曲第1&第2、これを「青春シンフォニー」と呼ぼう、
b.3番になると、大化けして早くも王者の風格、
a.3月4月は青春にふさわしい季節やけど、この季節にピッタリくるのが、この1・2番シンフォニー、
b.この季節、第9はあまり似合わないっす、大げさすぎて、
a.ここで、不当にも全く評価されないまま埋もれてしまってた名盤をひとつ紹介させてほしい、
b.ベートーベンのシンフォニー第1と第2、ネヴィル・マリナー指揮・アカデミー室内管弦楽団、1970年の録音か、これまた古いっすね、
a.いい演奏は半世紀そこらじゃ全く色あせない、中1のときFMでこれ聴いて以来、いくつも他の演奏聴いたけど、いまだこれを越える演奏に出会えない、
b.どこが良いんすか、そんなに、
a.ひと言でいえば、チーム一丸となった勢い、上昇気流っていうか、
b.勢いでやっちゃってるんすか、
a.その反対、どっちかといえば折目正しく丁寧に鳴らしてるんだけど、前向きな雰囲気がみなぎっていてとてもいい、同好会のように音楽を楽しんでたグループが、その自発的精神を残しながら、世界的プロ集団へ飛躍していく、そのさわやかな勢いが、この青春期のシンフォニーと見事にマッチして、素晴らしい名演が生まれたんだ、
b.そんなアカデミー室内管弦楽団も、後年しだいにマンネリ化してダレて来るんすね、
a.仕事忙しくなりすぎて、良い意味でのアマチュアリズムがすり減っていく、レコード会社にしたら、このさい、このコンビで売れるだけ売りたいわけだし、どうしても無理させてしまうわな、
b.じゃあ、1970年っていうのがむしろプラスに働いてるのか、
a.オーケストラにも旬があって、アカデミーがとりわけ素晴らしかったのは、デビューしてメジャーに昇格したばかりの1970年前後、
b.マリナー・アカデミーといえばバロックやモーツァルトが有名ですが、
a.もともと、ベートーベンなんて苦手中の苦手なんだが、それがかえって功を奏したというか、
b.どういうことすか、
a.ベートーベンのシンフォニーは2番と3番のあいだに別人ほどの開きがある。ということは1と2は別人がやった方が成功しやすい、そこで一見無縁そうなマリナー・アカデミーの出番になる、
b.じゃあマリナーも1・2番専門で素晴らしいと、
a.3番で素晴らしかった巨匠が振る1〜2番はたいてい重すぎる、若さがない、青春の勢いが感じられないんだ、
b.じゃあクレンペラーもだめっすか、
a.クレンペラーが残した3番の第2楽章は、誰も追いつけないほど深く気高いけど、1〜2番シンフォニーに限っていえば、マリナー・アカデミーが無敵状態、この若々しい2曲のシンフォニーを録音するために誕生したんじゃないか、彼ら、
b.モーツァルトはどうなんすか、こっちの方が彼らの得意分野ですが、
a.そやなあ、どこもまったく問題がない、でもほとんど面白くない、
b.じゃあ具体的にどこが良いんすか、マリナー・アカデミーのベートーベン1・2番、
a.モダン楽器の厚みある響きがあるおかげで、小編成なんだけど、音量のでかい金管やティンパニーが単独で目立つことなく響きに溶け込んで聞こえる、小編成だから木管も自然に無理なく聞こえるし、響きがコンパクトにまとまってリズムがもたれない、テンポや響きが良い意味で軽やか、で、何よりも全体の「やる気、元気、いわき!」、最近見かけないけど、
b.3番以降はどうなんすか、マリナー・アカデミー、
a.やはりいまひとつ、3番から先は、もっと全然違うものが求められてると思わないか、もっと言えば、1・2番の名演ってホント少ないっていうか、交響曲全集ではオマケ扱いみたいで、どことなく軽んじられてるようなとこもあるし、3番から先に名演があれば、1・2番イマイチでも良しとされるような、
b.だから、なおさらマリナー・アカデミーの1・2番が光り輝やくと、
a.まだ青い駆け出しのベートーベン、これからひと旗あげたろか精神みなぎる1・2番シンフォニーに対して、メジャーデビューまもないマリナー・アカデミーのいっちょやったろか精神が見事にはまって、永遠の名演が録音された、もっともっと高く評価されなければならない一枚だ!
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