「在来軸組工法による木造2階建て住宅の地震力に対する耐力壁の設計に関する設問」及び「木造軸組工法による耐力壁の許容せん断耐力を求めるために実施した静的水平加力実験に関する設問」について解答せよ。
[ No.1 ]
在来軸組工法による木造2階建て住宅の各階平面図を図1に示す。太線部分は倍率2.0の耐力壁を示している。屋根仕様は軽い屋根に分類され、小屋裏の利用はないものとする。この建築物の地震力に対する検討を、建築基準法第46条の規定(いわゆる壁量計算)により行う場合について、次の?@及び?Aの設問に解答せよ。なお、地震力用必要壁率は表1に示すとおりとする。
図1 各階平面図
表1 地震力用必要壁率
?@ 地震力に対する1階のX方向及びY方向の壁量を検討せよ。
答え
[ 解答解説 ]
地震力に対する1階のX方向及びY方向の壁量の検討
1階床面積 A = 6.0 × 8.0=48.0m 2
屋根仕様は軽い屋根として算定する。
必要壁量
Lu = 48.0m 2
× 0.29 m/ m 2
=13.92m
壁 量
X方向 Lwx=(2.0m × 3枚+1.0 m × 2枚)× 2.0倍=16.0m > 13.92m
∴ OK
Y方向 Lwy =(2.0m × 2枚+1.0 m × 4枚)× 2.0倍=16.0m > 13.92m
∴ OK
以上より、1階の壁量はX方向、Y方向共に満足している。
ちなみに、必要壁量は風圧力に対する検討も行い、大きい方を採用する。
?A 四分割法により、 1階のX方向及びY方向の耐力壁の配置を検討せよ。
答え
[ 解答解説 ]
四分割法により、1階のX方向及びY方向の耐力壁の配置の検討する。
X方向
(北側)
床面積A(m 2
)
6.0m × 8.0m/4
=12.0m 2
必要壁率 0.29(m/m 2
)、必要壁量 Lu 3.48m
壁量(Lw)
(2.0m × 2 + 1.0m) × 2.0 =10.0m
充足率(Lw/Lu)2.87 > 1.0
(南側)
6.0m × 8.0m/4
=12.0m 2
必要壁率 0.11(m/m 2
)、必要壁量 Lu 1.32m
壁量(Lw)
(2.0m + 1.0m) × 2.0 = 6.0m
充足率(Lw/Lu)4.54>1.0
ゆえに、X方向判定は適合
Y方向
(西側)
床面積A(m 2
)
8.0m × 6.0m/4
=12.0 m 2
必要壁率 0.29(m/m 2
)、必要壁量 Lu 3.48m
壁量(Lw)
(2.0m + 1.0m × 2) × 2.0 = 8.0m
充足率(Lw/Lu)2.29>1.0
(東側)
8.0m × 6.0m/4
=12.0 m 2
必要壁率 0.11(m/m 2
)、必要壁量 Lu 1.32mm
壁量(Lw)
(2.0m × 2) × 2.0 = 8.0m
充足率(Lw/Lu)6.06 > 1.0
ゆえに、Y方向判定は適合
補足:いずれも充足率 Lw/Lu ≧ 1.0のため、壁率比の計算は省略する。
[ No.2 ]
図2は、木造軸組工法の耐力壁の許容せん断耐力を求めるために実施した静的水平加力実験の試験体の概要である。また、図3は、この実験から得られた荷重ー変形関係(水平荷重Pと見かけのせん断変形角Rの関係)である。この実験結果をもとに、次の?@及び?Aの設問に解答せよ。
図2 試験体の概要
図3 荷重ー変形関係
?@ 実験結果より、この耐力壁の許容せん断耐力(kN/m)を求めよ。なお、実験は柱脚固定式で実施され、図3の荷重ー変形関係の荷重の値は、3体の実験結果の平均値を示す。また、低減係数及びばらつき係数は1.0とし、塑性率から導く耐力壁のDs値は0.5とする。
答え
[ 解答解説 ]
短期基準せん断耐力
Po= min(a,b,c,d) = 30kN
a:降伏耐力 Py=45kN
b:終局耐力 Pu × (0.2/Ds)= 75 × (0.2/0.5)= 30kN
c:最大荷重 Pmax × 2/3 = 90 × 2/3 =60kN
d:特定変形時の耐力P1/120=60kN
よって、壁の短期許容せん断耐力
=Po × α / L =30 × 1.0 /2.0 =15 kN/m
?A この耐力壁を、一般的な木造住宅の壁量計算に壁倍率5(許容せん断耐力9.8kN/m)の耐力壁として用いる場合、耐力壁周囲の構造計画上どのような問題点があるかを述べ、その対応策を述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
(問題点)
耐力壁形式の前提として、耐力壁端柱の柱頭柱脚接合部が耐力壁よりも先に破壊しないこと、つまり、接合部より先に壁が壊れることが必要である。
壁量計算は実験結果よりも小さな壁倍率5(許容せん断耐力9.5kN/m)で検討することで、安全側の検討となっているが、柱頭柱脚接合部や耐力壁周囲の部材に対しては危険側の値となるので注意が必要である。
(対応策)
耐力壁端柱の柱頭柱脚の引抜きを防止するため、引抜き力に対する余力を十分確保したうえで、柱頭柱脚接合部や柱断面及び土台のめり込み等の検討に対しては、実験結果から求まった 15kN/mを採用し、生じる軸力に対して安全性を確認する。