修了考査(法適合確認)
法適合確認
(選択理由記述式4肢択一問題)
[ No. 1 ]
構造設計に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1.現在の高度に発達したコンピュータソフトウエアを用いても、使用する技術者が構造工学の知識習得や構造的センスの醸成が不足している場合には、誤った設計解が導かれる危険性がある。
2.限界耐力計算を用いて建築物の設計を行う際に、極めて稀に生ずる地震力に対する最大変形が敷地境界線を越えた場合、部材を変えず保有水平耐力計算を行い、必要保有水平耐力到達時の層間変形を参照することで敷地境界線を越えないようにすることができる。
3.免震構造のように上部構造のべースシア係数を小さく設計した建築物において、設計規準類が要求していなくてもPΔ効果を考慮し、上部構造の許容変形を小さめに設定することが望ましい。
4.建築物に大きな影響を与える大地震、巨大台風、豪雪などはこれまでの知見で作用の規模などを予測することが困難な自然現象であり、法規で定められた荷重がこれらを網羅しているわけではない。
答え
2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(青本 第?T 編第 1章 4 コンピューター依存社会の構造設計)
2. 保有水平耐力時の変形は、極めて稀に生ずる地震力に対する最大応答変形とは必ずしも一致しない。
(青本第?U編第2章2-2耐震設計法)
3. 記述の通り。
ベースシア係数:
1階(最下層)の層せん断力係数。
層せん断力係数はCi=Z×Rt×Ai×Co
Ai分布は1階では1.00なので
ベースシア係数は、標準せん断力係数に地域係数Z、振動特性係数Rtをかけた値
また、1階の層せん断力を建物全重量で割ることでベースシア係数を算定できる。
4. 記述の通り。
[ No.2 ]
建築基準法及び建築士法における構造関係規定の位置づけに関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1.建築基準法第20条第1項第二号の鉄筋コンクリート造建築物について、保有水平耐力計算で設計した場合、構造設計一級建築士の関与が必要である。
2.建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めており、建築士法は、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、建築物の質の向上に寄与させることを目的としている。
3.土砂災害特別警戒区域に関する規定は、常時人が使用している可能性の高い「居室を有する建築物」に限定して適用される。
4.構造設計は行わず、法適合確認のみを行った構造設計一級建築士は、その確認に係る建築物について、建築基準法上の設計者には含まれない。
答え
4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(青本第?T編第2章2-2建築基準法一級建築士の業務と責任)
2. 記述の通り。
(青本第?T編第2章1-1建築基準法における構造関係規定の位置づけ)
3. 記述の通り。
(令第80条の3 土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)
4. 記述の通り。
法適合確認を行った構造設計一級建築士は、その確認に係る建築物について、建築基準法上の設計者に含まれることとなっている。
(青本第?T編第 2章2-2構造設計一級建築士の業務と責任)
[ No.3 ]
建築基準法における地震力に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1.建築物の地上部分の地震力の算定における「地上部分」は、建築基準法施行令第1条第二号の 「地階」に該当するか否かにかかわらず、振動性状としてAi分布による地震力が作用するとみなせるかどうかで判断した。
2.地盤種別の判定は、建築物に剛強な支持ぐいを使用するため、当該支持ぐい先端の地盤により行った。
3.鉄筋コンクリート造建築物の地震力について、建築物の設計用一次固有周期を固有値解析で算定するに当たり、基礎ぐいの変形(鉛直変形に伴う回転の成分)を考慮した。
4.建築基準法第20条第1項第二号の建築物の屋上から突出する煙突の地震力について、特別な調査又は研究によらないで計算するに当たり、水平震度1.0を用いた。
答え
3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
2. 記述の通り。
(昭55建告第1793号第2)
3. 記述の通り。
特別な調査又は研究に基づき設計用一次固有周期を求める場合は、基礎及び基礎杭の変形が生じないものとして、構造耐力上主要な部分の初期剛性を用いて算出する。
(昭55建告第1793号第3)
4. 記述の通り。
(平成19年国交告第594号第2三 ハ)
[ No.4 ]
建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1. 高さ20mの建築物の帳壁に使用するガラスについて、風圧に対する設計用の平均速度圧の算定に用いる高さを、屋根平均高さHで評価した。
2. 特定行政庁が指定する多雪区域以外の区域内(垂直積雪量が0.15m以上である区域に限る)における特定緩勾配屋根を有する建築物について、屋根版が鉄骨造であったため、積雪後の降雨の影響を考慮した応力の割増しを行わなかった。
3. 建築物の使用上の支障が起こらないことを確認するため、床版に生じるたわみの最大値を計算 するに当たり、床の積載荷重として建築基準法施行令第85条の表の「地震力を計算する場合」 の数値を用いた。
4.外壁から突出する長さ2.5mのバルコニーの設計において、バルコニー先端部分を柱で支持することとしたため、鉛直震度1.0Z(Z:地震地域係数)以上の鉛直力による安全性の確認を行 わなかった。
答え
2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
2. 除外規定は屋根版が鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリー ト造であり、鉄骨造は除外されない。(平成19年国交告第594号第2三ホ)
3. 記述の通り。
(平12建告第1459号第2一)
4. 記述の通り。
バルコニー先端を柱で支持した場合など、鉛直方向に振動の励起の恐れがない場合は、鉛直震度1.0Zの考慮は除外される。
[ No.5 ]
建築基準法における鉄骨造の耐震計算に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1.耐震計算ルート1-1において、水平力を負担する筋かいを保有耐力接合とする場合、当該筋かい軸部の全断面が降伏するまで、接合部が破断しないことを確認した。
2.耐震計算ルート2において、冷間成形角形鋼管を柱に用いた場合、一次設計で梁のウェブを無視した場合であっても、柱梁耐力比算定における梁の全塑性曲げモーメントは梁の全断面を有効として計算した値を用いた。
3. 耐震計算ルート3において、露出柱脚に伸び能力の無いアンカーボルトを用いた場合、柱脚で保有耐力接合の条件を満足していたため、柱に塑性ヒンジを仮定して保有水平耐力の検討を行った。
4. 耐震計算ルート3において、冷間成形角形鋼管柱にSTKR材を用いた場合、全体崩壊(はり崩壊)か局部崩壊(柱崩壊)かを各階床位置で判断し、局部崩壊の場合は当該床位置の柱耐力を低減して保有水平耐力を算定した。
答え
4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
2. 記述の通り。
3. 記述の通り。
4. STKR材を用いた場合、局部崩壊は許容されない。
(平19国交告594号第4 三 口)
[ No.6 ]
鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート3 において、梁曲げ破壊型のラーメン構造では、柱梁接合部のせん断終局耐力が崩壊形を形成する時の作用せん断力を十分上回ることが求められている。十字形柱梁接合部の耐震性を向上させる対策として、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1. 柱せいを大きくする。
2. 梁幅を小さくする。
3. 梁の主筋量を少なくする。
4. 柱梁接合部に直交梁を設けて両側直交梁付きとする。
答え
2
[ 解答解説 ]
耐震性を向上させる方法としては、 柱梁接合部の耐力を大きくする、または 設計用せん断力を小さくする方法がある。
1. せん断耐力が大きくなる。
2. せん断耐力が小さくなる。
3. 設計用せん断力が小さくなる。
4. せん断耐力が大きくなる。
[ No.7 ]
建築基準法における木質構造に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1. 構造耐力上主要な部分に、集成材その他の木材を使用し、所定の構造計算を行えば、壁量並び にその配置に関する規定を適用除外とすることができる。
2. 耐震計算ルート2の建築物において、水平力を負担する筋かいを設けた場合には、βによる応力割増しを行う必要がある。
3. 木造建築物の構造特性係数Dsの算定方法は、小径15cm以上かつ断面積30 cm以上の集成材等建築物の場合と、軸組構法を含む壁式構造による場合とで異なる。
4. 垂木、根太その他荷重を分散して負担する目的で並列して設けた部材(並列材)に合板等の面材を張る場合、並列材の圧縮強度を割り増した数値とすることができる。
答え
4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
2. 記述の通り。
(昭55建告第1791号第1)
3. 記述の通り。
(昭55建告第1792 号第2)
4. 並列材の強度を割り増しできるのは、曲げ強度である。(平12建告1452 号)
[ No.8 ]
建築基準法における耐風設計に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1. 耐風設計における風の乱れの影響や動的効果は、構造骨組設計用風荷重の算定ではガスト影響係数を介して速度圧に反映されており、外装材等設計用風荷重の算定ではピーク風力係数に反映されている。
2. 屋根ふき材、外部に面する帳壁などの外装材等の設計に関しては、稀に発生する中程度の暴風に対して構造計算が要求されているが、極めて稀に発生する最大級の暴風に対して構造計算は要求されていない。
3. 高さ60m以下の建築物に対して建築基準法施行令で定める風圧力は、稀に発生する荷重・外力としておおよそ再現期間50年、極めて稀に発生する荷重・外力としておおよそ再現期問500年の10分間平均風速を想定して定められている。
4. 高さ60mを超える超高層建築物において、極めて稀に発生する最大級の暴風に対する設計用風圧力として、稀に発生する中程度の暴風の場合の1.25倍の風圧力を考慮し、建築物が倒壊、 崩壊などしないことを確認する。
答え
4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(青本第II編第2章3-3耐風設計の要点)
2. 「極めて稀に発生する最大級の暴風に対しては、陽な形では義務づけられていない。しかし、外装材も建築物を構成する重要な要素であり、それがなくなると、構造骨組設計時に想定した空力的特性や構造的特性まで変わる。」と記載されているが、最も不適当とまでは言えないと考える。
(青本第II編第2章3-2建築物等の風による被害や振動現象)
3. 記述の通り。
(青本第II編第2章3-1耐風設計で対象とする強風)
4. 風圧力が 1.25倍ではなく、風速(Vo)が 1.25倍である。したがって、風圧力はVoの2乗に比例するので、1.25 2
= 1.56倍となる。
(青本第II編第2章 3-1耐風設計で対象とする強風)
[ No.9 ]
保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1. 構造特性係数Dsは、建築物に要求される必要保有水平耐力に、余裕を持たせるための安全率である。
2. 建築物各階の偏心率Re及び建築物各階の剛性率Rsは、特定階への過大ねじれ応答及び層間変形の集中を避けるための指標であり、偏心率が0.15を上回る場合や剛性率が0.6を下回る場合には、当該階の必要保有水平耐力を割り増さなけれぱならない。
3. 必要保有水平耐力の計算においては、大地震動時における一質点系構造物の弾性応答 1G(G:重力加速度)の水平力をもとに、標準層せん断力係数 Coを1.0以上と定めている。
4. 脆性的な破壊をする部材を持つ建築物の保有水平耐力は、それらが破壊するときの変形状態において各部材が負担する水平せん断力の和として求めてよい。
答え
1
[ 解答解説 ]
1. 建築物に必要な最大水平抵抗力を建築物の変形性能に応じて、低減させる要素が構造特性係数Dsである。
2. 記述の通り。
(令82条の6、令82条の3)
3. 記述の通り。
4. 記述の通り。
[ No.10 ]
保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、 最も不適当なものを選び、 不適当とする理由を述べよ。
1.保有水平耐力の計算において、塔状比が4を超える場合、転倒に対する基礎の検討が要求されている。
2.建築物に靱性を期待して設計する場合、建築物全体が保有水平耐力に達する以前にせん断破壊を生じさせないだけではなく、崩壊形に達するまでの段階でもせん断破壊を防止する必要があ る。
3.柱・梁の部材種別がすべてFAの鉄骨造において、保有耐力横補剛を満足しない梁があっても、 崩壊メカニズム形成時にその梁にヒンジが生じていなけれぱ、柱・梁の部材群としての種別は Aとしてよい。
4.地上部分について保有水平耐力を確認する場合、保有水平耐力時の基礎の設計は現行の法規において要求されていないが、必要に応じて終局時の状況を想定した検討を行う。
答え
3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(平19 国交告第594号第4)
2. 記述の通り。
3. 部材種別がすべて FAであっても、(1)筋交い端部の接合部、(2)柱及び梁の接合部、(3)梁の横補剛が十分であって急激な耐力の低下の恐れがない場合の条件を満たさない場合はFD部材としなければならない。
(昭55建 告第1792号第3 三)
4. 記述の通り。