2024年07月12日
令和元年度修了考査 法適合確認 問題1
問題1
一貫構造計算プログラムを用いた鉄骨造建築物の構造計算に関する次の設問について解答せよ。
く建築物概要等>
表1に建築物の概要と仮定条件を、図1に2階〜R階床梁伏図を、図2にX方向骨組の解析モデル図を示す。
表1 建築物の概要と仮定条件
構造種別:鉄骨造、
基礎及び基礎梁は鉄筋コンクリート造
階 数:地上3階、地階なし
基 礎:直接基礎(独立フーチング基礎)
屋 根:アスファルト防水
(単位床面積当たりの重量:150 N/m 2 )
押えコンクリート(厚さ t=80mm )
鉄筋コンクリートスラブ(厚さt=150 mm)
パラペット
(単位長さ当たりの重量:4.5kN/m)
非歩行(地震力用積載荷重:300N/m 2 )
2・3階床:増しコンクリート(厚さt=10mm)
鉄筋コンクリートスラブ(厚さt=150mm)
鋼製デッキ捨て型枠
(単位床面積当たりの重量:200N/m 2 )
外 壁:押出成形セメント板
(下地鉄骨含む単位床面積当たりの重量:
1,000N/m 2 )
使用材料:コンクリート 全て、
設計基準強度Fc=24N/mm 2
鉄骨柱:BCR295、梁:SN400B
柱脚 保有耐力接合を満足する露出柱脚
その他の仮定条件
?@ 階段・間仕切壁等のない、全階均ーな事務室とする。
?A 屋上突出物や外周からのはね出し架構はないものとする。
?B 架構は、全階、X軸及びY軸に対して軸対象とする。
?C 基礎を含めて、全ての部材の偏心はないものとする。

図1 2階〜R階床梁伏図 (単位:mm)

図2 Y1及びY2通り骨組の解析モデル図 (単位:mm)
く計算結果>
表2に一次設計用地震力の計算結果を、図3にY1及びY2通りの地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力)を示す。
表2 一次設計用地震力の計算結果


図3 Y1及びY2通りの地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力)
[ No.1 ]
2階及び3階の単位床面積当たりの層重量の妥当性を、表3のとおり概算で確認した。表中の?@〜?Cに入る数値として適切な値を記入せよ。

表3 2階及び3階の層重量の概算
答え
[ 解答解説 ]
?@ Fc=24N/mm 2
の鉄筋コンクリートの単位重量:24 (N/m 2
/mm)
?A 2階及び3階のコンクリートスラブ厚さ:150 (mm)
?B 24 × 150 = 3,600 (N/m 2
)
?C 事務室用積載荷重(地震力用):800 (N/m 2
)
[ No.2 ]
表2の「一次設計用地震力の計算結果」を確認し、明らかに入カミスと考えられる不適切な数値を1点挙げ、不適切と考える理由を述べよ。また、適切な数値(概算値)を求めよ。ただし、 R階の外壁重量と鉄骨重量は、表3の「2階及び3階の層重量の概算」の値(N/m 2 )と同じとする。
答え
[ 解答解説 ]
(不適切な数値)
R階層重量 Wi(kN)の1,460
(不適切と考える理由)
表1より屋根の荷重条件は、2・3階床の荷重条件と異なっているが、表2ではR階の層重量が2・3階の層重量と同じとなっているため。
(適切な数値)
押えコンクリート(厚さt=80mm) 23 × 80 =1,840
アスファルト防水 150
鉄筋コンクリートスラブ(厚さt=150mm) 24 × 150 = 3,600
鋼製デッキ捨て型枠 200
天井・設備 300
外壁(下地鉄骨含む) 1,000
鉄骨 1,000
非歩行(地震力用積載荷重) 300
(小計) 8,390
R階層重量Wi(kN)の計算
床荷重 8,390 × 10 × 20/1000 =1,678
パラペット重量 4.5 × (10 × 2 + 20 × 2)= 270
(合計) 1,948 (kN)
以上より、R階層重量の適切な数値(概算値)は 1,948 (kN)
なお、屋根スラブでは水勾配を床スラブコンクリートの増打ちで対応する場合がある。そのような場合には、水勾配用増しコンクリート重最を見込む必要がある。
[ No.3 ]
図3の「地震力による応力図(曲げモーメント及び柱のせん断力)」を確認し、表2の地震力を用いた計算結果として明らかに誤りと考えられる箇所を2点挙げ、誤りと考える理由を述べよ。また、これらの誤りが一貫構造計算プログラム使用時のデータの入カミスによるものであるとしたら、どのような入カミスがあったと考えられるかを述べよ。ただし、部材断面や柱脚回転ばねの剛性の入力及び一貫構造計算プログラムに誤りはないものとする。
答え
[ 解答解説 ]
(1)
(明らかに誤りと考えられる箇所)
1階柱のせん断力
(誤りと考える理由)
1階柱のせん断力の合計
( 95 +165 + 95 ) × 2= 710(kN)
が、表2の1階の層せん断力 876(kN)になっていない。
(2)
(明らかに誤りと考えられる箇所)
1階柱脚及び基礎梁の曲げモーメント
(誤りと考える理由)
1階ピン支点周りの部材に生じる曲げモーメントが
釣り合っていない。
(原因と考えられる入カミス)
(1) 1階柱のせん断力
・地震力を直接入力した際に誤って2階と同じ値を1階に入力した。
・2階節点に地震力とは逆向きの水平外力を誤って入力した。
(2) 1階柱脚及び基礎梁の曲げモーメント
・1階基礎梁節点に曲げモーメント外力を誤って入力した。
[ No.4 ]
次の枠内の記述は、構造設計者の耐震設計に関する総合所見である。この記述の不適切な点(誤り)を、構造特性係数Dsと関連付けて述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
Dsの値を設定する為には、先ずは架構に崩壊メカニズムが生じるまで荷重増分解析を行い、塑性ヒンジ発生位置、各部材の応力や破壊モード等を確認して部材毎のランクから層のランクを決定して、それに対応したDsを設定する必要がある。
対象建物の柱には冷間成形角形鋼管を用いていることから、崩壊メカニズム時の柱梁曲げ耐力比を確認して全体崩壊メカニズムか又は局部崩壊メカニズムかを判定し、塑性ヒンジ発生部材のランクに応じた層のランクからDsを設定する必要がある。なお、局部崩攘メカニズムの場合には該当する柱の耐力を低減して保有水平耐力を算定する必要がある。
しかし、総合所見では荷重増分解析において、ある層の層間変形角が最初に1/100に達した時点の評価でDs=0.25を設定して必要保有水平耐力を設定するとともに、その時点の水平力を保有水平耐力としている点が不適切である。
また、静的解析に基づく保有水平耐力時の最大層間変形角は、地震時の動的応答結果としての最大層間変形角と必ずしも一致しない為、予想される最大層間変形角が1/100以下に収まることが確認できたとの記述は不適切である。
2024年07月11日
令和元年度修了考査 法適合確認 問題2
「在来軸組工法による木造2階建て住宅の地震力に対する耐力壁の設計に関する設問」及び「木造軸組工法による耐力壁の許容せん断耐力を求めるために実施した静的水平加力実験に関する設問」について解答せよ。
[ No.1 ]
在来軸組工法による木造2階建て住宅の各階平面図を図1に示す。太線部分は倍率2.0の耐力壁を示している。屋根仕様は軽い屋根に分類され、小屋裏の利用はないものとする。この建築物の地震力に対する検討を、建築基準法第46条の規定(いわゆる壁量計算)により行う場合について、次の?@及び?Aの設問に解答せよ。なお、地震力用必要壁率は表1に示すとおりとする。

図1 各階平面図

表1 地震力用必要壁率
?@ 地震力に対する1階のX方向及びY方向の壁量を検討せよ。
答え
[ 解答解説 ]
地震力に対する1階のX方向及びY方向の壁量の検討
1階床面積 A = 6.0 × 8.0=48.0m 2
屋根仕様は軽い屋根として算定する。
必要壁量
Lu = 48.0m 2
× 0.29 m/ m 2
=13.92m
壁 量
X方向 Lwx=(2.0m × 3枚+1.0 m × 2枚)× 2.0倍=16.0m > 13.92m
∴ OK
Y方向 Lwy =(2.0m × 2枚+1.0 m × 4枚)× 2.0倍=16.0m > 13.92m
∴ OK
以上より、1階の壁量はX方向、Y方向共に満足している。
ちなみに、必要壁量は風圧力に対する検討も行い、大きい方を採用する。
?A 四分割法により、 1階のX方向及びY方向の耐力壁の配置を検討せよ。
答え
[ 解答解説 ]
四分割法により、1階のX方向及びY方向の耐力壁の配置の検討する。
X方向
(北側)
床面積A(m 2
)
6.0m × 8.0m/4
=12.0m 2
必要壁率 0.29(m/m 2
)、必要壁量 Lu 3.48m
壁量(Lw)
(2.0m × 2 + 1.0m) × 2.0 =10.0m
充足率(Lw/Lu)2.87 > 1.0
(南側)
6.0m × 8.0m/4
=12.0m 2
必要壁率 0.11(m/m 2
)、必要壁量 Lu 1.32m
壁量(Lw)
(2.0m + 1.0m) × 2.0 = 6.0m
充足率(Lw/Lu)4.54>1.0
ゆえに、X方向判定は適合
Y方向
(西側)
床面積A(m 2
)
8.0m × 6.0m/4
=12.0 m 2
必要壁率 0.29(m/m 2
)、必要壁量 Lu 3.48m
壁量(Lw)
(2.0m + 1.0m × 2) × 2.0 = 8.0m
充足率(Lw/Lu)2.29>1.0
(東側)
8.0m × 6.0m/4
=12.0 m 2
必要壁率 0.11(m/m 2
)、必要壁量 Lu 1.32mm
壁量(Lw)
(2.0m × 2) × 2.0 = 8.0m
充足率(Lw/Lu)6.06 > 1.0
ゆえに、Y方向判定は適合
補足:いずれも充足率 Lw/Lu ≧ 1.0のため、壁率比の計算は省略する。
[ No.2 ]
図2は、木造軸組工法の耐力壁の許容せん断耐力を求めるために実施した静的水平加力実験の試験体の概要である。また、図3は、この実験から得られた荷重ー変形関係(水平荷重Pと見かけのせん断変形角Rの関係)である。この実験結果をもとに、次の?@及び?Aの設問に解答せよ。

図2 試験体の概要

図3 荷重ー変形関係
?@ 実験結果より、この耐力壁の許容せん断耐力(kN/m)を求めよ。なお、実験は柱脚固定式で実施され、図3の荷重ー変形関係の荷重の値は、3体の実験結果の平均値を示す。また、低減係数及びばらつき係数は1.0とし、塑性率から導く耐力壁のDs値は0.5とする。
答え
[ 解答解説 ]
短期基準せん断耐力
Po= min(a,b,c,d) = 30kN
a:降伏耐力 Py=45kN
b:終局耐力 Pu × (0.2/Ds)= 75 × (0.2/0.5)= 30kN
c:最大荷重 Pmax × 2/3 = 90 × 2/3 =60kN
d:特定変形時の耐力P1/120=60kN
よって、壁の短期許容せん断耐力
=Po × α / L =30 × 1.0 /2.0 =15 kN/m
?A この耐力壁を、一般的な木造住宅の壁量計算に壁倍率5(許容せん断耐力9.8kN/m)の耐力壁として用いる場合、耐力壁周囲の構造計画上どのような問題点があるかを述べ、その対応策を述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
(問題点)
耐力壁形式の前提として、耐力壁端柱の柱頭柱脚接合部が耐力壁よりも先に破壊しないこと、つまり、接合部より先に壁が壊れることが必要である。
壁量計算は実験結果よりも小さな壁倍率5(許容せん断耐力9.5kN/m)で検討することで、安全側の検討となっているが、柱頭柱脚接合部や耐力壁周囲の部材に対しては危険側の値となるので注意が必要である。
(対応策)
耐力壁端柱の柱頭柱脚の引抜きを防止するため、引抜き力に対する余力を十分確保したうえで、柱頭柱脚接合部や柱断面及び土台のめり込み等の検討に対しては、実験結果から求まった 15kN/mを採用し、生じる軸力に対して安全性を確認する。
2024年07月10日
令和元年度修了考査 法適合確認 問題3
鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート3による設計に関する次の設問について解答せよ。
[ No.1 ]
鉄筋コンクリート柱の種別の判定に関する次の?@〜?Cの設問に解答せよ。対象とする柱(以下、「当該柱」という。)の諸元は図1、図2及び表1による。なお、当該柱の種別判定はX方向を対象とし、当該柱に取り付く梁の種別は考慮しないものとする。

図1 柱断面 (単位:mm)

図2 柱の曲げモーメント分布
表1 当該柱の柱頭及び柱脚の諸元(計算に用いる値)

くその他の諸条件>
(a) 柱の種別判定に用いる破壊モードとしては、柱頭・柱脚に塑性ヒンジが生じるモード(曲げ破壊)及び柱がせん断破壊するモード(せん断破壊)を考慮する。
(b) 柱のせん断余裕度(α s )は、柱の曲げ破壊時せん断力(Q mu )に対する柱のせん断終局耐力(Q su )の比率とする。なお、Q mu の算定には長期せん断力は考慮しなくてよい。
(c) 柱のせん断余裕度(α s )が要求値(α sn )以上である場合には、柱の破壊モードは曲げ破壊とし、構造耐力上支障のある急激な耐力の低下のおそれがない破壊モードとしてよい。
?@ 当該柱の曲げ破壊時せん断カ(Q mu )を求めよ。なお、柱の曲げ終局モーメント(Mu)は式 (1) により求めるものとする。Q mu の単位はkNとし、小数第1位を四捨五入して表記せよ。
式(1)


答え
[ 解答解説 ]
at=507mm 2
× 5本 = 2535 mm 2
σ y
= 379 N/mm 2
Fc = 24 N/mm 2
D = 700 mm、b = 700 mm、N=4,360,000 N
より
Mu = 0.8 α t
σ y
D + 0.5ND( 1 – N/ FcbD)
= 0.8 × 2535 × 379 × 700 + 0.5 × 4360000 × 700 × (1– 4360000 / 24 / 700 / 700)
Mu= 1498000000 Nmm
内法高さ:ho = 3,000mmより
Qmu = 2 × 1498000000 Nmm / 1000 / 3000mm=999 kN
?A 当該柱のせん断余裕度(αs)を求めよ。なお、柱のせん断終局耐力(Qsu)は式(2)により求めるものとする。また、αsは小数第3位を四捨五入して表記せよ。
答え
[ 解答解説 ]
Pt= 2535 mm 2
/(700mm × 700mm) × 100 = 0.517%
Q=2M/h o
より
M/(Q・d) = M/ (2M/ho・d) = ho/2d = 3000mm / (2 × 630mm) =2. 381
aw= 127mm 2
× 3本=381 mm 2
s=75mm、pw=381mn2/(700mm × 75mm) = 0.007
σ wy
=295 N/mm 2
σ o
=4, 360,000N/ (700mm × 700mm)
= 8.90 N/mm 2
く0. 4Fc=0.4 × 24N/mm 2
= 9.60 N/mm 2
j = 551mm
ただし、
にて計算する
よって、
α s
= Q su
/Q mu
=1190kN/999kN=1.19
?B 当該柱の破壊モードを、上記?@及び?Aの結果から推定せよ。なお、当該柱のせん断余裕度の要求値(α sn )は、1.1としてよい。
答え
[ 解答解説 ]
α s
= 1.19 ≧ α sn
= 1.1のため
柱の破壊モードは曲げ破壊型である
?C 当該柱の種別を、昭和55年建設省告示第1792号(以下、「告示」という。)に従って判定し、種別判定の根拠を簡潔に記述せよ。
答え
[ 解答解説 ]
?Bよりせん断破壊は生じないため、付着割裂破壊が生じないことを前提とすると
ho/D = 3000mm/700mm = 4.29 ≧ 2.5・・・FAの条件を満足
σ o
/Fc=8. 900N/mm 2
/24N/mm 2
= 0.371
0. 35 < σ o
/Fc ≦ 0. 45 ・・・・FBの条件を満足
pt = 0.517% ≦ 0.8% ・・・・・・FAの条件を満足
τ u
/Fc = ( 999000N / 700mm / 700mm) / 24N/mm 2
=0. 0849 ≦ 0. 1・・・・FAの条件を満足
(τ u
は柱の曲げ破壊時せん断力による)
より、σ o
/Fc のみがFAとなる条件の0.35以下を満足していないため
当該柱の部材種別はFBである
[ No.2 ]
表2に示す鉄筋コンクリート造地上3階建ての建築物を対象に静的非線形荷重増分解析(以下、「増分解析」という。)を実施して保有水平耐力を計算した。次の?@〜?Cの設問に解答せよ。なお、計算対象はX方向とし、構造形式は耐力壁付きラーメン構造とする。
表2 対象建築物の構造計算に用いる諸元

く増分解析 保有水平耐力の計算に用いた条件及び計算結果等>
(a) 増分解析の地震力分布には、建築基準関係規定に規定する一次設計用地震力の分布を用いた。
(b) 架構は、増分解析時に脆性破壊することなく、増分解析終了時には全体崩壊形を形成した。
(c) 保有水平耐力は、増分解析終了時の水平耐力とした。
(d) 3階の保有水平耐力は 6,955kNで、柱及び耐力壁の負担水平耐力は下記のとおりであった。
種別FAの柱が負担する水平耐力の合計は 1,850 kN
種別FBの柱が負担する水平耐力の合計は 1,050 kN
種別FCの柱が負担する水平耐力の合計は 355kN
耐力壁の種別は全てWAで、負担する水平耐力の合計は 3,700kN
(e) 必要保有水平耐力は、建築基準関係規定に基づき計算した。
?@ 1階の保有水平耐力(Q u1 )を求めよ。なお、Q u1 の単位は kNとし、小数第1位を四捨五入して表記せよ。
答え
[ 解答解説 ]
保有水平耐力を算出した増分解析は一時設計用地震荷重の分布を用いているため、3階の保有水平耐力が6955kNより、1階の保有水平耐力は
Q u1
= ΣW 1
× A 1
× (6955 kN/ ΣW 3
× A 3
)
= 35000kN×1.00 × (6955kN/12000kN/1.38)
Q u1
= 14700 kN
?A 3階柱の部材群としての種別を告示に従って判定し、種別判定の根拠を簡潔に記述せよ。
答え
[ 解答解説 ]
γ A
= 1850kN/ (1850kN + 1050kN +355kN)
= 0.568
γ C
= 355kN/ (1850kN + 1050kN + 355kN)
= 0.109
より
γ A
≧ 0.5かつ γ C
≦ 0.2
のため
3階柱の部材群としての種別はAである
?B 3階の構造特性係数(D S3 )を告示に従って算定し、算定の根拠を簡潔に記述せよ。
答え
[ 解答解説 ]
耐震壁の部材種別は全てWAである
耐震壁の負担水平力の割合βuは、3700kN / 6955kN=0.532
であり
0.3 < βu ≦ 0.7となっている
?Aより柱はりの部材群としての種別はA
以上より3階の構造特性係数Dsは、0.35である
?C 1階の構造特性係数(D S1 )は3階より 0.05 大きい値であった(D S1 = D S3 + 0.05)。 1階の必要保有水平耐力(Q un1 )に対する1階の保有水平耐カ(Q u1 )の比率(Q u1 /Q un1 )を求めよ。
答え
[ 解答解説 ]
1階の構造特性係数D S1
=D S3
+ 0.05 = 0.35+0.05 = 0.40
よって1階の必要保有水平耐力Q un1
は
Q un1
=D S1
× Z × Rt × Fes × Σ W 1
× A 1
=0.40 × 1.0 × 1.0 × 1.0 × 35000kN × 1.00
= 14000kN
Q u1
/Q un1
= 14700kN/14000kN= 1.05
[ No.3 ]
次の枠内の文章は、鉄筋コンクリート造8階建てラーメン構造の建築物に対して、増分解析により保有水平耐力を確認したときの構造設計者の総合所見である。この文章中の二重下線部分について、この対応が適切か、不適切かを答えよ。
不適切とした場合には、最も適切と考えられる対応を簡潔に記述せよ。なお、ここでは、ある荷重ステップにおける各層の層間変形角の最大値を最大層間変形角としている。
架構の水平耐力が必要保有水平耐力を上回る層間変形角の設計目標を1/100としたため、各階の保有水平耐力は最大層間変形角が1/100時点における層せん断力とした。
部材の種別は、同じ変形時点(最大層間変形角が1/100時点)の応力を用いて判定して、各階の必要保有水平耐力を計算した。
答え
[ 解答解説 ]
【 部材の種別は、同じ変形時点(最大層間変形角が1/100時点)の応力を用いて判定して、各階の必要保有水平耐力を計算した。
】は不適切である。
部材の種別を算定する際の応力は崩壊形が確認された時点の応力を用いるべきであるため、全体崩壊形が形成された1/40時点の応力を用いて部材の種別を算定すべきである。
2024年07月09日
令和元年度修了考査 法適合確認 問題4
図1に示す2層の鉄骨造ラーメン構造の建築物の崩壊メカニズムに関する次の設問について解答せよ。柱及び梁の断面、材種、基準強度F及び塑性断面係数Zpは、表のとおりとする。なお、H形鋼の柱 C2は、図の面内に強軸を有するものとする。

図1 骨組の解析モデル図 (単位:mm)

表 柱及び梁の諸元
[ No.1 ]
図1のように左方向から水平力が作用した場合の、全体崩壊形のメカニズム形成時の塑性ヒンジの発生位置を示せ。ただし、梁は保有耐力横補剛されており、柱梁接合部及び部材の中間部に塑性ヒンジは発生しないものとし、柱には柱脚部に塑性ヒンジが発生するものと仮定する。また、柱及び梁の全塑性モーメントは全断面有効と仮定して算定し、柱の全塑性モーメントの軸力による低減はないものとし、柱及び梁の長期荷重による曲げモーメントは無視できるものとする。
答え
[ 解答解説 ]
・全塑性モーメントの算定
(降伏強度は基準強度の1.1倍とする)
柱 1,2F
C1,cMp = cF × cZp
= 295 × 1.1 × 1,970 × 10 3
/10 -6
= 639 kN・m
柱 1F
C2 cMp = cF× cZp
= 235 × 1.1 × 1,280 × 10 3
/10 -6
= 331 kN・m
梁 R
G1 bMp = bF× bZp
= 235 × 1.1 × 1,560 × 10 3
/10 -6
= 403 kN・m
梁 2
G1 bMp = bF× bZp
= 235 × 1.1 × 2,340 × 10 3
/10 -6
= 605 kN・m
・ヒンジ位置の発生位置
RF 側柱 cMp( 2
C1) > bMp( R
G1)
につき、梁端部にヒンジが発生する
2F 側柱 cMp( 2
C1)+cMp( 1
C1) > bMp( 2
G1)
につき、梁端部にヒンジが発生する
2F 中柱 cMp( 2
C2) く2 × bMp( 2
G1)
につき、柱端部にヒンジが発生する
骨組のヒンジ発生位置を示す図(●がヒンジ発生位置)
[ No.2 ]
[ No.1 ]の崩壊メカニズム形成時における左側の柱C1について、2階の軸力 2F(C1-L) Nu及び 1階の軸力 1F(C1-L) Nuを求めよ。ただし、柱軸力は圧縮を正とし、左側の柱C1の2階の長期軸力は150kN、 1階の長期軸力は 300kNとする。なお、全塑性モーメント算定時の鋼材の降伏強度は基準強度の1.1倍とし、塑性ヒンジの発生位置は節点位置としてよい。
答え
[ 解答解説 ]
問題 [ No.1 ]で求めたヒンジ位置から軸力を算定する。
・2階軸力の算定
梁端部にヒンジが発生することから、崩壊メカニズム形成時の柱付加軸力は下式となる。
2F(C1-L)
N E
=2 × bMp ( R
G1)/梁スパン= 2 × 403kN・m/ 8m = 101kN
2F(C1-L)
N u
= 2F(C1-L)
N L
− 2F(C1-L)
N E
=150 kN –101 kN = 49 kN
・1階軸力の算定
側柱は梁端部、中柱は柱頭にヒンジが発生することから、崩壊メカニズム形成時の柱付加軸力は下式となる。
1F(C1-L)
N E
= ( bMp( 2
G1) + cMp( 1
C2) /2) / 梁スパン=(605 kN・m + 331 kN・m/ 2) /4m
= 193 kN
1F(C1-L)
N u
= 1F(C1-L)
N L
− ( 2F(C1-L)
N E
+ 1F(C1-L)
N E
)=300 kN − (193 kN + 101 kN)
= 6 kN
梁の曲げモーメント・せん断
[ No.3 ]
[ No.1 ]の崩壊メカニズム形成時の2階の保有水平耐力 2F Q u 及び1階の保有水平耐力 1F Q u を求めよ。なお、 2階側柱の曲げモーメントの反曲点高さは、階高の0.3倍とする。
答え
[ 解答解説 ]
問題 [ No.1 ]で求めたヒンジ位置から保有水平耐力を算定する。
・崩壊メカニズム時の曲げ応力及びせん断力分布は下図となる。
・保有水平耐力は下式となる。
2F
Q u
= 192 kN + 192 kN = 384 kN
1F
Q u
= 268 kN + 166 kN + 268 kN = 702 kN
[ No.4 ]
[ No.1 ]の崩壊メカニズム形成時の中柱C2の接合部パネル(図1の接合部A)のせん断応力度 p τを式(1)により、接合部パネルの終局せん断強度 p τ u を式(2)により求め、それらの値の比較により、接合部パネルが塑性化するか否かを判断せよ。なお、接合部パネルの板厚及び基準強度は柱ウェブと同じとし、接合部パネルの終局せん断強度に与える柱軸力の影響は無視できるものとする。
次に、接合部パネルを塑性化させないための構造設計上の対策を2点挙げよ。なお、柱及び梁の断面寸法(部材せい、部材幅)の変更はできないものとする。



(引用:日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」一部編集)
答え
[ 解答解説 ]
問題文中の「pMp:接合部パネルの全塑性モーメント」は「鋼構造接合部設計指針(日本建築学会 2012)」の「pM:接合部パネルモーメント」として計算式を用いる。また図中の接合部パネルの図は、指針の図と異なり、せん断力が卓越した場合を示している。
d c
= 0.4m – 0.012m = 0.388m
d b
= 0.5m – 0.019m = 0.481m
t p
= 0.009m
[ No.3 ] 解答の応力図より
p
M p
= 331 kN・m − (193 kN + 193kN) × 0.388 m/2 = 256 kN・m
V e
= 0.388m × 0.481m × 0.009m = 0.00168m 3
p
τ = 256 kN・m/ 0.00168m 3
×10 -3
= 152 N/mm 2
p
τ u
= 1.1 × 235 kN/mm 2
/ √ 3 =149 N/mm 2
< p
τ = 152 N/mm 2
以上より、接合部パネルは塑性化する
接合部パネルを塑性化させない構造設計上の対策(例)
・柱梁仕口部を組立材とし、接合部パネル厚を確保する。
・接合部パネルにカバープレートやスチフナプレートを溶接することにより補強する。
・接合部パネルの鋼材強度を大きくする。
2024年07月08日
令和元年度修了考査 法適合確認 問題5
図1に示す2層2スパンの鉄骨造骨組の設計に関する次の設問について解答せよ。耐震計算ルートは3とし、柱、大梁及び筋かいの材料特性及び断面性能等の諸元は表1〜表3のとおりである。なお、筋かいは、構面内曲げが弱軸回りとなるように配置され、部材中央部を筋かいと同断面の部材により座屈補剛されているものとする。

図1 骨組のモデル図(単位:mm)
表1 柱の諸元

表2 大梁の諸元

表3 筋かいの諸元


[ No.1 ]
地震時に高レベル応力を繰り返し受ける柱梁接合部の仕口部の溶接部には、瞬間的な亀裂の伝搬を伴う脆性破壊を避けるため、強度の他に靱性も要求される。大梁端部での脆性破壊を防止し、安定した塑性変形能力を確保するため、柱梁接合部の仕口部の溶接について、「構造設計」及び「鉄骨製作」それぞれの段階で特に留意すべき点を簡潔に述べよ。
答え
[ 解答解説 ]
「構造設計」で留意すべき点(例)
・切欠き状の欠陥の回避(応カ・ひずみ集中源の除去)
ノンスカラップ工法の採用など
・高い靱性材料の採用
・梁端部拡幅工法などにより、塑性ヒンジが溶接位置で発生しないようにする
「鉄骨製作」で留意すべき点(例)
・熱影響部などの品質を確保するための入熱・パス間温度の管理
・ショートビードの回避や予熱の併用
[ No.2 ]
図1に示す鉄骨造骨組が下記(a)~(c)の条件にある場合について、次の?@及び?Aの設問に解答せよ。
(a) 各部材の接合部は保有水平耐力接合を満足している。
(b) 柱及び大梁の幅厚比は、全て種別FAを満足し、大梁は全て保有耐力横補剛されている。
(c) 柱脚部は露出柱脚であるが、保有水平耐力接合を満足している。Ds値の割増しは必要ない。
?@ 1階の筋かいについて、部材としての種別を昭和55年建設省告示第1792号(以下、「告示」という。)に従って判定し、種別判定の根拠を簡潔に記述せよ。
答え
[ 解答解説 ]
1階の筋交い長さ L = √(4,000 2
+ 3,000 2
) = 5,000 mm
筋交いの細長比
強軸 座屈長さ 5,000 mm
λ x
= L / i x
= 5,000 mm / 86.2 mm = 58.0
弱軸 座屈長さ 5,000 mm/ 2 = 2,500 mm
λ y
= L / i y
= 2,500 mm/ 50.2 mm = 49.8
部材の細長比 λ = max(λ x
, λ y
) = 58.0
?昭和55年建設省告示第1792号・第3 (最終改正平成19年5月18日国土交通省告示第596号)より
(495 / √ F = 32.3) < ( λ= 58.0) < (890/√ F =58.1)であるから、
部材種別BB
?A 1階の部材群としての種別を告示に従って判定し、各階の構造特性係数D s 値を求めよ。また、部材群としての種別判定の根拠及びD s 値の算定根拠も簡潔に記述せよ。なお、B u は 0.4とする。
答え
[ 解答解説 ]
柱及びはりの部材群としての種別 A
柱及びはりの全部材がFA材であることから、γ A
=1.0 ≧ 0. 5
∴ 柱及びはりの部材群としての種別はA
筋交いの部材群としての種別 B
筋かいの全部材がBB材
∴ 筋かいの部材群としての種別はB
柱及びはりの部材群としての種別A、筋かいの部材群としての種別B、0.3く(β u
= 0.4) ≦ 0.7
? 昭和55年建設省告示第1792号・第3 (最終改正平成19年5月18日国土交通省告示第596号)より
D s
値 0.3
[ No.3 ]
図2のように2階のX2~X3通りの大梁は、中央部分に吹抜けを設けるプランであるため全長にわたり均等間隔で横補剛をすることができない。その対応策として、両梁端部に1箇所ずつ横補剛する場合について、次の?@及び?Aの設問に解答せよ。

図2 2階X2〜X3通りの大梁周囲の平面図(単位:mm)
?@ X2通りから横補剛材の位置までの最大距離 ?1を下式により求めよ。なお、下式は 400ニュートン級炭素鋼の梁の横座屈を防止するために、梁の端部に近い部分に横補剛を設けるときの条件式である。

(出典:2015年度版建築物の構造関係技術基準解説書)
答え
[ 解答解説 ]
i y
= 47.4 mm
A f
= 200 × 22 = 4400 mm 2
h = 500 mm
? b
≦ 250 × A f
/h = 2200 mm
かつ
? b
≦ 65 × i y
= 3081 mm
柱フェイス位置にヒンジができるとした場合、
? 1
=2200 + 350/2 = 2375 mm
?A 左右の横補剛材の位置を?@で求めた ? 1 で決定し、その位置をそれぞれH L 、H R とするとき、H L 〜H R 間には横補剛が不要であることを計算により示せ。ただし、横補剛検討用の曲げモーメント分布には、安全率 α= 1.2を乗じたものを用いるものとし、M p の算定に用いる材料強度は、基準強度 F値の1.1倍とする。また、長期荷重は無視するものとする。なお、H形断面部材の長期許容曲げ応力度は次により求めるものとする。

(平成13年国土交通省告示第1024号第1第三号ハ表1(1)(抄))
答え
[ 解答解説 ]
両端降伏時の梁端部の曲げモーメント
αM p
= 1.2 × Z p
× 1.1F
=1.2 × (2,600 × 10 3
)mm 3
× 1.1 × 235N/mm 2
× 10 -6
= 8.07 × 10 8
N・mm = 807kN・m
柱フェイス位置で両端がαM p
となるときの梁端部から? 1
の位置での曲げモーメント
梁内法スパン 10,000mm −350mm = 9,650 mm
M ?1
= 807 kN・m × (9,650 mm − 2,200 mm × 2) / 9,650 mm= 439 kN・m
H L
〜H R
間の端部曲げモーメントが上述のM 1
= M 2
となるときのH L
〜H R
間の短期許容曲げモーメントM s
M 1
= M 2
= 439 kN・m
曲げモーメント分布が複曲率なのでM 2
/M 1
= 1.0
∴ C = 1.75 + 1.05 × 1.0 + 0.3 × 1.0 2
= 3.10
→ C= 2.3
Λ = 1500/√ (235/1.5) = 120
? b
= 10,000 mm – 2,375mm × 2
= 5,250mm (H L
〜H R
間の長さ)
i b
= 54.0mm
A f
= 200mm × 22 mm = 4,400 mm 2
h= 500 mm
f b1
= 235 x (2/3 – 4/15 × (5250 / 54.0) 2
/ (2.3 × 120 2
)) = 139 N/mm 2
f b2
=89000/(5250 x 500 / 4400) = 149 N/mm 2
f b
= max(f b1
,f b2
) = f b2
=149 N/mm 2
よって短期許容曲げモーメントM s
は、
M s
= Z x
× 1.5 × f b
= (2,330 × 10 3
) mm 3
× 1.5 × 149 N/mm 2
= 4.89 × 10 8
N・mm = 521 kN・m
M ?1
(439kN・m) < M s
(521 kN・m)となり、梁の両端がαM p
に達するときの梁端部から? 1
の位置での曲げモーメントM ?1
は、短期許容曲げモーメントM s
より小さい。
H L
~H R
間には横補剛は不要である。