冒頭の1.「オブヴィアス・ソング」からして実にポップで、曲の展開がスリリングだ。同様のポップセンスは5.「ジャミー・G」や7.「イッツ・オール・トゥー・マッチ」など他の多くの収録曲にも強く見て取れる。しかし何と言っても、そうしたポップセンスの良さという点で筆者が好きなのは、3.「ストレンジャー・ザン・フィクション」である。“事実は小説よりも奇なり”という言葉があるが、元はバイロン(英国の詩人)の言葉で、“真実は虚構よりも奇なり(Truth is stranger than fiction)”というらしい。ジョー・ジャクソンは、これをもじって“愛のみぞ虚構よりも奇たりうる(Only love can be stranger than fiction)”と歌っている。ポップセンスのよさにこういうひねりが加わっているのだ(そのひねりがなくとも見事であるのだが)。あともう一つの聴きどころは、スローテンポの9.「ジ・アザー・ミー」。ジョー・ジャクソンの他の有名曲(「奴に気をつけろ(イズ・シー・リアリー・ゴーイング・アウト・ウィズ・ヒム?)」、「危険な関係(ブレイキング・アス・イン・トゥー)」、「スローな曲をかけてくれ(スロー・ソング)」など)と並べて遜色のない名曲の一つである。これら3.と9.だけでもこのアルバムは聴く価値があり、その上その他の曲も見事となれば、非の打ちどころがない。
1. Obvious Song 2. Goin' Downtown 3. Stranger Than Fiction 4. Oh Well 5. Jamie G. 6. Hit Single 7. It's All Too Much 8. When You're Not Around 9. The Other Me 10. Trying to Cry 11. My House 12. Old Songs 13. Drowning