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歴史を読み解くカギは報道されない事実の中に隠されていることがある。例えば、首相官邸前で行われている原発再稼働に反対するデモ。日本では無視されるか、小さな扱いに止まっているが、外国のメディアは今回のデモを比較的に大きく取り上げている。 アメリカの不公正な政治経済システムに抗議する「占拠運動」には冷淡だったアメリカのメディア、例えばニューヨーク・タイムズ紙も紙面を割き、主催者発表で15万人、警察発表で1万7000人、地元メディアの推計で2万から4万5000人と詳しく伝えている。 しかし、原発問題よりも報道に及び腰なテーマがある。リビアやシリアの情勢だ。報道していると言う人も多いだろうが、それはアメリカやイギリスを中心とするNATOや湾岸産油国の宣伝が流されているだけ。リビアやシリアの体制を転覆させるために都合に良い話だけを大々的に伝えているということだ。 リビアをNATOや湾岸産油国が軍事侵攻した際、空爆だけでなく、イギリスなどは特殊部隊を潜入させ、アル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)を使っていたのだが、日本できちんと報道されたという話を聞かない。ムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊した後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられたとする映像が伝えられたが、これも無視された。 体制転覆後、リビアではサハラ以南の出身者が拉致、拘束されたうえ、拷問を受け、中には処刑された人もいたことが明らかになっている。明らかに人権が侵害されている。 アメリカと敵対関係にある国や団体を攻撃するとき、アムネスティー・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチは盛んに利用されるが、「西側」にとって都合の悪話では無視する。リビアでもアムネスティ・インターナショナルはNATO軍による住民殺害の問題について調査を要求、ヒューマン・ライツ・ウォッチは反カダフィ軍がカダフィ派とも見られる人びとを不適切な手段で拘束していると批判しているものの、日本では伝えられていないのではないだろうか。 シリアでも、アメリカのネオコンやイギリスの工作について触れられることはほとんどない。例えば、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権がサウジアラビアなどの国々と手を組み、シリアやイランを攻撃する秘密工作を始めたと2007年の時点で調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは警告しているのだが、この1年の間にハーシュの警告を日本で取り上げられたという話は聞かない。 また、ニューヨークの世界貿易センターやペンタゴンが攻撃された2001年9月11日の直後、ブッシュ政権は攻撃予定国をリストアップ、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っているが、日本のマスコミは無視している。1991年の段階でネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除するともクラーク元司令官は述べているのだが、日本のマスコミは重要視していない。 最近の例では、ホウラ地区での住民虐殺が重要だろう。日本でも政府軍、後には親政府派の武将集団が住民を殺したと盛んに報道されたが、ローマ教皇庁のフィデス通信やドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙は反政府軍による親政府派住民の虐殺だと伝えている。この報道を日本のマスコミが伝えたという話は寡聞にして知らない。反政府軍に出撃拠点を提供、兵士を訓練、武器を与え、最近では兵士に賃金を渡すという話も伝わっているが、マスコミは興味がないようだ。 日本のマスコミは原発以外の話でも信用できない、つまり単なるプロパガンダ機関だということ。国際問題の場合、原発に関してはマスコミを批判しているような人でもプロパガンダで踊らされている。
2012.06.30
核エネルギーの開発は破壊を目的にして始まった。1942年にアメリカでは「マンハッタン計画」が正式にスタート、その翌年には日本でも理化学研究所の仁科芳雄を中心にして「二号研究」が始まり、東京帝大、大阪帝大、東北帝大の研究者が参加している。その一つの結果が1945年8月の広島と長崎における原爆の使用、つまり市民の大量虐殺である。 1953年12月になると、ドワイト・アイゼンハワー米大統領は国連総会で「原子力の平和利用」を宣言する。核兵器というイメージを誤魔化すためだったのか、本当に勘違いしていたのかは不明だが、スリーマイル島原発、チェルノブイリ原発、そして東電福島第一原発の事故を見るだけでもアイゼンハワーの宣言が無意味だということは明確だ。 核エネルギーの恐ろしさを体験したはずの日本人だが、1954年3月には原子力予算案が国会に提出される。しかもその前日、南太平洋のビキニ環礁近くで操業していたマグロ漁船「第五福竜丸」の船員23名が被曝していた。アメリカが行った水爆実験のためだった。これが「原子力の平和利用」の実態、裏と表だ。 その後、日本でも核エネルギーの研究は続き、1964年に中国が核実験を実施すると日本でも核兵器の開発に向かって動き始め、1965年に訪米した佐藤栄作首相はリンドン・ジョンソン米大統領に対し、「個人的には中国が核兵器を持つならば、日本も核兵器を持つべきだと考える」と伝えている。 1969年には西ドイツ政府と秘密裏に協議、その席で日本側は核武装によって超大国への道を歩もうと主張したのだという。西ドイツは提案を拒否するが、日本は核開発の研究を続け、10年から15年の期間での核武装を実現することは難しくないという結論に達している。 このとき、原爆に必要なプルトニウムは日本原子力発電所の東海発電所で生産すると想定、高純度のプルトニウムを年間100キログラム余り作れると見積もっていた。つまり、長崎に落とされた原爆を10個は作れるということになる。(NHK「“核”を求めた日本」2010年10月放送) ロナルド・レーガンが大統領だった1980年代、アメリカ政府は日本の核兵器開発を後押ししていた可能性が高い。その後、日本が保有する兵器レベルのプルトニウムは70トンに達したとジャーナリストのジョセフ・トレントは主張している。真偽は不明だが、ありえない話ではない。 日本が核兵器の開発を真剣に考え始めた1972年当時、日本にあった原発は5基、182万3000kWにすぎなかった。全体の発電量の3%以下ということになる。こうした状況を一気に変える出来事が1973年10月に起こる。第4次中東戦争が勃発、OPEC(石油輸出国機構)に加盟するペルシャ湾岸の6カ国が原油の公示価格を1バーレルあた3.01ドルから5.12ドルへ引き上げると発表したのである。なお、このときにイスラエル政府は核兵器の使用を閣議決定している。 この値上げは、その年の5月にスウェーデンで開かれた秘密会議で決まったとザキ・ヤマニ元サウジアラビア石油相は話している。その会議とは、ビルダーバーグ・グループが主催したものだということをイギリスのジャーナリスト、ロビン・ラムゼーが確認している。 当初、原油値上げにサウジアラビアのファイサル国王は反対していた。コストの高い油田がライバルとして登場するほか、代替エネルギーの開発に拍車がかかることなどがその理由だったようだが、その予測通り、「原子力」が代替エネルギーとして登場する。この流れは日本だけでなく、世界的に起こっている。原発を増殖、拡散させることも原油価格を大幅に引き上げる大きな理由だったと考えても不自然ではない。オイルショックが原発を拡散させる切っ掛けになっている。 本ブログでは以前にも指摘したことだが、原発と温室効果ガス(石油)を対立させて議論することは間違っていると言わざるをえない。原子力と石油の背景は同じであり、その背景である巨大資本の術中にはまっているということだ。
2012.06.29
6月26日、「社会保障と税の一体改革」に関連する法案が衆議院本会議で可決された。民主、自民、公明の3党が賛成したというが、与党の民主党から57名が反対に回り、15名が棄権している。つまり「造反議員」は72名。 この採決にタイミングを合わせて「生活保護バッシング」が展開されたことでもわかるように、この法案を作成した勢力は社会保障システムに敵意を持っている。また、税の改革とは消費税率の引き上げを意味し、法人税は軽減、所得税も富裕層に、より有利な仕組みにしようとしている。要するに、「社会保障と税の一体改革」とは強者優遇、弱者冷遇の改革にほかならない。 長い間、日本は「無能な強者」を「有能な弱者」が支えてきた。その仕組みが典型的に現れていたのが製造業だ。江戸時代までに培った職人の技術が、明治以降に導入された近代産業を支えてきたのである。当然、アメリカの支配層もその構造に気づき、日本がライバルとして成長しないように、「有能な弱者」を潰し始める。これが1980年代にアメリカが持ち出してきた「ケイレツ問題」。 当時も今も、日本の大企業は労働者や下請け企業に適切な対価を支払わない。だから大企業は儲かるわけだが、そうなると国内の需要は細っていく。そこで輸出に依存することになるのだが、その最大のネックは為替レート。アメリカはケイレツを問題にする一方、為替レートを「円高(ドル安)」へ誘導、輸出型のシステムにダメージを与えた。 言うまでもなく、円高は1985年9月のプラザ合意を切っ掛けにして急速に進んだ。合意の直前は1ドル240円程度だったレートが1年後には1ドル150円台へ。今では80円を切る水準だ。 日本の企業は資金を銀行からの融資という形で得る傾向が強かったのだが、1980年代になると大企業は証券市場を利用し始める。株価操作(相場の引き上げ)とファイナンス(時価発行増資や転換社債などの発行)をセットにした仕組みだ。直接的には大手の証券会社がお膳立てをするのだが、その黒幕は大蔵省だったと考えられている。その実態に若干、メスを入れたのがアルバート・アレッツハウザーの『ザ・ハウス・オブ・ノムラ』。 野村証券の歴史をテーマにした本だが、この本がイギリスで出版されても野村証券は無視する構えだった。この点、本部長クラスまでは意思統一されていたという。原書を読めば(日本語訳と称する本が出版されているが、後半部分は問題部分を削除し、書き換えた「オリジナル」に近い)わかるが、証券界の人間から見て、それほど驚くような話は書かれていない。いや、微妙な話は意図的に削除していた。(アレッツハウザーと個人的に親交があったので、間違いない話)が、野村証券は一転して裁判を起こすと通告する。「天の声」があったという。大蔵省に関する記述や、警察の天下り問題が原因だったようだ。 1988年には日本の銀行を揺るがす出来事が起こる。BIS(国際決済銀行)で銀行の保有する信用リスクが問題になり、8%相当の自己資本を保有することが定められ、日本の場合は1992年から本格的に適用される。自己資本に有価証券の含み益の45%を参入することが認められ、日本の銀行は助かったはずなのだが、1990年から株価が大幅に下落して状況は一変、融資を絞られ、中小企業は致命的なダメージを受けることになった。この時期、日本の銀行や証券はスキャンダルで大揺れになる。「知る人ぞ知る」話が表面化したのだ。 そして1996年、日本とアメリカの「エリート」がアメリカのメリーランド州に集まって21世紀の日米関係をどうするかという話し合いを始めている。「日米21世紀委員会」が設置されたのである。委員会のメンバーは次の通り。【アメリカ】名誉委員長:ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領委 員 長:ウィリアム・ブロック元労働長官副 委員長:ハロルド・ブラウン元国防長官委 員:レスター・アルバーサル、ウィリアム・ブリーア、ウィリアム・クラーク、リチャード・フェアバンクス、ロバート・ホーマッツ、カレン・ハウス、フランク・ムルコースキー、ジョン・ナイスビット【日本】名誉委員長:宮沢喜一元首相委 員 長:堺屋太一(後に経済企画庁長官)副 委員長:田中直毅委 員:土井定包(大和証券)、福川伸次(電通、元通産事務次官)、稲盛和夫(京セラ)、猪口邦子(上智大学教授、防衛問題懇談会委員)、小林陽太郎(富士ゼロックス)、中谷巌(竹中平蔵の「兄貴分」だった)、奥山雄材(第二電電、元郵政事務次官)、山本貞雄(京セラ・マルチメディア)、速水優(後に日銀総裁)顧 問:小島明(日本経済新聞) 1998年にこの委員会は報告書を出しているが、その中にこんなことが書かれている:改革によって、小さく権力が集中しない政府(巨大資本に権力が集中する国家)、均一タイプの税金導入(累進課税を否定、消費税の依存度を高めることになる)、そして教育の全面的な規制緩和と自由化(公教育の破壊)を実現しなければならない。中曽根康弘、小泉純一郎、野田佳彦、そして橋下徹の政策を連想させる。(カッコ内は引用者)
2012.06.28
トルコ政府は15両以上の戦車を含む部隊をシリアとの国境近くに配置したが、それに対してシリアのバシャール・アル・アサド大統領は戦争状態に入っていると発言した。イギリスの特殊部隊がシリア領に侵攻したという情報も伝えられている。 トルコ政府が好戦的な発言をするようになった直接的な切っ掛けは、トルコ軍の戦闘機をシリア軍が撃墜したことにあるのだが、トルコ側の主張には無理があり、シリア側の主張、反論に答えられていないことは本ブログでも指摘した通り。 ホウラ地区での住民虐殺に関しても、シリア政府に責任があるとするNATO、湾岸産油国、そして国連の一部などの宣伝を否定する報告が出ている。 最初はロシア人ジャーナリストだったが、続いてローマ教皇庁の通信社であるフィデス通信、さらにドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も同じ趣旨の話を伝えている。しかも、イギリスのテレビ局、チャンネル4のアレックス・トンプソンは、反政府軍は彼の取材チームを交戦地帯へと導き、政府軍から銃撃されるように仕向けたとしている。 シリアの内戦(人によっては外国の軍事介入)ではキリスト教徒も犠牲になっていて、その真相を「西側」のメディアが伝えないことがフィデス通信の報道につながったのだろう。その記事では、住民を虐殺したのはスンニ派のサラフィ主義者や反政府軍に参加している外国人傭兵だとギリシャ正教修道院長は語っている。 現在はインターネットの時代。メディアをコントロールしても情報は漏れてしまう。のんびりしていると、シリアの体制転覆を目指す勢力にとって都合の悪い報告が注目されかねず、NATO/湾岸産油国にとっては困ったことになる。じっくり考える時間を人びとに与えないために次々と「目を惹く出来事」を起こし、引くに引けない状況、気づいたときは手遅れという状況を作ろうとするだろう。
2012.06.27
シリアに対する「西側」の動きを左右する可能性の高い会議が開催された。主催したのはビルダーバーグ・グループ。5月31日から6月3日にかけてアメリカのバージニア州チャンティリーにあるウェストフィールズ・マリオット・ワシントン・ダレス・ホテルで開かれている。 この団体はヨーロッパとアメリカの支配層が利害を調整するために創設されたと言われ、1954年5月に最初の会合がオランダのビルダーバーグ・ホテルで開催されたことからこう呼ばれるようになった。 創設の際、中心になったのはポーランド生まれのヨセフ・レッティンゲルとオランダのベルンハルト王子で、レッティンゲルの背後にはアベレル・ハリマンやデイビッド・ロックフェラーといったアメリカ経済界の大物がいた。 その19年後、OPEC(石油輸出国機構)は原油価格を1バーレルあたり3.01ドルから5.12ドルへ引き上げているが、この値上げは1973年5月にスウェーデンで開かれた秘密会議で決まったとザキ・ヤマニ元サウジアラビア石油相は話している。そのとき、アメリカとイギリスの代表は400%の原油値上げを要求したという。その会議を開いたのがビルダーバーグ・グループだということをイギリスのジャーナリスト、ロビン・ラムゼーが確認している。 当時、最大の産油国、サウジアラビアのファイサル国王は値上げを嫌っていた。コストの高い油田がライバルとして登場するほか、代替エネルギーの開発に拍車がかかることなどがその理由だったようだ。にもかかわらず値上げされたのは、アメリカ政府で大きな影響力を維持していたヘンリー・キッシンジャーが求めたため。要するに、OPECは産油国でなく、石油産業に支配されているということだ。 このビルダーバーグ・グループが今年はアメリカで会議を開いた。その議題には、「発展途上国における民主主義の将来」、「エネルギーの政治学と地政学」、「中東の安定と不安定」、「西側はイランに何ができるか?」といったものが含まれている。資源支配、つまり資源国侵略について討議したとしか思えない。 今回、シリアの反政府派を代表してバッスマ・コドマニが出席していたが、もうひとり注目されているのがイギリスのマーカス・アギウス。金融界の大物で、現在はバークレー銀行の会長だが、別の顔もある。つまりBBC執行役員会の非執行役員。妻はエドムンド・ド・ロスチャイルドの娘、キャサリンである。 シリア問題でBBCが反政府派を支援、偽情報を交えながらバシャール・アル・アサド政権を攻撃してきた。露骨にプロパガンダを続けてきたわけだが、この事実とアギウスの存在を無縁だと考えることはできない。
2012.06.27
シリア軍に撃墜されたのはトルコ空軍のF4だった。1958年から81年にかけてマクドネル・ダグラスが生産、いわばベトナム戦争時代の戦闘機である。現在、トルコ空軍の主力戦闘機はF16で、222機が配備されている。それに対し、F4は戦闘機(F4E)が127機、偵察機(RF4E)が35機。この偵察機が今回、撃墜されたという。F16でなくF4が領空を侵犯したことに違和感を感じる人もいるようだ。 実は、6月以降、シリアに対する圧力が強まることを予想していた人は少なくない。その理由は5月31日から6月3日までアメリカのバージニア州で開かれたビルダーバーグ・グループの会議にある。インフォウォーズというサイトを主宰しているアレックス・ジョーンズは現地へ行き、抗議活動を展開していた。 このビルダーバーグ・グループはヨーロッパとアメリカの支配層が利害を調整するために創設したと言われ、石油産業の影響を受けているが、その会議に今年はシリアの反政府派からバッスマ・コドマニが出席、当然、シリアの体制転覆が議題になったはずである。そこで、何かが始まると推測されたわけだ。 ホウラ地区の虐殺は反政府軍の仕業ということが露見したが、新たな動きとしてトルコ軍機の撃墜、シリアとトルコとの国境近辺での軍事的緊張という展開が見えてきた。トルコ領からイギリスの特殊部隊がシリア領内に侵入、拠点作りを始めているとも言われ、確かに軍事的な緊張は高まっている。その原因はトルコ、そして背後のNATOにあるわけだが。
2012.06.26
ロシアのウラジミール・プーチン大統領はイスラエルを訪問、6月25日にベンヤミン・ネタニヤフ首相に対してイランは核兵器の開発をしていないと語り、攻撃を自重するように求めたという。6月26日にはベルギーのブリュッセルでNATOの会議が開かれ、トルコの戦闘機が撃墜された問題が討議された。 こうした会談に合わせるように、シリアのダマスカス近郊で激しい戦闘があったとイスラエルで報道されている。5月26日にイギリスの特殊部隊がシリア領内へ入っていたとする情報(5月26日火曜日とあるので、6月26日の間違いかもしれない)もあり、この部隊とバシャール・アル・アサド大統領の官邸を守る部隊が衝突したのかもしれない。 5月26日とする情報が正しいとするなら、イギリスの特殊部隊が侵入したタイミングはホウラ地区での住民虐殺とあっている。本ブログでは何度も書いているので恐縮だが、この事件は当初、政府軍の砲撃が原因だとされていた。これが否定されると政府派の武装集団による「処刑」だとされた。 こうした話は現在、ロシア人ジャーナリストのほか、ローマ教皇庁のフィデス通信やドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙などの報道で信憑性がなくなっている。反政府軍による親政府派住民の虐殺だというのだ。 ギリシャ正教修道院長の報告によると、虐殺したのはスンニ派のサラフィ主義者や反政府軍に参加している外国人傭兵。フランクフルター・アルゲマイネ紙によると、スンニ派でも国会議員の家族は政府派だとして殺されている。キリスト教徒も犠牲になっている。 リビアの体制転覆でもイギリスが主導的な役割を果たしていたが、シリアでもイギリスが積極的である。反政府派の拠点がロンドンだということが無関係だとは思えない。湾岸の産油国ともイギリスはアメリカと同様、親密な関係にある。ムスリム同胞団がサウジアラビアと深く結びついていることも忘れてはならない。 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はシリアとの国境地帯で軍事的な緊張が高まっていると叫んでいるが、これも一連の動きと無関係ではないだろう。
2012.06.26
トルコの戦闘機がシリア軍に撃墜された件で、トルコ側の説明に対する疑問の声が聞こえてくる。「この領空侵犯事件だけを見るなら、トルコとシリアの主張は五分五分のように思える」という表現は正しくなかった。 トルコのアフメト・ダブトオール外相は自国のF4ファントム戦闘機がシリアの領空を「間違って」侵犯したことは認めたが、すぐに外へ出たとしている。撃墜されたのはその15分後、シリアから13海里(約24キロメートル)の沖で、国際法が定める領空の範囲12海里(約22キロメートル)の外だとしている。 F-4のトップ・スピードはマッハ2.23(時速2370キロメートル)、巡航スピードは時速940キロメートル。15分間で飛行する距離はトップ・スピードなら約593キロメートル、巡航スピードなら235キロメートルに達する。トルコ政府の主張が正しいとするならば、領空を侵犯した後、トルコ軍機は領空のすぐ外をグルグル回っていたのか、遠く離れてから戻ってきたということになるだろう。いずれにしろ、異常だ。 トルコ政府は撃墜された状況を正確に把握しているとしているが、それにもかかわらず海面に漂っているであろう残骸を回収していないことにも疑問が投げかけられている。パイロットの行方も不明のようだが、問題の戦闘機、最近はやりの無人機だった可能性も否定できないだろう。この説だと、撃墜されることも計画に入っていたということになる。 いずれにしろ、トルコ政府側の主張は分が悪い。説得力がないということだ。
2012.06.26
シリア軍に戦闘機を撃墜されたトルコのアフメト・ダブトオール外相はシリア領空を侵犯した事実を認めたものの、攻撃を受けた場所は公海上だったと主張、NATOはトルコ政府の要請でこの問題を協議するようだ。ちなみに、自国船籍の「マビ・マルマラ」を公海上でイスラエル海軍の特殊部隊が2010年に襲撃、9名が殺害され、多数の負傷者が出ているが、このときよりトルコ政府は強硬だ。 こうしたトルコ側の主張に対し、シリア政府は領空内で撃墜したとしている。イスラエルではロシア製の対空システム「パンチール1」で撃ち落としたと伝えられているのだが、このシステムはミサイル、機銃、レーダーがセットになっている。 シリア政府によると、トルコ機は100メートルという低空でラタキアに向かって侵入してきた。ラタキアから90キロメートルの場所にはソ連海軍の基地がある。たとえシリア機でも撃墜する状況にあったというのがシリア側の主張だ。 また、侵入機を撃墜したのはミサイルでなく機銃であり、その射程距離は1.2キロメートル。トルコ側の主張はありえないともしている。当初からシリア側は海岸線から1キロメートルの地点で撃墜したとしていた。撃墜された戦闘機の残骸はシリア領海内の深さ1300メートルの場所にあるとも言われているが、それが回収されたなら明確になるかもしれない。 この領空侵犯事件だけを見るなら、トルコとシリアの主張は五分五分のように思えるのだが、これまでの経緯を考えると違った風景が見えてくる。 本ブログでは何度も書いているように、1991年の段階でアメリカのネオコン(親イスラエル派)は旧ソ連圏の国々、イラン、イラクと同じように、シリアを「掃除する」としていた。 2001年の秋になると、アメリカ政府はアフガニスタンに続き、イラク、イラン、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンと共にシリアを攻撃リストに載せている。そして2007年になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、アメリカ政府がサウジアラビアなどの国々と手を組み、シリアやイランを攻撃する秘密工作を始めたと警告している。 そして昨年春、シリア政府に対する武装蜂起が起こるとトルコは反政府軍を保護、同国にある米空軍インシルリク基地ではアメリカの特殊部隊員や情報機関員、イギリスやフランスの特殊部隊員が反政府軍の兵士を訓練してきた。トルコは事実上、シリアに軍事介入しているのである。 こうした訓練のほか、武器などをアメリカは湾岸産油国経由で提供してきたと言われている。リビアからも運び込んでいるようだ。そうした支援活動のほか、「西側」はメディアを使ったプロパガンダを実施している。 1991年の湾岸戦争にしろ、2003年のイラク戦争にしろ、アメリカ政府は嘘八百を並べて戦争を始めた。シリアでも同じことを繰り返しているのだが、「西側」のメディアは前と同じように、米英両国政府の描くストーリーを垂れ流している。 そうしたプロパガンダも最近は綻びを見せ、例えば、ホウラ地区での虐殺では「西側」の主張とは違い、反政府軍が政府派と見られる住民を殺していた可能性が高まってきた。こうした報告はロシア人ジャーナリストだけでなく、ローマ教皇庁の通信社であるフィデス通信やドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も伝えている。イギリスのテレビ局、チャンネル4のアレックス・トンプソンによると、反政府軍は彼の取材チームを交戦地帯へと導き、政府軍から銃撃されるように仕向けたという。 こうした情報が出てきている中、「相次ぐ虐殺への関与が言われているのは、政府側から武器を与えられた民兵組織だという」などと書く新聞がまだ存在する。情報を知らないのか、確信犯的に書いたのかは不明だが、シリアの体制転覆を狙うNATOや湾岸産油国のプロパガンダを広めるという役割は果たしている。
2012.06.25
アメリカ軍が東アジアにおける軍事力を増強、中国包囲網を築きつつある。そうした流れの中、軍事拠点としての沖縄にアメリカは魅力を感じなくなり、オーストラリアなどに拠点を作ろうとしている。そうした中、日本列島に訓練場としての価値を見いだしたらしく、MV22オスプレイを普天間に配備、日本全土で訓練を実施しようと計画している。 訓練を実施するルートは、秋田を中心とするピンク、宮城を中心とするグリーン、新潟を中心とするブルー、四国/紀伊半島のオレンジ、九州のイエロー、そして奄美諸島のパープル。さらに、岩国基地のある中国地方にブラウンがあるとも言われている。 ネオコン(親イスラエル派)系シンクタンクのPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)は2000年に「米国防の再構築」という報告書を発表、その中で潜在的なライバルとして東アジアを警戒すべきだとしていた。ライバルへ成長する前に東アジアを潰してしまえ、ということだ。 この報告書のベースになったのは、1992年に作成されたDPG(国防計画指針)。国防総省内部のシンクタンク、「ONA(ネット評価室)」のアンドリュー・マーシャル室長が中心になって書き上げられたようだ。この人物、かつてはソ連脅威論で売っていたのだが、ソ連の消滅に伴い、矛先を中国へ向けていた。 DPGが作成される前年、つまり1991年にネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除すると語っていたという。これは、1997年から2000年まで欧州連合軍最高司令官を務めたウェズリー・クラーク大将の話だ。2006年に実施された演習「ビジラント・シールド07」ではロシア、中国、朝鮮も攻撃のターゲットになっていたともいう。 こうした戦略の背景にはマーシャルが存在した。2001年にジョージ・W・ブッシュが大統領に就任すると、ドナルド・ラムズフェルド国防長官はマーシャルに軍事戦略と軍再編の見直しを任せたのである。 マーシャルは中国の地対地ミサイルなどが東アジアの基地や空母にとって脅威になるとして、ミサイル防衛の必要性を強調する。軍需産業としては願ってもない理屈だ。中国脅威論も「マーシャル発」と言えるだろう。 これに対し、現時点で中国は脅威でないと米太平洋軍の司令官だったデニス・ブレア提督は反論した。アメリカ軍を攻撃するためには長距離ミサイルだけでなく、偵察通信システムを開発し、OTH(超水平線)目標システムも必要だと語っていた。状況によっては、中国の偵察通信システムを破壊してしまえば良いとも話している。 しかし、ブレア提督の批判を無視する形でブッシュ・ジュニア政権は中国脅威論を展開した。こうした宣伝は2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントン郡にある国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されるまで続いた。 アフガニスタンやイラクへの先制攻撃、占領という展開の中、中国の話は聞かなくなるが、消えたわけではなかった。2006年には具体的な形になって表れ、バラク・オバマ政権になっても流れに変化はない。 1970年代の初頭まで、アメリカには中国への侵攻計画があった。共産党体制を倒し、自分たちの支配下に置こうとしたのである。最初の計画は中国が建国される直前。天安門広場で共産党幹部を暗殺し、混乱の中、偽装帰順させていた軍隊に蜂起させ、一気に中国を奪還しようというのだが、これは途中で計画が露見して失敗する。 中国が共産党の体制になることが不可避になった1949年、極秘の破壊/テロ部隊OPCは拠点を上海から日本へ移動させ、1950年3月には国民党軍を使ってビルマ(現在のミャンマー)の一部を占領した。最近、ミャンマーとの関係をアメリカが修復したのも胡散臭い。 朝鮮戦争が勃発したのはこの年、1950年の6月。1951年4月にはCIA(この段階になると、OPCはCIAの内部に潜り込んでいる)と国民党軍が中国へ軍事侵攻を試みているが、失敗する。 朝鮮戦争が休戦になった翌年、1954年1月にジョン・フォスター・ダレス国務長官はベトナムでのゲリラ戦を準備するように提案し、その年の夏にはCIAのSMM(サイゴン軍事派遣団)が破壊活動を開始、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後を受けて大統領になったリンドン・ジョンソン大統領はベトナムへ本格的に軍事介入する。 その後、アメリカと中国は友好関係を結ぶが、その関係が今、崩れようとしている。第2次世界大戦が終わった直後から、アメリカとソ連を戦わせて双方を疲弊させ、漁夫の利を得ようという戦略があった。その戦略がまだ生きているのかもしれない。
2012.06.24
トルコの戦闘機を撃墜したのは「ブクM2」ではなく「パンチール1」だと訂正する報道があった。いずれもロシア製の兵器で、パンチールはミサイル、機銃、レーダーがセットになったシステム。シリアも2007年には入手しているようなので、今回、使われたとしても不思議ではない。
2012.06.24
トルコの戦闘機を撃墜したのは、数週間前にロシアからシリアへ提供された「ブクM2対空ミサイルシステム」だとする話が伝えられている。このシステムを調べるために領空を侵犯したのか、配備された事実を知らずに偵察飛行したのかは不明だ。 この情報が正しいとするならば、NATO/アメリカはロシアの動きをこれまで以上に警戒することになるだろう。ロシア側としては、シリアを攻撃しようとしているNATO/アメリカに対する警告と考えているかもしれない。
2012.06.23
トルコ軍の戦闘機、F-4を1機、シリア軍が撃墜した。シリア側の発表によると、2機のF-4が低空でシリア領内に侵入、そのうち1機を海岸線から約1キロメートルの地点で撃ち落としたという。トルコ側も撃墜された戦闘機が国境線を越えたかもしれないと認めている。 昨年春、シリア国内でFSA(シリア自由軍)がバシャール・アル・アサド体制の打倒を目指して武装蜂起しているが、その頃からトルコを含むNATOや湾岸の独裁産油国が反政府軍を支援している、要するにこの外部勢力が黒幕だとする情報がある。基本的な青写真は1991年にできていて、ジョージ・W・ブッシュ政権の時代から資金援助を開始、今ではプロパガンダのほか、武器の提供や兵士の訓練を実施している。 蜂起の当初、訓練はトルコの米空軍インシルリク基地で行われた。最近、コソボの軍事施設でゲリラ戦の訓練を本格化させるとも言われ、その一方、リビアでNATOと手を組んだアル・カイダ系の武装集団がシリアへ移動しているとも伝えられている。 反政府軍を使うだけでなく、自国の特殊部隊を潜入させている国もあるようだ。イスラエルの報道ではカタールとイギリスが、ウィキリークスが公表した民間情報会社のストラトフォーの電子メールでは、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコといった国の名前が挙がっている。 インシルリク基地に関する情報を早い段階で紹介していた人物がFBIの翻訳官だったシベル・エドモンズ。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントン郡にある国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、この出来事を口実にしてジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンやイラクを先制攻撃しているが、この件に関し、FBIは事前に情報を持っていたと内部告発している。 CIAはアル・カイダがアメリカで破壊工作を計画しているという情報をFBIに伝えていなかったことが知られている(調査ジャーナリストのジェームズ・バムフォードらが報告)が、FBIも独自にテロ情報を入手していたというのだ。つまり、エドモンズによると2001年4月にFBIはイラン情報機関の協力者からオサマ・ビン・ラディンの攻撃計画を知らされていたという。この内部告発をした結果、彼女はFBIを解雇されることになった。アメリカに対するテロ計画があると警告していたイラクやイランをアメリカ支配層は敵視、イラクの場合は軍事侵攻で体制を転覆させたわけだが、これとエドモンズに対する処遇には似た背景を感じる。 ところで、今回の撃墜事件ではトルコ政府がまごついている印象がある。トルコ軍の現場が暴走したのか、撃墜が予想外だったのか、といったところではないだろうか。本格的な軍事侵攻を睨み、トルコ(NATO)軍がシリア軍の防空能力を調べていた可能性もある。撃墜が予想外だったとするならば、軍事作戦は練り直しだろう。 ローマ教皇庁の通信社やドイツの有力紙など、ここにきて反政府軍が住民を虐殺しているとする「西側」の報告があり、アメリカやサウジアラビアなどによる軍事支援や破壊/テロ活動の実態も隠しきれなくなっている。それにつれ、日本のマスコミはシリアの扱いが小さくなっているようだ。今後、ロシアがシリア軍の防空能力を高めるようなことがあると、ますます軍事侵攻/制圧が難しくなるわけで、NATOや湾岸産油国は焦っているのかもしれない。
2012.06.23
ACLU(アメリカ市民自由連合)は6月20日、UNHRC(国連人権理事会)で声明文を読み上げ、無人機による殺害行為の実態を明らかにして説明責任を果たすよう、アメリカ政府に求めたようだ。 当初、アメリカ軍やCIAは偵察を目的として無人機を導入したが、すぐにミサイルを搭載、人を殺し始める。特定のターゲットを暗殺、周辺にいた人びとを巻き添えにするだけでなく、全く無関係の場所を攻撃して住居を破壊、非武装の住民を殺してきた。こうしたアメリカの軍や情報機関、あるいは傭兵会社による破壊と殺害に国連は鈍感だが、その犠牲になっている地域で反米感情を高めるのは当然だろう。 こうした無人機はアメリカ軍が侵攻した戦闘地域だけでなく、アメリカ国内、例えばメキシコとの国境近くで広く使われ始めている。それだけでなく、国内の政治活動を監視するためにも利用されつつあるようで、2007年には反戦集会の上空にトンボのような飛行物体が目撃されている。この種の機械をCIAは1970年代から開発しているようだが、勿論、国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)も開発している。 最近では小型化が進み、鳥や虫を精巧に模した超小型無人機も開発されつつある。カエデの種に似せた機械も開発中だと言われている。蚊のようなものができれば、屋外で秘密裏に監視するだけでなく、部屋の中などプライベートな領域に侵入することも可能になるだろう。毒物や病原体を仕込み、ターゲットを病気にさせたり殺害することもできる。
2012.06.22
国連シリア監視団(UNSMIS)を率いているロベルト・ムード准将はアメリカ政府のためにスパイ活動をしているとする話をレバノンのアッディヤール紙が報道、話題になっている。監視団に参加しているヨルダン人メンバーが匿名で語ったのだという。 おそらく、日本では少なからぬ人が「まさか」と思うだろうが、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビアなど、先制攻撃する前にアメリカの支配層は嘘をついていたことを忘れてはならない。 アメリカ軍から攻撃される前、イラクは国連の大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)から査察を受けていたが、1999年1月にニューヨーク・タイムズ紙は、査察チームがアメリカのスパイとして機能している事実を伝えた。アメリカの情報機関は、予定されていた攻撃の準備をしていたようにも見える。 本ブログでは何度も書いていることだが、1991年の段階、つまりジョージ・H・W・ブッシュ政権の時代に、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを掃除するとしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の証言である。 それから10年後、息子のジョージ・W・ブッシュが大統領に就任するのだが、その年の9月11日、ニューヨークの世界貿易センターの南北タワーに航空機が突入、ペンタゴンも攻撃されるという出来事があった。 このショッキングな出来事を利用してネオコンのプランは始動、この段階でアフガニスタンに続く攻撃予定国のリストにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていた。 2007年になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ政府がサウジアラビアなどの国々と手を組み、シリアやイランを攻撃する秘密工作を始めたと警告している。 そして現在のシリア。ホウラ地区で住民が政府軍に虐殺されたという報道があふれ出た後、ロシア人ジャーナリストのマラト・ムシンは反政府軍が親政府派の住民を殺したと報告した。具体的な内容で、信憑性があるように感じられたが、「ロシア人だから」と思った人は少なくないだろう。が、続いてローマ教皇庁の通信社であるフィデス通信やドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も同じ内容の話を伝えている。 それだけでなく、イギリスのテレビ局、チャンネル4のアレックス・トンプソンによると、反政府軍は彼の取材チームをトラップにかけ、政府軍から銃撃されるように仕向けたという体験を語っている。ホムスで取材していたそのチームを反政府軍の兵士は交戦地帯へと導き、危うく射殺されところだったという。 アメリカ/NATOは湾岸の産油国を経由するなどして対戦車ミサイルなどの武器を提供しているが、その一方でアメリカのヒラリー・クリントン国務長官は嘘を承知でロシアがシリアへ戦闘用のヘリコプターを提供しようとしていると非難した。実際は提供済みのヘリコプターを修理したのだが、その輸送をイギリスのデイビッド・キャメロン政権が妨害している。シリアへの本格的な軍事侵攻を考えているなら、対空ミサイルや対艦ミサイルをシリア政府が手にすることを嫌っているかもしれない。
2012.06.21
イランの核施設を主要なターゲットにしていると見られるコンピュータ・ウィルス、スタックスネットとフレームはサイバー戦争の「兵器」だとも見られているが、そのサイバー兵器を開発したのはアメリカとイスラエルの情報機関や軍だと伝えられている。アメリカやイスラエルの政府がサイバー戦争/テロを仕掛けているということだ。 5月に発見されたフレームは、侵入したコンピュータ・システムに関する情報を入手して外部に伝える不正プログラムで、スタックスネットはフレームのプラグインだったともいう。つまり、両プログラムは同時期に、少なくとも情報を交換しながら開発されたということになる。 イランでは核開発に関連したシステムがスタックスネットに汚染されていたが、発見が遅れて大事故になれば、周辺に住む人々が深刻な放射能汚染で苦しむ可能性があったが、イラクではアメリカ軍が使用した劣化ウラン弾によると見られる放射能障害が報告されているわけで、アメリカの支配層にとって放射能汚染は大した問題だと思っていないのだろう。 ちなみに、イラクで最も放射能障害の犠牲者が多く報告されているファルージャでは濃縮ウランが発見されているという。濃縮ウランが使用された疑いのあるケースはこれ以外にもあり、ウルスター大学のクリストファー・バスビー教授によると、2006年7月にイスラエル軍がレバノンに軍事侵攻した後にレバノンやガザでも濃縮ウランが検出され、アフガニスタンやバルカン半島でも使用された可能性があるようだ。 アメリカとイスラエルの情報機関は1980年代にも共同でコンピュータ・システム用のトラップ・ドアを開発した前歴がある。1970年代にINSLAWという民間企業が追跡システム、PROMISを開発したのだが、これに目をつけたのがロナルド・レーガン政権になってからの司法省。 先ず司法省はINSLAWを倒産に追い込み、横領、そのシステムにトラップ・ドアを仕込んで世界各国の政府や国際機関、あるいは金融機関などに販売している。この工作はアメリカとイスラエルの情報機関が同時進行の形で実行している。 ちなみに、駐米日本大使館に一等書記官として勤務していた原田明夫(後の検事総長)も興味を持ち、敷田稔(後の名古屋高検検事長)がINSLAWと実際に接触している。原田は法務省刑事局長時代、「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を進めたことでも有名だ。 アメリカ側では、南カリフォルニアの保養地パーム・スプリングスに近い場所にあるカバゾン先住民保留地で作業は行われた。そこではPROMISにトラップ・ドアを組み込むだけでなく、暗視ゴーグルや武器の製造、さらにニカラグアの反革命ゲリラを支援する工作の拠点にも使われていた。保留地は警察やFBIが勝手に踏み込めない治外法権的な性格のある地区のため、秘密工作の拠点には最適の場所である。 この「製品」はハドロン社なるCIAのダミー会社を通じて売られていた。ロナルド・レーガンがカリフォルニア知事時代から親しくしていたアール・ブライアンが「経営」していた会社だ。 イスラエルで工作の中心になったのはLAKAM(科学情報連絡局)のラファエル・エイタン局長。PROMISはアール・ブライアンとロバート・マクファーレンからアメリカで受け取っていたのだ。マクファーレンは1983年から85年まで国家安全保障担当大統領補佐官を務めている。 イスラエルの「製品」を売っていたのは、イギリスのミラー・グループを統括していたロバート・マクスウェルが設立したペルガモン・ブラッシーズ国際防衛出版社。マクスウェルは一九六〇年以来、イスラエルの協力者だと言われている。この会社にはジョン・タワー元米上院議員も働いていた。 つまり、マクファーレンもタワーもイスラエルの協力者だった。後にタワーは国防長官就任を拒否されるが、その一因はここにある。(PROMISの問題は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)
2012.06.21
現在、日本人、特に東電福島第一原発に近い地域に住んでいた子どもたちは放射性物質によって殺されつつある。日本政府や東京電力が情報を隠すだけでなく、事実に反する話を流した結果、その犠牲者は大幅に増えたに違いない。現在の危機的な状況も隠されている。 ニューヨーク科学アカデミーから出版された『チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する結果』によると、チェルノブイリ原発事故による影響で死んだ人や胎児は98万人に達し、住民の健康は勿論、そうした影響は人だけでなく動植物全体に及んでいるという。 この報告書を執筆したのはロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフ氏など3名で、英語の論文や報告だけでなく、現地で使われているロシア語などの文献にもあたり、実際に患者を治療している医師などにもインタビューしている。報告書の編集を担当したジャネット・シェルマンがこの辺の事情を説明している。 福島第一原発の事故では、当初、風が太平洋側へ吹いていたため、放射性物質の相当量が海へ流れていった、あるいは工事上のミスから4号機の使用済み核燃料プールが水で満たされ続けたという奇跡的な幸運に恵まれた。ただ、アーニー・ガンダーセン氏の推測によると、放出された放射性物質はチェルノブイリ原発事故の2倍から5倍に達するようであり、生態系への影響は大きいだろう。勿論、海の汚染も深刻で、来年あたりにはカリフォルニア沖の海も汚染が問題になりそうだ。 つまり、日本だけでなく太平洋周辺ではこれから深刻な被害が出てくることが予想されるわけだが、そうした事実を日本の核政策を推進してきた「エリート」たちは隠そうとしている。隠すための法律も整備されようとしている。 政治家にしろ、官僚にしろ、大企業の経営者にしろ、学者にしろ、そしてマスコミ社員にしろ、エリートだとされている人びとは庶民の命を何とも思っていない。そうした本性が露見するのを防ぐために秘密を彼らは好み、スパイ防止法だとか、情報保全法を持ち出してくる。自分たちの悪事がばれるのを防ぐことが目的だ。プロのスパイにとって、そんな法律は意味がない。支配システムは秘密を守ろうとするだけではなく、庶民の個人情報を集め、権力に服わない人びとを探し出し、監視、弾圧しようとしている。 すでに街頭には監視カメラが溢れ、音声による通話、電子メール、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録は収集されている。さらに、学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、クレジット・カードのデータなどあらゆる個人データが蓄積、そして分析され始めている。少なくともアメリカではそれが現実であり、日本もその後を追っている。 例えば、支配システムにとって注意すべき人物だと判断された場合、その人物の弱点を探し出そうとするだろう。権力、カネ、異性など人によって様々だ。そうした欲望を使ってターゲットに接近する役割を負った人たちもいる。情報をとるために「情を通じ」て接近したつもりの記者が、実は情報機関のターゲットになっていたということもあるということだ。「秘密保全法案」が成立すれば、ターゲットを懲役5年以下または10年以下で処罰できる。 秘密という点では、日本の政治経済システムを根本から変える可能性があるTPP(環太平洋連携協定)も大きな問題がある。経済システムだけでなく、人びとの健康、自然環境などを巨大企業の都合で決めることを可能にする協定だが、その中身は秘密にされている。知っているのは交渉している人物と、巨大企業の経営者だけだ。
2012.06.20
ある社会や国家における権力者、あるいは主権者が誰なのかを知りたければ、誰が情報を握っているかを調べればわかる。表面的にどう見えようと、社会や国家の運営、政治のあり方などに関する情報を庶民とか民衆と呼ばれる人びとが知らないシステムを「民主主義的」と呼ぶことはできない。 日本の場合、そうした情報は基本的に官僚と一部の政治家、そして財界の有力者が握っている。アメリカの支配者へは報告されているようだが、庶民や民衆は知らされない。政治家や官僚が議事録を作成せず、法廷に提出する「証拠」を検察官が恣意的に選べ、場合によっては捏造するようなことさえ行われている。 つまり庶民/民衆は主権者でなく、日本を民主主義国家と呼ぶことはできないのだが、これでも満足できず、「スパイ防止法」を制定するべきだという人たちもいる。ちなみに親しくしていた元特務機関員によると、どのような法律があろうと情報をとるのがスパイであり、スパイ防止法で影響を受けるのは一般人だと喝破していた。 アメリカを「自由と民主主義の国」だと日本では表現されているが、そのアメリカでは主権者である国民が社会や国家に関する情報を知る権利があるということで、1966年に「情報自由法(FOIA)」が制定されている。この法律を無力化するため、アメリカの支配層は努力を惜しまなかった。 日本とは違い、裁判の記録も公開されているアメリカだが、「軍事機密」という強力なベールが存在することも事実。軍と何らかの関係を結んだ企業は情報を隠蔽することができるのである。「国家安全保障」という言い方があるが、その大半は権力犯罪者の安全保障にすぎない。 そうした現実の一端を明らかにしたのがウィキリークスだ。2010年4月には、戦闘行為と関係のない十数名の人々をアメリカ軍の戦闘ヘリが殺害している映像を公開している。交信内容から「間違い」で殺したように言う人もいるが、映像を見ればアメリカ兵が状況を理解したうえで面白半分に殺しているとしか見えない。これを「誤射ビデオ」と表現するのは間違いだ。犠牲者の中にはロイター通信の取材クルーも含まれていた。 その後、ウィキリークスは外交文書などを公開しているが、2010年5月に情報をこのグループに漏らしたとしてブラドリー・マニング特技兵がアメリカ陸軍のCID(犯罪捜査部)に逮捕された。 アメリカ軍の犯罪的な行為を明らかにした英雄で「ノーベル平和賞」を与えるべきだとする意見がある一方、アメリカの支配層は厳罰に処すつもりのようだ。収監中、拷問されているとする話も伝えられている。支配層としては、新たな内部告発を断念させる必要があるわけで、マニングに対する処遇は厳しいものになるわけだ。 欧米の支配層は、内部告発を支援したウィキリークスも破壊しようとしている。その看板的な存在、ジュリアン・アッサンジも攻撃のターゲットになっている。 2010年にはスウェーデン警察の求めに応じる形でアッサンジに対し、「婦女暴行」の容疑で逮捕令状が出された。暴力的な行為ではなく、コンドームの装着に関するトラブルが問題になっているのだが、アッサンジは事実無根としている。 この事件で「被害者」とされる女性のひとり、アンナ・アーディンはウプサラ大学の研究学生で、メディアに関する会議での講演をアッサンジに依頼したスタッフのひとり。その際にアッサンジはアーディンのアパートに泊まり、セックスをしている。アッサンジとセックスした別の女性、ソフィア・ウィレンはアッサンジのグルーピーだったという。 アーディンは男に対する「法的な復讐」を主張するフェミニストだと言われ、「二股」を掛けることは許さない。また、彼女はキューバの反体制派を支援する活動家で、アメリカ政府から資金援助を受けている反カストロ/反コミュニストの団体と結びつき、CIA系の定期刊行物で、フィデル・カストロを罵倒してきた。 キューバの反政府派リーダーは彼女から政党を組織する方法を伝授され、彼女のグループから経済的な支援も受けたとも伝えられている。国家転覆活動を理由にしてキューバを追放された過去も彼女にはあるようだ。 彼女のいとこ、マチアス・アーディンはスウェーデン軍の中佐で、アフガニスタンに派遣されたスウェーデン軍の副官を務めていたという。アッサンジが「ハニー・トラップ」に引っ掛かったのかどうかは不明だが、不可解な面があることは確かだ。 ともかく、2010年8月に警察が動き始め、「臨時検事」が逮捕令状を出し、スウェーデンのタブロイド紙が警察のリーク情報に基づいて「事件」を報道するのだが、容疑が曖昧だということで、その翌日には主任検事のエバ・フィンが令状を取り消してしまう。が、この決定を検事局長だったマリアンヌ・ナイが翻し、捜査再開を決め、捜査資料が全てメディアにリークされている。 実は、ジョージ・W・ブッシュ政権で次席補佐官を務めたカール・ローブをスウェーデンのフレデリック・レインフェルト首相はコンサルタントとして雇っていた。ローブは検察を「政争の道具」に使おうとしてきた人物で、ブッシュ政権では意に添わない連邦検察官10名近くを解雇している。最終的には93名の検察官を解雇するつもりだったという。 そして今年5月、イギリスの最高裁はアッサンジ側から出ていたスウェーデンへの身柄引き渡し取り消しの訴えを却下した。マニングと同じように、アメリカ政府はアッサンジを厳罰に処したいのだろう。そのアメリカでは現在、内部告発を封印しようとする動きが活発化、下院ではCISPAという法律が可決され、ジョー・リーバーマン上院議員などは戦争の障害になる情報を漏らす人物を厳しく罰するための法律を作るべきだとしている。
2012.06.19
昨年9月、アメリカを中心とするNATO軍は「飛行禁止区域を確保する」と称してリビアを先制攻撃、都市を破壊、市民を殺した上、実権を握っていたムアンマル・アル・カダフィを惨殺し、その体制を倒すことに成功した。その際、地上ではアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)と手を組み、「カダフィ後」のリビアではアル・カイダの影響力が増している。しかも武装グループ同士の戦闘が続き、国内は混乱状態だ。 アメリカにはエジプトを除くアフリカ大陸を担当する統合軍、AFRICOM(アメリカ・アフリカ軍)が存在する。2006年にドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)が創設に向けて委員会を設置、2007年に創設を正式発表、2008年に活動を公式に始めたのだが、本部はドイツのシュトゥットガルト。つまり、アフリカ諸国から総スカンを食っていたということだ。 アフリカ大陸は資源が豊かで、イギリスやフランスなどヨーロッパ諸国は植民地にしてきた歴史がある。アフリカ側から見ればAFRICOMは侵略/支配を目的とした暴力装置にしか見えないわけで、嫌われるのは当然だ。 その一方、アフリカ諸国はBRICS、特に中国との関係を強めていた。アフリカをひとつの経済圏にして、統一通貨を導入しようと考えていたカダフィもAFRICOMに拒絶反応を示していた。 そのリビアを軍事力で制圧したアメリカはAFRICOMの部隊をアフリカへ入れる意向で、来年には3000名以上の兵士を派遣すると言われている。リビアはその拠点になりそうだ。早い話、リビアを足場にして、アフリカでの略奪を強化するということ。アル・カイダはその手先になっている。 アメリカではリビア攻撃の暗号名を「オデュッセイア・ドーン」、NATOでは「ユニファイド・プロテクター」と名づけていた。アメリカ軍の作戦名は意味深である。 言うまでもなく「オデュッセイア」はホメロスの作と言われる長編叙事詩で、トロイア戦争に勝利したオデュッセウスが帰国するまでの漂白と冒険をテーマにした物語。その「夜明け」だというわけだ。「リビアの次」、つまりアフリカ諸国、シリア、イランでの軍事作戦を見据えている。 本ブログでは何度も書いてきたが、現代版「オデュッセイア」が計画されたのは、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、遅くとも1991年。ネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除するとしていたという。2006年に実施された演習「ビジラント・シールド07」ではロシア、中国、朝鮮も攻撃のターゲットだった。 また、2001年9月11日の直後にジョージ・W・ブッシュ政権が攻撃予定国のリストを作成、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていたともクラーク元司令官は語っている。つまり、アメリカの「オデュッセイア」は予定通り、進められている。
2012.06.18
アメリカ軍はシリアを攻撃する準備を終えたと伝えられている。これまでアメリカ、イギリス、トルコ、サウジアラビア、カタールなどの国々がシリアへの軍事介入を主張してきたが、状況は切迫しているようだ。 時間が経つにつれ、NATO、湾岸産油国、反政府軍が発信する偽情報が発覚、化けの皮がはがれてきた。こうしたことを考えると、本格的な軍事介入を開始するために残された時間は長くないかもしれない。 アメリカの場合、ジョン・マケイン上院議員やジョー・リーバーマン上院議員のようなネオコン(親イスラエル派)、あるいは戦争ビジネスを背景に持つヒラリー・クリントン国務長官が好戦的な発言を繰り返してきた。軍やバラク・オバマ大統領は消極的な発言をしてきたが、ここにきて軍事侵攻する決断をしたようなのだ。そのためにも、邪魔な国連の停戦監視団は撤退させる必要があるわけで、反政府軍は追い出しにかかっているようである。 勿論、こうした勢力がシリアへの軍事介入を主張している理由を「民主化運動の弾圧」に求めることはできない。サウジアラビアなど湾岸の産油国は中東/北アフリカで最も反民主的な地域であり、そうした国々と手を組んだ「民主化」などありえない。アメリカにしろイギリスにしろ、監視システムが強化され、ファシズム化が推進されている。(こうした話は本ブログでも触れているので、ここでは割愛する。) そもそも、2007年の時点で、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、ジョージ・W・ブッシュ政権がサウジアラビアなどの国々と手を組み、シリアやイランを攻撃する秘密工作を始めたと警告している。 また、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、ニューヨークの世界貿易センターやペンタゴンが攻撃された2001年9月11日の直後、ジョージ・W・ブッシュ政権は攻撃予定国をリストアップ、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていた。現在、このリストに従って事態は進行しているようだ。 こうした攻撃計画はジョージ・W・ブッシュの父親、ジョージ・H・W・ブッシュが大統領だった時代に素案ができていた可能性が高い。立案の中心にはネオコンがいた。クラーク元司令官によると、1991年の段階でネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除するとしていた。 それだけでなく、2006年に実施された演習「ビジラント・シールド07」ではロシア、中国、朝鮮も攻撃のターゲットになっているようなので、ネオコンは「世界大戦」を始めるつもりだったとしか思えない。1980年代にはジョン・K・シングローブ少将など情報機関/軍の好戦派は「世界大戦」を口にしていたわけで、軽視すべきでないだろう。 こうしたネオコンの作戦に日本も引きずり込まれようとしている。日本人の中には「戦争ごっこ」のつもりではしゃいでいる御仁もいるようだが、実際に開戦となれば、第2次世界大戦とは比較にならない破壊と殺戮が展開され、原発を乱立させている日本は放射能まみれになると覚悟する必要がある。(もっとも、福島第一原発4号機のプールが地震で倒壊したなら、その前に日本は終わりだが。) ヒズボラの指導者ハサン・ナスラッラーが推測しているように、ネオコン、イギリス、湾岸産油国などはシリア、イラン、リビア、そしてイラクなどイスラム世界を細分化して支配しようと考えているかもしれない。 こうした動きの中、ロシアはシリアにある自国の海軍基地を守るために特殊部隊を派遣すると言われている。NATO/アメリカ軍はリビアと同様、空爆でシリア軍を殲滅するつもりかもしれないが、化学兵器を確保するために地上軍を投入することも考えられ、状況によってはアメリカ軍とロシア軍が衝突する展開も否定できない。
2012.06.17
関西電力の大飯原発3、4号機を再稼働させると野田佳彦内閣は決めたという。この政権を操っている日本やアメリカの支配層は、この決定を突破口にして原発を動かそうとしているのだろう。 元スイス駐在大使の村田光平氏と東電福島第一原発の危機的な状況を訴えている松村昭雄氏が言うように、日本政府は福島第一原発で高まる危険に取り組もうとしているとは到底、見受けられない。 昨年3月11日の地震で福島第一原発の1号機から4号機は完全に破壊されたが、それでもまだ50基(福島第一原発の5、6号機と「もんじゅ」を含む)が存在している。尋常の精神構造なら、この地震国にこれだけの原発を建設することはできないだろうが、日本人の多数派は原発の乱立に賛成、あるいは黙認してきた。勿論、アメリカ支配層も原発の乱立を容認してきたと言える。 言うまでもなく、原発は一種の「汚い爆弾」。日本を破壊しようと考える国、組織、人物がいるなら、原発を破壊すれば放射能で日本は汚染され、滅亡してしまう。日本の支配層もそんな程度のことは理解していただろう。つまり、日本の支配層に思考力があるとするならば、日本が攻撃されるとは思っていないということになる。「防衛力」の増強は防衛以外の目的があるということだ。そうでなければ、原発が攻撃され、日本が滅んでもかまわないと思っているのか? ただ、攻撃を受けないとしても、大地震には必ず襲われる。福島第一原発の事故、あるいはそれ以上の事故をアメリカの支配層は予測していたはずで、そうした事故が起これば日本は滅ぶ可能性があることを見通していたに違いない。アメリカ支配層にとって日本の滅亡は眼中にないのだろう。いや、望んでいるのかもしれない。日本の支配層はアメリカに逆らえず、「安全神話」の世界へ逃げ込んだのか、アメリカの支配層と同様、日本が滅亡してもかまわないと思っているのか? 単なる使い捨ての手駒にすぎない日本がどうなろうと、彼らにとっては大した問題ではないと考えることもできる。かつてCIAの手先として働いていたイラクのサダム・フセインやリビアのムアンマル・アル・カダフィを抹殺したことでもわかるように、用済みになれば処分するだけの話だ。 歴史を振り返ると、近代日本はイギリスとアメリカの支配/影響下にあった。幕末から1910年代頃まではイギリス、関東大震災から1932年頃まではアメリカということ。この当時、アメリカの巨大資本が日本の電力産業に多額の投資をしていたことは有名な話。イギリスとアメリカ、この2カ国の存在を抜きに日本のアジア侵略は語れない。 薩摩藩や長州藩がイギリスと手を組んだ頃、イギリスは中国(清)を侵略するためにアヘン戦争を仕掛けて、支配下におこうとしていた。侵略の最中、麻薬取引で大儲けしていた会社のひとつがジャーディン・マセソン商会。この会社が日本へ送り込んだエージェントがかの有名なトーマス・グラバーだ。 それから時を経て1933年。日本の支配層を取り巻く状況が大きく変わった。この年、ウォール街の思惑に反し、フランクリン・ルーズベルトが大統領に就任したのである。 JPモルガンをはじめとする金融界はルーズベルトを排除するためにクーデターを計画するものの、失敗。さすがにルーズベルト大統領もウォール街と全面衝突することはできなかったが、政権はルーズベルトが急死する12年の間、続くことになる。この変化に日本の支配層は対応できなかった。(この辺の事情は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) ドイツ降伏が目前に迫っていた1945年4月12日、ルーズベルト大統領は執務中に急死、副大統領だったハリー・トルーマンがトコロテン式に大統領となった。トルーマンはミズリー州カンザスシティーを拠点とする政界の黒幕、トム・ペンダーガストの影響下にあった人物。1941年から45年にかけての副大統領はニューディール派のヘンリー・ウォーレスだったが、1944年の大統領選挙でルーズベルトはトルーマンを押しつけられていた。 ルーズベルトの死後、アメリカ支配層はファシストの逃走を助けるだけでなく協力関係に入り、日本の「右旋回」にもつながる。1953年にドワイト・アイゼンハワーが大統領に就任すると、情報/破壊工作を指揮していたアレン・ダレスの兄でウォール街の弁護士だったジョン・フォスター・ダレスが国務長官に就任、アレン・ダレスはCIAの長官になる。 戦後の日米関係を築き上げたのは、このダレスと昭和天皇だったことを関西学院大学の豊下楢彦教授は明らかにしている。ダグラス・マッカーサーと吉田茂のラインはダレスと天皇のラインに対抗はできなかったということだ。 大統領に就任したアイゼンハワーは1953年12月に国連総会で「原子力の平和利用」を宣言、日本も核の世界へ入っていく。こうした動きの中で中心的な役割を果たした人物が中曽根康弘。1950年にスイスで開かれたMRA(道徳再武装運動)の世界大会へ出席してから出世街道を駆け上がっていく。MRAはCIAと関係の深い「疑似主教団体」だ。 1953年にはヘンリー・キッシンジャーが責任者を務めていたCIAとつながりのある「ハーバード国際セミナー」に中曽根は参加、1954年に原子力予算を国会に提出している。ここから日本の核政策はスタート、日本人は「汚い爆弾」を抱えながら生活することになった。そして今、原発によって地獄の門が開けられようとしている。
2012.06.16
ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、そしてリビアへアメリカ軍は先制攻撃を仕掛けたが、いずれの場合も事前に偽情報を流し、軍事介入しないと大変なことになると宣伝していた。そして現在、シリアの体制転覆を目指し、配下のメディアを使ってプロパガンダを展開、事実を覆い隠そうとしている。 日本の場合、事実を直視しないという点で「右」と「左」、あるいは「体制」と「反体制」の間に大差はない。カネに目が眩むのか、イデオロギーに囚われているのか、教義に取り憑かれているのか、恐怖で「思考停止」しているのか、ともかく妄想の世界、内輪の論理にドップリ浸かっている人が多い。 アメリカは「自由と民主主義の国」であり、アメリカの支配層に従えば安泰だと思っている日本人もそうした類の人びとであり、原子力発電の「安全神話」を信奉している人びとも同類だ。 昨年3月11日に東北地方の太平洋側で巨大地震が発生、東電の福島第一原発は「過酷事故」を起こした。地震の揺れで配管などに大きなダメージがあった可能性が高く、41分後に押し寄せた津波で原子炉は全ての電源を失い、燃料棒を冷却できなくなったと考えられている。 冷却できなくなれば、約半日でメルトダウンが起こることは専門家の常識だそうで、だからこそ東電は「原子力災害対策特別措置法第10条」に基づいて「特定事象」が発生したと経済産業大臣らに通報したのだろう。早い話、逃げる準備。 事故は隠すという電力業界の性癖を考えるならば、この段階で原子炉は制御不能の状態になっていることが予測でき、実際、そう考えた人は少なくなかっただろう。が、当事者である政府や東電がそうしたことを発表したとは言えない。 枝野幸男官房長官(当時)は「炉心が溶けているのは大前提で対応していた」と主張しているが、呆れるばかり。炉心が溶融しているにもかかわらず、住民を速やかに避難させなかったとするならば、犯罪である。 事故当日の夜から原子力安全・保安院が、12日の未明からは文科省が「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」で放射性物質の環境への拡散を予測、14日にはアメリカ軍へ試算結果を伝えていた。が、地元住民の避難に役立てることはなく、勿論、日本国民に知らされることもなかった。 こうした政府や東電、そしてマスコミの姿勢は今でも基本的に変化していない。福島第一原発では現在でも危機的な状況が続いているのだが、まるで全て解決、何も心配することがないかのような雰囲気が日本列島を覆っている。が、実態は違う。 当初、原子力安全・保安院は福島第一原発が放出した放射性物質はチェルノブイリ原発の約10%、ある調査では約42%とされているが、今回のケースでは冷却機能が失われて水が沸騰、放射性物質は水に止まらずに外部へ出たこと、また格納容器からの漏洩も考えると、2倍から5倍になるだろうと原子力技術者のアーニー・ガンダーセン氏は推測している。 そして現在。元国連職員の松村昭雄氏は概略、次のようにまとめている。1) 1、2、3号機では完璧に炉心が溶融、日本の当局も認めているように、核燃料が圧力容器の底を抜けてメルトスルーしている可能性があり、意図せざる再臨界、あるいは水蒸気爆発が起こるかもしれない。2) 1号機と3号機から強烈な放射能が発生、近寄れない状態にあるため、事故が発生して以来、いまだに補強工事は行なわれていないので、強い余震に襲われたなら倒壊する恐れがある。3) 瓦礫や破片の間を縫うようにして設置した冷却水の管は防護されていないため、核燃料の過熱させる冷却システムの停止、さらなる放射性物質の放出を伴う核燃料の損傷、新たな水素爆発、ジルコニウム火災、使用済み核燃料プールにおける溶融に至る出来事が発生する可能性がある。4.建屋および骨格は重大な損傷を受けている4号機の使用済み核燃料プールが倒壊したり何らかの事情で水が抜けたなら、強烈な放射能の照射で原発敷地の全域が立ち入りできなくなり、チェルノブイリ原発の85倍というセシウム137が環境に出てしまう可能性がある。 松村氏の友人、ロバート・アルバレズ氏によると、チェルノブイリ原発の85倍の放出量になるという推定は少なく見積もってのことだが、それでも4号機が倒壊すれば、セシウム137が引き鉄となって日本の国土の全域は避難ゾーンと化し、その強烈な放射能は東アジアや北米に及び、放射性降下物は今後、数百年にわたって滞留し続けることになるという。 こんな状況の中、原発を再稼働するとしているのが日本政府であり、電力業界であり、大企業であり、マスコミである。正気ではない。
2012.06.15
6月12日、ブルッキングス研究所で記者会見が開かれた。イスラエルのシモン・ペレス大統領の隣、イスラエル国旗の前に座ったアメリカのヒラリー・クリントン国務長官はこのとき、ロシアがシリア政府に戦闘ヘリを供給、戦闘をエスカレートさせようとしていると非難している。が、この話は正しくなかった。以前からシリア政府はヘリコプターを保有、新たに提供されたわけではなかったのである。 イギリス、トルコ、サウジアラビア、カタールといった国々の政府とタッグを組んだアメリカ政府は、すでに資金援助だけでなく、シリア国外に反政府軍の拠点を作り、軍事訓練を実施、対戦車ミサイルなどの武器を提供していると伝えら、住民を虐殺しているのは反政府軍だという報告も相次いでいる。ロシアのヘリコプター供給を問題にするなら、自分たちの軍事介入はどうなんだとする声も聞こえてきたのだが、ヘリコプター話自体が正しくなかったわけだ。 その一方、シリア国内では反政府軍が「自家製爆弾」を使い始めているとも報道されているのだが、これは予想されていたこと。アメリカやイギリスがロシア製の対戦車ミサイルなどをサウジアラビアなどを経由して反政府軍に提供する一方、トルコがIED(路肩爆弾)の使い方をシリアの反政府軍に訓練していると伝えられていたからだ。 いずれにしろ、シリアでの戦闘を激化させ、多くの人びとが殺される原因を作っているのはアメリカ、イギリス、トルコなどのNATO諸国や、サウジアラビア、カタールなどの湾岸産油国だということである。
2012.06.15
アメリカ支配層は第2次世界大戦後の中国を制圧する計画を立て、内戦では蒋介石の国民党を支援していたが、毛沢東らの率いる共産党軍に敗北してしまう。この状況を打開するため、さまざまな秘密工作を開始、その中心にはOPCという極秘機関が存在した。 この機関は本拠地を1949年に上海から日本へ移している。国鉄を舞台とした「怪事件」が起こった年だ。こうした流れの中、1950年6月に朝鮮戦争が勃発する。 1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問、東アジアの軍事的な緊張は緩和されるのだが、1970年代の半ばからネオコンが軍や情報機関の好戦派と手を組み、再び緊張が高まる。1983年の秋には米ソ開戦の危機が訪れた。 1998年になると、アメリカ軍の内部では、朝鮮を先制攻撃して体制を転覆させ、アメリカの傀儡政権を樹立させるという作戦OPLAN 5027-98を作成、翌1999年には朝鮮の現体制が崩壊した場合を想定したCONPLAN 5029も作り上げている。この年、黄海で朝鮮と韓国の艦船が交戦した。 2002年にも黄海で朝鮮と韓国は交戦、その翌年にジョージ・W・ブッシュ政権は空母カール・ビンソンを中心とする艦隊を朝鮮半島に派遣、6機のF-117を韓国に移動させ、グアムにはB-1爆撃機とB-52爆撃機が配備させた。こうした動きの中心にはネオコンや戦争ビジネスの代理人たちがいたのだが、こうした動きに当時の韓国政府やアメリカの旧保守派がブレーキをかける。このほか、朝鮮への核攻撃を想定したCONPLAN 8022も存在している。 ネオコンをはじめとする好戦派に都合の良い風が吹き始めるのは2008年。朝鮮半島の緊張緩和を目指していた盧武鉉大統領がスキャンダルで失脚、軍需産業と結びついている李明博が大統領に就任したのだ。 朝鮮と韓国との間には領海問題が存在するのだが、2009年10月に朝鮮は韓国の「領海侵犯」を非難、11月には韓国海軍の艦艇と朝鮮の警備艇が交戦している。2010年3月には米韓が合同軍事演習「フォール・イーグル」を実施している最中、韓国軍の哨戒艦が問題の海域で沈没した。 当初は原因不明としていたのだが、5月になって韓国政府は朝鮮の犯行だと言い始める。それに対し、CIAの元高官で駐韓大使も務めたドナルド・グレッグはこの朝鮮犯行説に疑問を投げかけている。そして11月には問題の海域で軍事演習「ホグク(護国)」を実施、アメリカの第31MEU(海兵隊遠征隊)や第7空軍が参加したと言われている。そして朝鮮軍の大延坪島砲撃につながる。12月には自由貿易協定(KORUS FTA)の締結が合意された。 そして今月、日米韓は合同軍事演習を実施するという。「度重なる挑発行為を続ける北朝鮮を牽制する狙い」などという脳天気な表現をするマスコミは信用しない方が良い。
2012.06.14
シリアのホウラ地区で住民が政府軍に虐殺されたという話は間違っている、あるいは嘘だという報告が続いた。犠牲になった住民は親政府派のアラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)やキリスト教徒で、虐殺しているのは反政府軍(自由シリア軍/FSA)に参加しているスンニ派のサラフィ主義者や外国人傭兵の可能性が高いというのだ。 だいたい、住民虐殺、「人道的」軍事介入、体制転覆というシナリオを最も嫌っているのがバシャール・アル・アサド政権であり、最も望んでいるのがアメリカやイギリスなどのNATOや湾岸産油国。 当初、シリア軍による砲撃で住民は殺されたと言われたが、砲撃が行われたのは虐殺が始まる前のことで、砲撃説はすぐに否定される。次に親政府派の武装集団が喉を切り裂いて殺したという宣伝が始まるのだが、今ではそうした残虐な殺し方を否定する情報が「西側」からも出てきた。現段階では誰が殺したのか不明とされている。 アサドを批判する立場の人たちは、このように主張を変えているのだが、その一方で反政府軍にとって都合の悪い情報も伝えられるようになった。例えば、ロシア人ジャーナリストのマラト・ムシンは反政府軍が親政府派の住民を殺したと報告、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙、あるいはローマ教皇庁の通信社であるフィデス通信も同じ内容の話を伝えている。 また、イギリスのテレビ局、チャンネル4のアレックス・トンプソンによると、彼の取材チームは反政府軍の罠にはまり、危うく政府軍から射殺されるところだったという。ホムスで取材していたそのチームを反政府軍の兵士は交戦地帯へと導き、政府軍に銃撃させるように仕向けたというのだ。 シリアの「人権団体」や「反政府活動家」の主張を根拠にして、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官、イギリスのウィリアム・ヘイグ外相、国連の潘基文事務総長はバシャール・アル・アサド政権を激しく批判している(嘘は承知だろうが)のだが、こうした批判の根拠を揺るがす複数の情報が流れていると言える。 アメリカ支配層の中でシリアやイランを軍事侵攻するべきだと主張しているのはネオコン(親イスラエル派)。このグループの中心的な存在であるポール・ウォルフォウィッツは国防次官を務めていた1991年当時、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官に対して旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除すると話していたという。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターに立っていた南北タワーに航空機が激突、ペンタゴンも攻撃されるという事件があったが、それから間もなくしてジョージ・W・ブッシュ政権ではイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃する計画をたてたともクラーク元司令官は語っている。 そして、2006年に実施された演習「ビジラント・シールド07」ではイランのほか、ロシア、中国、朝鮮も攻撃のターゲットにしている。
2012.06.14
シリアの反政府軍がホウラ地区の住民を虐殺したとドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙、あるいはローマ教皇庁の通信社であるフィデス通信も伝えるようになり、「政府軍による民主化運動の弾圧」というプロパガンダは効力を失いつつある。 核問題、TPP、消費税、尖閣諸島の問題でも明らかなように、読者や視聴者を完全になめきって「プロパガンダ機関」に徹している日本のマスコミは、中東情勢に関しても日本政府の意向に添った宣伝をまだ続けているが、シリアの体制転覆を目指すNATO(イギリス、アメリカ、トルコなど)や湾岸産油国(サウジアラビアやカタールなど)は危機感を強め、早く決着をつけたいと思っているだろう。 これまでシリアのバシャール・アル・アサド政権を攻撃してきたイギリスのインデペンデント紙も、サウジアラビアやカタールがトルコ経由で武器を反政府軍へ供給していると報道しているが、こうした話は以前から流れていて、サウジアラビアやカタールの背後にはアメリカ政府が存在していると指摘されている。 ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2007年頃には、イランやシリアを攻撃する工作が始まっていると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュや欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官が警告している。 クラーク元司令官によると、1991年の段階でネオコン(親イスラエル派)の中心的な人物、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除すると言明していたという。 本ブログでは何度も書いたことだが、軍事訓練は昨年の春から米空軍インシルリク基地などで実施してきたとトルコでは伝えられていた。教官としてアメリカは情報機関員と特殊部隊員を、イギリスやフランスは特殊部隊員を派遣しているとされている。またレバノンやヨルダンの北部にも反政府軍のFSA(自由シリア軍)は拠点を持っているという。 最近になってアメリカ政府は反政府軍の武力を強化するため、ロシア製の対戦車ミサイル、9K115-2メティスMや9M133コーネットを含む武器をサウジアラビアやカタール経由で供給していると報道されている。戦車を破壊することで政府軍側の戦意を喪失させようという思惑もあるようだ。そのほか、NATOの一員でもあるトルコは、IED(路肩爆弾)の使い方をシリアの反政府軍に訓練しているという。 4月にはシリアの反政府軍へ武器を運んでいた貨物船、シエラ・レオネ船籍のルトファラー IIが拿捕されたとレバノンのメディアが報道し、レバノン海軍はこの事実を認めている。船に積まれた3つのコンテナには、重機関銃、砲弾、ロケット弾、ロケット・ランチャーなどの武器弾薬150トンが入っていた。リビアのベンガジでコンテナを積み込み、レバノン北西部の港トリポリへ向かっていたという。リビアのベンガジにはサウジアラビアやカタールが管理している倉庫が5棟あり、こうした国々が黒幕だという可能性はある。 このケースでは、ルトファラー IIが武器を密輸しようとしていることをアメリカ/NATO軍、イスラエル軍、あるいはUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)も知っていた可能性が高いという。これが国連の実態であり、潘基文国連事務総長がシリアの体制転覆に前向きなことも根は一緒だろう。 リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒した際、NATO軍とアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)が手を組んだのだが、そのLIFGは次のターゲットをシリアと定め、その反政府軍を支援している。資金を提供したり兵士を訓練するだけでなく、武器や兵士を送り込んだという。NATO軍機が大量の武器をトルコへ運び込んだとも伝えられている。 シリアの体制転覆を目論む国々の政府派、特殊部隊をシリア国内に潜入しているとも言われている。イスラエルの報道ではカタールとイギリスが、ウィキリークスが公表した民間情報会社のストラトフォーの電子メールでは、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコといった国の名前が挙がっている。アメリカ政府はロシアがヘリコプターを提供、などと言えるような立場にない。
2012.06.13
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、米英を中心とするNATOは情報戦を展開してきたが、数日中にシリアのテレビ番組を乗っ取ろうと計画しているという話が流れている。これまで「西側」や湾岸産油国のメディアは偽情報を織り交ぜながら、反政府軍を支援する「報道」を続けてきたが、そこから一歩踏み込み、シリア国民を直接、騙そうという計画だという。 言わば、「ハリウッド」を直接的な武器として使おうとしているわけだが、国防権限法(NDAA)の2013年版では、戦争を遂行するために国防総省や国務省によるプロパガンダ、つまり国民を騙すことを認めているようで、社会の「マトリックス」化が進んでいるとも言えるだろう。 もっとも、昔から支配層はメディアを庶民操作の道具と見なしていた。技術の進歩で「マトリックス」化が進んでいるわけで、最近のプロパガンダが特別というわけではない。 例えば、かの有名なウォルター・リップマンは、ジャーナリズムを権力者から庶民への情報伝達手段だと考えていた。第1次世界大戦の最中には戦意高揚に協力、1917年にアメリカ政府が設置したCPI(広報委員会)に参加している。 ウォーターゲート事件で有名になったワシントン・ポスト紙のオーナー(当時)、キャサリン・グラハムは1988年に次のように語っている。 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」 明らかにグラハムは支配層の立場から語っている。彼女にとっての「民主主義」とは、庶民にとっての「独裁」にほかならない。支配システムを維持するためには、市民を無知な状態にしておく必要があるということだろう。 キャサリン・グラハムの夫、フィリップ・グラハムは第2次世界大戦の後、情報操作プロジェクトに参加している。いわゆる「モッキンバード」だ。 フィリップのほか、大戦中からアメリカの破壊活動を指揮、CIAの長官にも就任することになるアレン・ダレス、破壊/テロ活動を目的として極秘裏に設置されたOPCの局長でダレスの側近だったフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズがプロジェクトの中心メンバーだった。 この4名のうち、ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士であり、グラハムの義父にあたるユージン・メイヤーは金融界の大物で、世界銀行の初代総裁。ヘルムズはメディアで働いた経験もあるが、祖父のゲイツ・ホワイト・マクガラーは国際的な投資家。いずれも金融界と緊密な関係にあったことがわかるが、この4名に限らず、アメリカの情報機関を動かしていた人物は、金融界と深く結びついている。 金融の世界に君臨するロスチャイルド家が情報を武器にしていたことは有名な話で、この4名が金融界とつながっていることは不思議でないのだが、それだけでは止まらない。ダレス、ウィズナー、ヘルムズは破壊/テロ工作を指揮したグループの中枢メンバーであり、金融界は破壊/テロ活動と結びついていると言える。 一般に無視されている事実だが、1933年にフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任すると、JPモルガンを中心とするアメリカの金融界はクーデターを計画している。この計画は海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー少将が強く反対し、議会で証言したことで失敗に終わった。 クーデターの目的はルーズベルトを排除し、ファシズム体制を樹立することにあったのだが、このときにクーデター派は新聞を使えば国民を騙すのは簡単だとしていた。アメリカが「反ファシスト」から「反コミュニスト(親ファシスト)」へ転換するのは、ルーズベルトが1945年4月、執務中に急死してからである。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、いずれのケースでもアメリカ政府は軍事侵攻を正当化するため、偽情報を流していた。キーワードは「人権」だった。「人権」を口実にして、人権を無視した破壊と殺戮を展開してきたのである。 ただ、シリアの場合はアメリカ政府よりもイギリス政府が軍事介入に積極的である。バラク・オバマ政権が直接的な軍事介入に消極的な姿勢を見せている一方、イギリスのウィリアム・ヘイグ外相は積極的だ。このヘイグ外相と緊密な関係にあるのが「人権団体」だというシリア人権観測所。アメリカで軍事介入を必死に叫んでいるのはジョン・マケインのようなネオコン(親イスラエル派)である。
2012.06.12
シリアのホウラ地区で住民を虐殺したのは反政府軍だとドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も報じている。 同紙によると、まず、政府軍を襲撃、90分ほど戦闘が続くのだが、その間、反政府軍はアラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)やシーア派の住民を殺害していったという。こうした話は、ローマ教皇庁の通信社、フィデス通信が伝えた東方カトリック教会の修道院長による報告と合致している。 スンニ派のサラフィ主義者や反政府軍に参加している外国人傭兵が虐殺を実行したと修道院長は語っているのだが、ホウラ地区に住む住民の90%はスンニ派で、犠牲になった人びとは少数派だった。フランクフルター・アルゲマイネ紙によると、スンニ派でも国会議員の家族は政府派だとして殺されている。別のケースではキリスト教徒も犠牲になっているようだ。 リビアの体制を転覆させた場合もそうだったが、アメリカやイギリスを中心とする「西側」のメディア、あるいはカタールのアル・ジャジーラが偽情報を流し、好戦的な雰囲気を作ってきた。が、シリアではロシアや中国の抵抗で体制転覆が実現していない。「リビア方式」から「コソボ方式」へ移行すると言われ始めた頃から残虐な行為が目立ち始め、潘基文国連事務総長もアメリカのヒラリー・クリントン国務長官に同調している。 ところが、残虐な行為が目立ち始めると、アメリカやイギリスと距離のありそうなところから反政府軍が住民を虐殺しているという話が伝わるようになった。つまり、バチカンとドイツのメディア。イギリスで比較的、公正な立場で報道していたチャンネル4の取材チームは反政府軍の罠によって、政府軍に射殺されそうになったのだが、この企みは失敗に終わり、自分たちの本性を見せることになった。 こうした展開の中、国連はどのように対応するつもりだろうか?潘事務総長に続き、シリア政府を非難し始めたコフィ・アナン前事務総長としても、事実を受け入れるのか、米英や湾岸産油国の傀儡として動くのか、難しいところだ。
2012.06.10
NATOや湾岸の独裁産油国の支援を受けたシリアの反政府軍だが、いまだに体制転覆に成功していない。アメリカのヒラリー・クリントン国務長官だけでなく、最近は潘基文国連事務総長もシリア政府を声高に批判、「西側」のメディアも必死に反アサド宣伝を繰り返している。が、このところプロパガンダは裏目に出ている。 先日、イギリス外務省と緊密な関係にある「シリア人権観測所」など反政府派は、シリア西部の都市、ハマから20キロメートルほど離れた場所にあるアル・クベイルで数十名が殺されたと発表、潘事務局長はシリア軍が停戦監視団の行動を妨害、発砲していると非難していたのだが、現地に入った監視団やメディアの人間は、虐殺を確認することができなかったようだ。死体を政府軍が運び去ったと反政府軍は主張しているようだが、これまでも嘘、偽情報を流していただけに、説得力はない。 数ある「西側」の中で、政府軍と反政府軍、双方を取材しているのがイギリスのテレビ局、チャンネル4。ホムスで取材していたそのチームを反政府軍の兵士は交戦地帯へと導き、政府軍に銃撃させるように仕向けたことが発覚した。反政府軍側のプロパガンダに協力的でないチャンネル4を処分したいという気持ちもあったかもしれない。 ともかく、政府軍がジャーナリストを射殺したとなると、バシャール・アル・アサド政権にとっては厳しいことになっただろう。あのクリントン長官の叫び声が聞こえてくるようだ。が、チームは何とか脱出に成功、反政府軍としては逆の目に出てしまった。 シリアを訪れたギリシャ正教のフィリップ修道院長も報告しているように、アラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)の住民が犠牲になっているようで、虐殺の実行者はスンニ派のサラフィ主義者や反政府軍に参加している外国人傭兵の可能性が高い。 アメリカのメディアはジョージ・W・ブッシュ政権の戦争に協力、一般庶民からも信頼されなくなった。リビアやシリアでのプロパガンダでは「西側」、特にイギリスのメディアが醜態をさらしている。カタールのアル・ジャジーラは、カタール政府の政策に反対しない限り「報道の自由」はあると言われていたが、リビアやシリアの体制転覆作戦にはカタール政府も中心的な役割を果たしているわけで、今回は単なるプロパガンダ機関。言うまでもなく、日本のマスコミは核問題以外でも支配層の御用をつとめている。
2012.06.09
野田佳彦首相は6月8日、関西電力の大飯原発3、4号機を再起動すべきだと官邸で開かれた記者会見で表明した。昨年3月の地震で破壊され、大量の放射性物質を環境中に放出している東京電力の福島第一原発など存在していないかのような発表だ。 言うまでもなく、福島第一原発の事故は人びとからさまざまのものを奪った。生活、仕事、文化、伝統、自然。今後のことを考えると、人びとの命を奪いつつあるとも言える。 原発とは本質的にそうしたものであり、そうしたものを犠牲にするという決意がなければ原発を再稼働させることはできない。大量にたまった放射性廃棄物の管理だけでも人間の手に余るわけだが、さらに原発を動かすとは正気の沙汰ではない。 こうした現実を隠すため、日本の「エリート」たちは情報を公開しようとしない。マスコミも情報の隠蔽に協力してきた。そうした「エリート集団」に属する東京電力が事故を公表したということは、その時点で原発の冷却ができない状態になっていたことを示している。半日もすればメルトダウンが起こることを予測、早く逃げ出したかったのだろう。報告は一種の「アリバイ工作」だ。 福島第一原発から放出された放射性物質の量も明確でない。ある外国の調査によると、放出したセシウム137はチェルノブイリ原発の約42%に達したとしている。また、原子力技術者で内部告発したことで業界を追放されたアーニー・ガンダーセンの予想では、チェルノブイリ原発事故の2~5倍に達する。 しかし、これは現段階の話。今後、大きな余震で4号機の使用済み燃料貯蔵プールが倒壊すれば、チェルノブイリ原発の事故で環境に出た量の約85倍が放出される可能性があるのだ。あと1年半ほどで比較的高い濃度の放射性物質に汚染された水がアメリカの西海岸に到達すると予測されているが、4号機が倒壊すればアメリカにも深刻な汚染をもたらすと考えねばならない。 こうした話も新たな原発事故が起こらないという前提でのこと。日本は地震国であり、地震が活発な時代に入ったとも見られているわけで、原発を動かし続ければ福島第一原発レベルの事故がまた起こっても不思議ではなく、「日本全滅」ではすまない。 それでも原発を再稼働させ、核ビジネスを維持しようとするのはなぜなのか? 勿論、電力会社を中心に築かれた利権の仕組みがあり、この仕組みには大手の製造業や商社、銀行、政治家、官僚、学者、マスコミ社員などが組み込まれている。カネ儲けを考えると原発を止めるわけにはいかない、そのようにこの集団は考えているだろう。 核兵器の開発問題も無視できない。日本では戦争中、理化学研究所の仁科芳雄を中心とするグループや海軍と京都帝大のグループが核兵器の研究開発を進めていたが、1964年10月に中国が核実験に成功すると、佐藤栄作首相は核武装への道を模索し始め、日本原子力発電所の東海発電所を利用すれば、1年に100キログラム余りの高純度プルトニウムを作れると見積もっていた。 1980年代以降、日本の核兵器開発はアメリカの下で進められた可能性が高く、ジャーナリストのジョセフ・トレントによると、昨年3月の段階で、日本が保有する兵器レベルのプルトニウムは70トンに達するという。核武装を目指し、着々と準備を進めているように見える。 こうした原子力利権や核兵器の問題だけでなく、アメリカの好戦派が描く戦略も何らかの形で「原発再稼働」に影響している可能性がある。アメリカのネオコン(親イスラエル派)は1991年の段階で、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを軍事的に制圧することを考え、「DPG(国防計画指針)」という文書を作成、PNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)の「米国防の再構築」につながり、ジョージ・W・ブッシュ政権が実行した。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、ブッシュ政権は9/11の直後にイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃する計画を始動させ、2006年に実施された演習「ビジラント・シールド07」ではロシア、中国、朝鮮も攻撃のターゲットになっているという。中東/北アフリカや東アジアで戦争を始めるつもりのようで、核兵器の使用も排除されていない。 そうした事態になれば日本が中東から石油を手に入れることが困難になるだろう。原発で発電しなければ・・・と考える前に、日本にある原発が攻撃されて日本どころか世界は破滅しかねない。ま、戦争になれば50発以上の核兵器が日本に落とされても仕方がないと考えているのかもしれないが。ということは、発電のことなど考えていない?
2012.06.08
シリアで反政府軍に参加している戦闘員、あるいは傭兵が住民を虐殺しているという情報をキリスト教のネットワークも流し始めた。国連がシリアに対する軍事介入へ前のめりになっているのと対照的だ。 最近、シリアを訪れた東方カトリック教のフィリップ修道院長は、スンニ派のサラフィ主義者や外国から入ってきた戦闘員、傭兵が住民に対して残虐な行為を繰り返していると証言している。サラフィ主義者はムスリム同胞団と同様、サウジアラビアの支配層と密接な関係にある。 シリアで破壊活動を繰り返したり、住民に反政府軍の兵士になることを強要している外国人の出身国はリビア、レバノン、アフガニスタン、トルコなど。そのバックには勿論、湾岸の産油国が存在していると見られている。 ホウラでの虐殺ではアラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)が集中的に殺されていると言われているが、フィリップ修道院長もアラウィー派が犠牲になっているとしている。 「全ての人が真実を語るならば、シリアの平和は保たれる」と修道院長は語っている。つまり、国連事務総長や「西側」メディアは殺戮と破壊に加担しているということだ。
2012.06.08
シリア西部の都市、ハマから20キロメートルほど離れた場所にあるアル・クベイルで数十名が殺されたと「シリア人権観測所」が発表した。同じく反政府派の「シリア国民評議会」も虐殺があったと主張している。 シリアの反体制派が偽情報を流してきたことは隠しようのない事実なのだが、そんなことを気にせず、国連の潘基文事務総長はシリア政府を非難し、「西側」のメディアは政府側に責任があるとする論調で伝えている。「シリア人権観測所」がイギリス外相と緊密な関係にあると本ブログでも何度か書い通りだ。 潘事務総長は、シリア軍は国連の停戦監視団がアル・クベイルへ向かうのを阻止、その際に発砲しているとも語っているのだが、政府軍側は危険だから止めたのだとしている。「平和的な抵抗運動を政府軍が弾圧している」などという脳天気なことを伝えるメディアはもう存在しないだろうが、昨年春の段階で内戦(人によってはNATOや湾岸産油国による軍事介入としている)状態であり、自由に動くことができないのは仕方のないことである。 5月25日にはホウラ地区で多くの人が殺されているのだが、このときも「西側」メディアや国連は端からシリア政府を批判していた。最初は砲撃で殺されたという話が流れたのだが、死体の状況から否定されると親政府派のシャッビアが処刑したという話に変化していった。 ところが、殺された子どもの多くは親政府派の家族だという指摘が出てきた。政府を支持しているアラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)だというのである。 現地を取材したロシア人ジャーナリストのマラト・ムシンによると、虐殺したのは傭兵とFSA(自由シリア軍)で構成された総勢約700人の部隊で、ホウラの北東から侵入し、中央部や警察署を抑えてから親政府派の家族を殺し始めたとしている。 こうした指摘には国連も反論できず、調査を行うと言わざるをえなくなった。少なくとも現段階で政府軍にホウラでの虐殺の責任を押しつけることはできない。 アメリカのヒラリー・クリントン国務長官は相も変わらずシリアを自分たちに明け渡せと叫んでいる。アフガニスタンやイラクで100万人を超す人びとを殺害したとも推計されているが、その責任をどう考えているのだろうか。 言うまでもなく、殺害の切っ掛けは自分たちが撒き散らした嘘である。ビル・クリントン大統領は嘘でユーゴスラビアを先制攻撃、ジョージ・W・ブッシュ政権は嘘でアフガニスタンやイラクを先制攻撃、そして今、バラク・オバマ政権はリビアに続き、シリアやイランの体制を転覆させようとしている。 こうした嘘をついてきたアメリカ政府を信じる人間が多いとは思えない。大多数は「信じているふり」をしている人たちだろう。 前にも書いたことだが、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は2007年10月にはこんなことを話している:1991年の段階でネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除すると話していた。 この年、アメリカの国防総省では「唯一の超大国」として地位を守るために軍事力を使うとした「DPG(国防計画指針)」が作成された。その延長線上にネオコンのシンクタンク、PNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)が2000年に公表した「米国防の再構築」がある。 そして2001年9月11日、こうした計画を描いていた人々に取っては「幸運」なことに、ニューヨークの世界貿易センターにあった超高層ビル2棟に航空機が突入、さらにペンタゴンが攻撃されるという出来事が引き起こされた。この攻撃を口実に使い、ブッシュ・ジュニア政権はアフガニスタンやイラクに攻め込んだのである。 クラーク元司令官によると、ブッシュ政権は9/11の直後にイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃する計画を始動させている。2006年に実施された演習「ビジラント・シールド07」ではロシア、中国、朝鮮も攻撃のターゲットになっているという。ロシアや中国はNATOや湾岸産油国、そしてイスラエルの動きを自分たちの問題として考えているはずだ。
2012.06.07
そして1964年10月に中国が核実験に成功、翌月に内閣総理大臣となった佐藤栄作は核武装への道を模索し始めた。1965年に佐藤首相はリンドン・ジョンソン米大統領に対して核武装の意志を伝えたところ、思いとどまるように説得されたという。「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)」が設立されたのは、その2年後のことである。 NHKが2010年10月に放送した「“核”を求めた日本」によると、リチャード・ニクソンが大統領に就任した1969年、日本政府の内部で核武装を本格的に話し合い、西ドイツ政府と秘密協議をしている。日独両国はアメリカから自立し、核武装によって超大国への道を歩もうと日本側は主張したのだという。日本側のメンバーは外務省の鈴木孝国際資材部長(当時)、岡崎久彦分析課長(当時)、村田良平調査課長(当時)だった。 核武装に関する調査は内閣調査室の主幹だった志垣民郎を中心にして行われ、調査項目には核爆弾製造、核分裂性物質製造、ロケット技術開発、誘導装置開発などが含まれていた。技術的には容易に実現できるという結論に達している。日本原子力発電所の東海発電所でプルトニウムを生産することになる。志垣らの調査では、高純度のプルトニウムを1年に100キログラム余りは作れると見積もっていた。 また、1969年から71年まで海上自衛隊幕僚長を務めた内田一臣は毎日新聞の取材に対し、「日本の防衛のために核兵器がぜひ必要だと思って、それなりの研究も(個人的に)していた」と語ったという。 この時期、アメリカはベトナム戦争に苦しんでいた。ニクソン政権は中国に対する軍事侵攻をあきらめ、国交回復を図るのだが、交渉の中でヘンリー・キッシンジャーは周恩来に対し、アメリカと中国が友好関係を結ぶことに同意しないならば自分たちは日本に核武装を許すと脅しという。日本の核武装はアメリカ政府にとって交渉カードだったということだ。これは今も変わらないだろう。アメリカ支配層の内部抗争でも使われる可能性がある。 その後、ジミー・カーター政権(1977年から81年)は日本の核兵器開発にブレーキをかけたが、ロナルド・レーガンが大統領になると状況は一変する。何しろレーガンは「最終戦争」、つまり核戦争の後に救世主が再臨すると信じていた人物。当時、ホワイトハウスの周辺には「第3次世界大戦」という言葉が飛び交っていた。実際、1983年の秋には核戦争が勃発する寸前だった。 CIAの幹部に情報源を持つジャーナリスト、ジョセフ・トレントはアメリカで核兵器用のプルトニウムを量産してきたサバンナ・リバー・サイトにあるプルトニウム分離装置の役割を強調する。そこからアルゴンヌ国立研究所を経由してRETF(リサイクル機器試験施設)へプルトニウムは送られたという。 RETFはプルトニウムを分離/抽出するための特殊再処理工場。アメリカ政府が東海村のRETFに移転した技術の中に「機微な核技術」、例えば小型遠心抽出機などの軍事技術が含まれている事実を環境保護団体のグリーンピースは1994年に指摘している また、1971年から81年までSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の所長だったフランク・バーナビーは、イギリスのセラフィールドで生産され、日本へ輸送されたプルトニウムは核兵器レベルの高純度だと語っているようだ。この話が正確なら、イギリスはアメリカと同様、日本の核武装に協力していることになる。
2012.06.06
昨年3月11日、東北地方の太平洋岸は巨大な地震に襲われ、東電の福島第一原発は破壊され、大量の放射性物質を環境中に出し続けている。今後、大きな余震で4号機の使用済み燃料貯蔵プールが倒壊すれば、セシウム137で比較すると、チェルノブイリ原発の事故で環境に出た量の約85倍が放出されるとも言われている。その日本に兵器級のプルトニウムが70トン蓄積されているという調査報告が明らかにされたのは今年4月のことだった。これは日本語訳も出ている。 第2次世界大戦で敗れるまで、日本が核兵器の開発を進めていたことは広く知られている。理化学研究所の仁科芳雄を中心とする「ニ号研究」には東京帝大、大阪帝大、東北帝大の研究者が集まり、海軍は京都帝大と「F研究」を進めていた。つまり、こうした大学には核兵器の開発にタッチしていた研究者が1970年代までは現役で在籍していたのではないだろうか? 戦後の核に関する研究は1954年3月に始まる。前年12月にドワイト・アイゼンハワー米大統領の演説を受け、中曽根康弘らが2億3500万円という原子力予算案を国会に提出したのである。その前日、南太平洋のビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験で日本のマグロ漁船「第五福竜丸」の船員23名が被曝している。「原子力の平和利用」と核兵器が深く結びついていることを暗示する出来事だった。 この頃になるとアメリカが保有する核兵器の数は2000発を突破、57年になるとアメリカ軍の内部でソ連に対する先制核攻撃が議論されるようになる。当時からアメリカが核兵器を保有するのは「攻撃」のためであり、「抑止力」を目的としているわけではない。つまり、「核の傘」などは幻想に過ぎず、存在するのは「核の槍」である。 アメリカは核弾頭を持っているだけでなく、運搬手段でも圧倒的に優位だった。戦略爆撃機やICBM(大陸間弾道ミサイル)である。核攻撃のターゲット、ソ連は中距離ミサイルで対抗するしかない。そこで、キューバをアメリカとソ連は奪い合うことになり、ピッグス湾侵攻作戦やミサイル危機に発展した。 アメリカ軍やCIAの好戦派はアメリカ軍を使ってキューバに軍事侵攻したかったようだが、大統領に就任したばかりのジョン・F・ケネディや何も知らない国民を説得するための口実が必要。そこで考えられた極秘作戦が「ノースウッズ作戦」だ。「キューバ政府によるテロ」を演出し、最後はアメリカの旅客機を自爆させてキューバ軍に撃墜されたと宣伝、先制攻撃に持っていこうとしたのである。 が、これはケネディ大統領によって阻止されたようだ。ミサイル危機も新大統領は話し合いで解決してしまった。そして1963年6月にはアメリカン大学の卒業式で「平和の戦略」と名づけられた演説を行い、ソ連との平和共存を訴えた。ケネディ大統領が暗殺されたのは、その5カ月後である。(つづく)
2012.06.06
ドイツ政府がイスラエルの核攻撃能力を増強させている。核ミサイルを搭載できるドルフィン型潜水艦をドイツはイスラエルに対して次々と引き渡しているのだ。最初の潜水艦は1998年、次いで1999年、2000年、今年は3月と5月に1隻ずつ、そして来年にも引き渡しが予定されている。しかも、最初の2隻は無償提供だった。また、イスラエル政府はあと3隻を手にしたいのだという。全部で9隻ということになる。 イスラエルが世界有数の核兵器保有国だということは「公然の秘密」になっている。イスラエルの核施設で働いていたモルデカイ・バヌヌが1986年に示した核弾頭数は200発以上、イスラエル軍情報部の幹部だったアリ・ベンメナシェは1981年で300発以上の原爆を保有していたとした上で、水爆の実験にも成功していると主張している。また、アメリカのジミー・カーター元大統領は150発と推測している。 つまり、イランが核兵器の開発をするかもしれないというような次元の話ではない。しかも1973年10月に戦われた第4次中東戦争でイスラエルは核兵器の使用を閣議決定している。第1目標はエジプトとシリアの軍事司令部だったという。 戦争勃発から10日後、OPEC(石油輸出国機構)に加盟するペルシャ湾岸の6カ国が原油の公示価格を1バーレルあた3.01ドルから5.12ドルへ引き上げると発表しているのだが、この値上げを決めたのは巨大石油企業である。OPECとは石油資本のダミー団体というのが実態だ。何しろ、自分たちでカルテルを組めば「違法」ということになる。 オブザーバー紙によると、この値上げは1973年5月にスウェーデンで開かれた秘密会議で決まったとザキ・ヤマニ元サウジアラビア石油相が話している。そのとき、アメリカとイギリスの代表は400%の原油値上げを要求、そうした要求した中心人物はヘンリー・キッシンジャーだったと語っている。 ヤマニが言う秘密会議とは、5月11日から13日にかけてスウェーデンで開かれたビルダーバーグ・グループの会合を指している。今年も6月3日まで、アメリカのバージニア州チャンティリーにあるウェストフィールズ・マリオット・ワシントン・ダレス・ホテルで会合が開催され、共和党のミット・ロムニー候補はミッチ・ダニエルズ・インディアナ州知事を副大統領候補にすることで合意したという話も流れている。もっとも、情報が漏れてしまえばご破算になるということもあり、どうなるかは不明だが。 ところでイスラエルの核問題だが、第4次中東戦争の際にはソ連の情報機関が察知、アメリカ政府に警告し、自分たちは報復の準備を始めたという。その結果、アメリカ政府はイスラエルに核攻撃を止めさせるのだが、その際に大量の軍事物資をイスラエルへ渡しているようだ。当初、アメリカ政府はイスラエルの核攻撃を容認していた可能性もある。 そして現在、イスラエル政府、アメリカの親イスラエル派、イギリス政府などはシリアやイランに対する攻撃に執着している。イランの「核兵器開発」やシリアの「平和的抵抗運動の弾圧」といった話が怪しいことは本ブログで何度も書いてきた。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュやウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官などは、2007年の時点でシリアやイランに対する攻撃準備が始まっていると警告していた。 クラーク元司令官によると、1991年の段階でネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除すると語っていたという。このシナリオ通りに自体は進んでいると言えるだろう。 シリアやイランをイスラエルが攻撃した場合、イスラエルに対する反撃もありえる。陸上のミサイル基地は破壊される可能性があるが、潜水艦は生き残るチャンスが大きく、核ミサイルを発射するという展開もありえるだろう。何しろ、イスラエルは少なくとも一度核攻撃を決断した国なのだ。
2012.06.04
5月25日にシリアのホウラ地区で多くの人が殺された。当初、政府軍の砲撃によるという話が流れたが、死体の状況から否定され、次に親政府派の武装勢力、シャッビアが「処刑」したという話になった。 覆面を被らず、素顔で殺したのかと皮肉られただけでなく、犠牲になった子どもの多くは政府を支持しているアラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)だとする指摘もあり、国連も調査を行うと言わざるをえなくなった。つまり、現時点ではシリア政府を一方的に非難することはできないということだ。今、シリア政府を攻撃している人びとは根拠なしに叫んでいるだけということでもある。 にもかかわらず、「西側」、特にイギリスの「有力メディア」は虐殺の責任をシリア政府に押しつけようと必死だが、シリア政府を攻撃しているつもりで、自らが土壺にはまっている。 そうした「土壺報道」の一例と指摘されているのがBBCの報道。5月31日にBBCは5月26日に衛星から撮影された画像し、そこに写ったシリア軍は虐殺現場の周囲に配置されているから責任があるとしている。言うまでもなく、26日は事件が起こった翌日。大した意味のない写真だということである。 6月2日付けのオブザーバー紙も皮肉られている。同紙に登場した「シリア軍将校」、ジハド・ラスラン少佐は現場から300メートル離れた自宅で虐殺を目撃したとする話を載せている。親政府派の武装グループ数百名が住民を殺したというのだが、300メートルは近くない。例えば、サッカーではゴールからゴールまでの約3倍、東京ドームのホームからバックスクリーンまでの約2.4倍。高性能の双眼鏡で見ていたのだろうか?それでも、覆面をしていたなら誰なのかわからないだろうが。 現地を取材したロシア人ジャーナリストのマラト・ムシンによると、殺されたのは親政府派の住民。攻撃したのは傭兵とFSA(自由シリア軍)で構成された部隊で、アル・ラスタン、アクラバ、ファルラハを拠点とする部隊のほか、地元の反政府派やゴロツキが参加していたという。部隊は総勢約700名で、ホウラの北東から侵入し、中央部や警察署を抑えてから親政府派の家族を殺し始めたとしている。 殺しの手口は、イラクの西部、アンバール地方で殺戮を繰り返していたグループを示しているとする人もいる。シリアの内戦を激化させるため、イラクからそうした武装集団が移動している可能性もある。
2012.06.03
イランに対するサイバー攻撃はアメリカとイスラエルの仕業であり、バラク・オバマ米大統領は工作をテコ入れしたと伝えられている。問題のコンピュータ・ウィルスはStuxnet。2010年8月の段階で、感染したコンピュータの約60%がイランのものだった。 この工作がスタートしたのは2006年、つまりジョージ・W・ブッシュ政権の時代。アメリカの電子情報機関NSAとイスラエル軍の8200部隊が協力して工作を推進したようである。開発したウィルスのテストに使われた遠心分離器は、リビアのムアンマル・エル・カダフィが2003年に放棄した装置を使ったという。 2006年といえば、ブッシュ政権がサウジアラビアなどと手を組み、シリアやイランを攻撃する秘密工作を始めた頃であり、そうした動きを調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュやウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官が警告している。 クラーク元司令官は2007年3月にこんなことを語っている:ブッシュ政権が2001年9月11日の直後にイランを攻撃することを決め、さらにイラク、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃予定リストに載せた。 それだけでなく、2007年10月にはこんなことを明らかにしている:1991年の段階でネオコン(親イスラエル派)の中心的な人物、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はクラークに対し、旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを5年から10年の間に掃除すると話していたというのだ。この日程が遅れたのは、ビル・クリントンがジョージ・H・W・ブッシュの再選を阻止、大統領に就任したからだろう。結局、掃除は1991年から10年目の2001年に始まる。 ところで、アメリカやイスラエルの情報機関がコンピュータ・プログラムを武器にすることは珍しくない。両国が連動して動いたこともある。例えば、不特定多数のターゲットを追跡、分析するシステムPROMISのケース。日本の検察も興味を持ったシステムだと言うことは本ブログで何度も書いた通り。 開発当初の目的は「犯罪者の追跡」だったのだが、ターゲットは反体制派でもカネでもプルトニウムでもかまわない。アメリカやイスラエルの情報機関は各国政府や国際機関、あるいは巨大銀行に売り込んでいる。ただ問題は、そのプログラムの中にはトラップ・ドアが仕込まれていて、情報がアメリカやイスラエルへ垂れ流し状態になるということである。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)
2012.06.02
シリアの反政府軍は大規模な戦争を始める準備をしていると伝えられている。これまでロシアや中国の反対でNATO(アメリカ、イギリス、フランス、トルコが中心)は本格的な軍事介入に成功していないが、シリアの場合も、10年近い時間をかけて体制転覆の準備をしてきたわけで、簡単には引き下がれない。 アメリカの場合、シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒す工作を進めてきたのは親イスラエル派(ネオコン)や戦争ビジネスにつながる人びとで、イランの体制転覆にも熱心。ジョージ・W・ブッシュ政権を支えていた人たちということ。現在のバラク・オバマ政権ではヒラリー・クリントン国務長官が軍事介入に最も熱心なようだ。 政権全体が熱心だということになると、イギリスが一番手だろう。リビアにしてもシリアにしても、異様なほど軍事介入したがっている。北海油田の生産量がかなり落ちているようなので、経済状況は危機的。 過去を振り返ってみると、1970年代前半の石油価格暴騰で北海油田が採算に合うようになり、マーガレット・サッチャー政権で経済を持ち直すことができたわけで、その北海油田で稼げないとなると深刻な事態になる。何しろ、サッチャー政権は富裕層、大企業を儲けさせるため、イギリスの社会システムを破壊してしまった。 それはともかく、米英をはじめとするNATOはシリアの反政府軍にてこ入れをしてきた。最近ではロシア製の対戦車ミサイル、9K115-2メティスMや9M133コーネットを含む武器をアメリカ政府はサウジアラビアやカタール経由で供給、トルコはIED(路肩爆弾)の使い方をシリアの反政府軍に訓練しているともいう。軍事訓練は昨年の春から米空軍インシルリク基地などで実施してきたが、最近ではコソボの施設でゲリラ戦の訓練を本格化すると言われている。 こうした支援だけでなく、自国の特殊部隊を潜入させている国もあるようだ。イスラエルの報道ではカタールとイギリスが、ウィキリークスが公表した民間情報会社のストラトフォーの電子メールでは、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコといった国の名前が挙がっている。 当初、「西側」はホウラ地区の虐殺をシリア軍による砲撃によるものだとしていたが、大半は至近距離から射殺されたりナイフで殺されていることが判明している。 すると、反シリア軍派はシリア政府を支持しているシャッビアが殺したと言い始めた。実行犯を名指しているということは、覆面を被らず、素顔で殺していったということなのだろう。国連人権高等弁務官もシャッビアの犯行だという説を受け入れているようだ。 この虐殺には多くの疑問点があるが、そのひとつが犠牲者の出身家族。殺された多くの子どもは政府を支持しているアラウィー派(大統領を含め、党や軍の幹部に多い)だと言われているのである。 昨年の春、シリアで内戦が始まった直後からスナイパーが住民を射殺しているという話は出ていたが、いまだに正体は不明である。シリア政府側の人間だとする人もいるが、現地を取材したウェブスター・タープリーは反政府軍側だと断言している。 本ブログでは何度か書いたことだが、NATOには「秘密部隊」が存在していた、あるいはしている。1970年代に発覚、1990年にイタリア政府が公式に認めている。この組織は街角で爆弾を炸裂させるだけでなく、要人を暗殺していた疑いが濃厚である。フランスのシャルル・ド・ゴール大統領暗殺未遂、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領暗殺、イタリアのアルド・モロ元首相の誘拐殺人などでも噂になった。 また、アメリカにはSOA(現在はWHISCまたはWHINSEC)というテロリスト養成所がある。ラテン・アメリカの軍人を集め、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などの訓練を実施している。帰国後に「死の部隊」を編成して反対派を殺害ていくことも珍しくなかった。 要するに、NATOにしろアメリカにしろ、非武装の住民を殺すことくらい、何とも思っていない集団が存在している。 現在、コフィー・アナン元国連事務総長が主導している和平工作は風前の灯火である。最初から軍事介入を主張しているNATOや湾岸産油国などにしてみると好ましい展開なのだろうが、住民にとっては絶望的な状況だ。現在の事務総長、潘基文よりマシだとは言うものの、アナンも学生時代から背後にはフォード財団がついているようなので、残念ながら、期待しすぎることはできない。 6月3日までアメリカのバージニア州にあるウェストフィールズ・マリオット・ワシントン・ダレス・ホテルでビルダーバーグ・グループの会議が開かれるようだが、ここでシリア問題に関しても、何らかの話し合いが行われ、今後の行動が決まるかもしれない。
2012.06.01
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