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2005/05/16
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カテゴリ: 京極夏彦
ひとつを切り離し,九十九庵の一白翁となった百介。変わったのかなと思ったが,結局昔のままの百介だった。

京極夏彦の「後巷説百物語」

は,舞台を明治9~10年(年号推定は東京警視庁→内務省東京警視局の組織変更などによる)に移し,隠居して一白翁と称する百介が4人の若者(うち2人は因縁深い北林藩出身)にあやかしの話を語る形をとっている(「続」で出なかった「巷説」の「柳女」と「帷子辻」もうまくおさまっている)。

あやかしがらみの事件を解決して,不思議巡査と呼ばれるようになるのが,元同心見習の矢作剣之進。
しかし,彼は「妖怪遣い」ではない。百介の話を,今(明治)にあてはめてものごとをまとめていく(その点に関しては,百介に「又市の遣り方と同じ」と言わせているが)だけ。
しかも,百介は彼らに語る話から意図的に「仕掛け」の部分を欠落させている。

洋行帰りの倉田正馬と無骨な道場主渋谷惣兵衛は,とりあえずあやかしを否定する立場をとっている。

あやかしに惹かれつつ,百介の話の「仕掛け」に気づき,最後には自分から仕掛けることになるのが,元北林藩士の笹村与次郎。
彼は,「山男」の事件で北林藩の「怪異」が小右衛門によるものだと教えられ,「五位の光」では,又市による狂言仕掛けのすべてを聞いてなおかつそれを剣之進たちに語らない。
そして,最後の「風の神」では,百介の遠縁の娘小夜を使って青鷺と(意想外の)幽霊を現出させるのだ。
彼と小夜の存在がこの時代以降もあやかし遣いが続いていきそうな予感をさせるのだが,「小夜」については,本を読んでくださいな。

そして,百介は,若者たちに話を聞かせるものの,それによってものごとを治めるのは彼らに任せる。また,1回だけ又市に「仕掛け」を依頼したことを明かすものの,「見る」立場から「仕掛ける側」にまわることがなく,最後は「解き明かし」を聞くこともなかった。
最初に「昔のままの百介だった」と書いたのはこのことだ。

この5人(小夜を含む)がどうなっていくのか気になるところだが,百介がかかわらなかった事件(「五位の光」のあとの大きな仕事)についても,まだ語られていない。
後者については,やし太郎さんによると,現在連載中の「前巷説百物語」で明らかになりそうなので,楽しみだ。

巷説百物語についての記事は →こちら です。
続巷説百物語についての記事は →こちら です。

ところで, 京極堂シリーズ大好き!(http://plaza.rakuten.co.jp/thm/182223/g1005/) というテーマがありますので,よろしければご利用ください。

各話の舞台,登場人物とあやかしは,フリーページの 京極夏彦メモ(百物語シリーズ) に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
シリーズ最初にあるリンク用のインデックスは時系列に並べてあります。

京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ  読了本(日本)  (京極夏彦)からごらんください。





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Last updated  2007/01/13 10:57:44 PM
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