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天井にひらいた光の穴を見上げる。 何があるのかまぶしくて見えない。 やがて目が慣れ、何かが舞い落ちてくる。 ひろしだった。 さてさて、ひろしはしゃべれるのか、どうか? そもそも、[おはなし]での会話はすべて筆談だったことにしたってかまわない。 いやしかし、そいつは思いつかなかったな。 ふつう、そんなこと考えないものな。「」の中身は人の声(そうじゃないのもあるけど)と思いこんで書いている。 書くというけど、じっさいには指でボタンをあれこれ押している。
2010年01月30日
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「なぜ私が今からエレベーターに乗るのかわからない」「S山の上のほうにあるS調査室に行くつもりなんでしょう?」 エレベーターに乗っているうち、立ちながら眠気がする。ぼんやりとS犬のこと思っていたら、止まり、ひらいた。 エレベーターから降りる。 天井にひらいた大きな穴を見上げる。 そこに見えたものは、いったい何だろう? 飛行機かもしれず 誰かから顕微鏡で覗かれているのかもしれず S犬かもしれず パラシュートで調査員が落ちてくるのかもしれず 太陽かもしれず 映画のスクリーンかもしれず あなたかもしれず…
2010年01月28日
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「あれを調査するならS山に登らなくてはなりません」「山登りは苦手なんです。足元に気を取られて、見たい景色を見る余裕がない」「立ち止まればいい」「まさかね」「どうかしましたか?山登りは苦手なんでしょう?」「まさかエレベーターがひらいたところが屋上だったなんて、まさかそんなことはないでしょうね?」「屋上がどうかしましたか?」「まさかね」『人生のそれぞれの段階で自分が何を考え、どういう理由からその時々に目前に迫った問題を判断し、選択し、行動してきたか、後になるとわからないものだ。』(池澤夏樹:本の題名がわからない) その時々の私はかなりな程度でそれぞれ別人なので、なぜあのときあのように振るまったのかわからない。 それに、たった今私がなぜこのように振るまっているのかもわからない。 なぜここにいてパソコンに打ちこんでいるのかわからない。 わかるとかわからないとか、わからない。「わかる」も言葉だし「わからない」も言葉だ。「わかる」も文字だし「わからない」も文字だ。 意味を追わなければ「わからない」も「わかる」も線だ。 日常生活における興味はこの枝からあの枝へと移ってゆくのだが、おおきな変化としては映画や本をつづけて見たり読んだりできなくなって、そのかわりと言ってはなんだが、台所に立っていることがずいぶん増えた。
2010年01月27日
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心身の取り扱い方として、社会生活の世界の枠の端の辺りにひそんで、ときに人間生活の世界に入って必要な生活品を持ち帰るという方法もあるだろう。「そんな選択ができるのは、かなり恵まれた状況の人だけでしょう?」 だからそうした方法もあるということで、あらゆる個人は各自特定の状況を生きる(生きることさえ破壊されてるような悲惨な状況もつねにあるけれど…)わけで、他人を参考にするのはいいのだけれど、他人との比較はつまらない。別の自分との比較もつまらない。 別の自分を参考にするのはいいのだけれど、別の自分との比較はつまらない。「あなたの心身の取り扱い方として、世界の枠の端の辺りにあるだろうS島に来たのですか?」「たまたま調査員の募集を目にしたのです」「さて、あれを調査するなら海岸からあそこまで登らなくては」「S山ですね」
2010年01月25日
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「仮名がひろしという犬はS犬なの?」「S犬はS島にいるのですか?」「これ、ひろしの写真とちがいますよ」「S犬には見えないね」「いや、いいです。ひろしのことはいったん忘れてもらって、とりあえずひとりで調査します。そもそもS島へは調査員ひとりでやってきたのですから」「何の調査なの?」「たとえばあれです」 心身の取り扱い方として、人間社会をいったん端に追いやってから日常生活の旅へと出かける方法もあるだろう。
2010年01月25日
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「犬とふねに乗ってS島を調べよう」「犬の本名を知ってますか?」「知ってるはずなのに思い出せない」「いったい何をしてるんだ?」「S島の調査に向けての出発です」「ここがS島だよ」「海岸沿いをめぐって調べるのです」「犬が本名はひろしだとしゃべったのか?」「犬の本名が判明した未来を先取りしての出発です。後手に回りたくはありません」「では仮にS犬とみなせばいい」 S犬?そもそもこれは犬か?
2010年01月24日
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「犬とふねに乗ってS島を調べたいのですが」「犬の本名を知ってますか?」 パスワードは作られてゆく。 ひとつ単語を読むたび、その単語にまつわる過去の亡霊たち(過去に使ってきたその単語たち自身も含めて)が新たなパスワードを暗示する。 人間の声が苦手だ。 声は意味を担おうとして息苦しい。 意味の多い人生は憂鬱だ。 だけど、薄味の調味料ていどの意味は必要だろう。
2010年01月24日
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「楽天ブログラッキーくじ」(過去にそのような企画があったのでした…ときには今もやってるみたいです)に3日連続当たってしまった。 3円分のポイント獲得! くじに当たるというのは、パスワードを探り当てる作業とはまったく異なっているものだろうか? くじに連続して当たったときに不幸(3円分の不幸…)が起こりうるように、けっして解けそうにないパスワードを探り当ててしまったとき、そこには悲しみがあるだろうか? ふねを見つけたとき、いっしょにふねに乗る犬を見つけた。 なまえはひろしだと思うのだが、犬に聞くまではっきりしない。「どうすればひろしとともにふねに乗れるのだろう?」「犬の本名を当てたときでしょう」
2010年01月23日
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わたしの気づいていないわたしたちの心身の閉じられた扉をひらくため、あなたはわたしたちの忘れたわたしたちのパスワードを探り当てようとする。「パスワードを忘れてしまったんでしょう?」「どのパスワードのことかな?」「パスワードはパラシュート」「ちがうよ」「パラシュートで飛び降りたいんでしょう?」「ばかばかしい」「いや、そこがちょっとばかし倒錯してるところでして、飛行機に乗らないあなたにはパラシュートは不要だ。ということはですね、あなたは飛行機から飛び降りるため飛行機に乗りたい」「ちがうね」「なるほど、空でなくても海がありましたね」
2010年01月21日
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「おまえの言葉はさっぱりわからない」「それはあなたがパスワードを忘れたふりをしているうちにほんとうにパスワードを忘れてしまったからではないでしょうか?」『人間の言葉は、その最も根底的で根本的な次元においては、パスワードとして機能する』という文章におけるパスワードは「パスワード」かもしれない。「パスワード」とは何か? あなたの気づいていないあなたの心身の閉じられた扉をひらくため、わたしはあなたの忘れたあなたのパスワードを探り当てようとする。
2010年01月21日
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「エビを食べたので、私は密入者から調査員に変換されました」「何を言ってるんだ?」「この島には調査すべき何ものかが、何かあるはずです」「どうしてわかる?」「そうでなければ私がわざわざここにいる理由が説明できないでしょう?」「おまえが何を言ってるのか、さっぱりわからないよ」「それはあなたがパスワードを忘れたふりをしているからではないでしょうか?」『人間の言葉は、その最も根底的で根本的な次元においては、パスワードとして機能する』(否定的なもののもとへの滞留:スラヴォイ・ジジェク(著))より引用
2010年01月20日
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昨夜、エビ、食べました。 「これでいいでしょうか?」 「たかがエビ1匹で?」 「イヤなのに無理して食べたんですよ」「それで?」「これでもう、私は密入者ではありません」 「じゃあ、きみは何者なんだね?」 「調査員です」 「何を調査しに来たんだい?」 「この島には調査すべき何ものかが、何かあるはずなんです」 「どうしてわかる?」 「そうでなければ私がわざわざここにいる理由が説明できないでしょう?」
2010年01月19日
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「顕微鏡、覗いてみる?」「ン?えーッ!勝手に人の過去、覗かないで…いや、覗かせないでください!」「困ったね」「え?」「きみは密入者なんだね」「どうして顕微鏡に過去が写るんです?」「じつはこの実験装置、顕微鏡じゃないんだよ」「パラシュートで島に降りてくるの、録画してたんですか?」「エビを食べてもらいましょう」「エーっ!ダメです、嫌いなんです」「罰ゲームです」 これで明日の晩ごはんはエビがらみになりました。おそらく握りずし詰め合わせ。生エビがあれば、そのほうが写真うつりはいいかもしれない。
2010年01月17日
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実験室の隣室のパソコンの履歴を見る。「あ!勝手に見ないで!」「だって、べつに秘密はないって言ってたじゃないですか?」「これは秘密という次元のことじゃなく、なんというか…そう、人の過去を許可なく見ちゃいけない」「ちょっと調べていいですか?」「だめだってば!そんなことしたら実験データが乱れてしまう」「いったい何の実験なんです?」「顕微鏡、覗き見する?」
2010年01月17日
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「あまり無理せず生きるため、死体のふりして横たわるというのですか?」「本気にしないでください」 ひと休みして死体の出てくる話を読もう、と思ったのですが、なんだか目が疲れてて読む気がしない。しかし、読めはしなくても聞けはします。 実験室の隣室のパソコンでiTunesをひらく。 iTunesでiTunes StoreのPodcastに行って「太宰治」とか「夏目漱石」とか検索すると、けっこうな数の作品朗読が無料で聞けます。(注:ここから先の丁寧そうな説明は、その後いちぶ仕組みが変わったらしく、あまり役に立たない説明になってしまいました。すみません)「太宰治・芥川龍之介小品集(2)」で検索して出てきた画像をクリック(「購読する」をクリックするのではなく)します。 出てきた画面(写真↑)の下にいくつかの作品名が並んでいます。 そのなかの「羅生門」(日本朗読文学名作選(4)にも羅生門は入っててこちらも無料ですが、ぼくは「太宰治・芥川龍之介小品集(2)」のほうの羅生門の朗読のほうが好きです)を聞きました。 あなたも聞かれるなら画面下に並んだ作品の中から「芥川龍之介『羅生門』」をダブルクリックしてくださいね。iPodをお持ちでしたら「エピソードを入手する」をクリックしてiPodに入れることもできます。 くどくど説明してるのは、パソコンが苦手なぼくでもなんとかわかりそうな説明にしようとしていてくどいのです。よけいわかりにくくなってるかも…(追記:結局はわかりにくくなっているどころか、間違いになってしまいました…)(注:現在のところ、「太宰治・芥川龍之介小品集(2)」に「羅生門」は入っていません。べつのところに移動したのでしょう。 ネットを使ってていいの見つけて、こんなふうに便利だよ、というような紹介は期間限定(かなり賞味期限が長期のもあるでしょうけど)なんですね…) ところで「羅生門」ですが、後半、老婆が登場してからは、なんだか教育的な感じがして(ぼくとしては)つまらなく感じてしまうのですが、前半はすごい!(読んだことはあるはずですが、そのときの読後感は忘れた…) 前半の15分ほどを繰り返し聞いてしまいました。 いま、夏目漱石の「門」を聞きはじめたのですが、うーん、おもしろーい!追記:ぐじゅぐじゅ書いていますが、ようするに、 iTunesでiTunes StoreのPodcastに行って「夏目漱石」とか「太宰治」とか「芥川龍之介」とかで検索すると、けっこうな数の作品朗読が無料で聞けます。
2010年01月14日
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「S島では食べる心配はいりません」「どういうこと?」「これです」「食べ物が見つからなかったり食べる時間が惜しければ、これひとくちで数日は持ちます」「食べる時間を惜しんで、いったい何をするの?」 妙な表現ではあるのだけれど、日々の暮らしの中で、一定時間安心して死ぬ時間を持てれば、生きやすくなるだろう。(ただし安心して死ぬにはそれなりに健康でなくてはならない)「安心して死ぬ時間、って何?」「たとえば棺桶に入れられたつもりになって横たわる」「死体の立場になるとでも?」「死体も焼かれて消えたつもりになる」「何のために?」「あまり無理しないで生きるために」「ばかばかしい」「本気だよ」
2010年01月13日
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S実験のホントの目的を知るため、これまでのことをざっと一望して見るとしよう。「何かわかりましたか?」「S島には何か秘密がありそうだ」 実験室の隣の部屋からSさんがやってくる。「Sさんは人前では秘密のS実験をしないだろう」「そうなんですか、Sさん?」「べつに秘密なんてないですよ。この実験施設のおかげで島の人たちは食べる心配をしなくてすむのです」
2010年01月13日
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「この匂い、どういう実験なの?」 「食べてもいいですよ」(自分で好きなように作りながら食べてると、どこでやめたらいいのかわからなくなり、Sキログラムになるまで食べることにして、体重計に乗りつつ食べてます)「食物連鎖をめぐる実験です」「ほんとはそんな実験じゃないでしょう?」「ほんとうのことはなかなか言えませんよ」 隣の部屋からほんとの実験をする人が入ってくる。 実験のほんとうの目的を決めるにあたっては、これまでのことをざっと一望して見なくてはなるまい。
2010年01月12日
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「この匂い、どういう実験なの?」 「おなかすいてません?」 「食べれるの?」 「神の存在をめぐる実験なんです」 「『人間が出現する前にも世界はあったし、人間がいなくなっても世界はある、と考えることができる』ということが、神の存在証明ではなかろうか?」「なかなかカッコいいけど、たんなる屁理屈のようでもありますね」「ほんとはそんな実験じゃないんでしょう?」
2010年01月12日
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「実験室の隣の部屋には誰かいるの?」「あなた誰?どうやって入ってきたの?」「だって扉は開いてますよ」「この匂い、どういう実験なんですか?」「蝶を焼いてるわけではありません」「おなかすいてません?」「蝶でなくてもいいのですけど」「あいにくですけどカボチャはありません」
2010年01月11日
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なんだか妙な貼り紙がある。 S実験地区? するとこの匂いは実験によるもの?■実験室は寒いプレパラートに蝶を挟むその手つきの鮮やかなこと徹夜実験がつづく放心して染色液が散乱する眠ってはいけないので羽根を噛む天井に張りついた蝶を焼く天井の中心点に水分が集まり一滴の水滴となって試験管にしたたり落ちる濾過により不純物を取り除いたのちに残る再び不純物実験室の隣室にいるのは誰?
2010年01月10日
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島の階段を降りてゆきながら思うのだが、こんなことをしていていいのだろうか? けど、こんな質問の、何を楽しんでいるのか? こんなことしていてはいけません、と言われたなら、どうするつもりなのか? 階段を引きかえす? 人生をやりなおすだなんて言ったところで、いったい何ページ目からやりなおすつもりなのか? バス停からか?それとも空港からか?それとも結婚から? 結婚?私は結婚しているのだろうか? 私の家族構成は? 階段が終わった。「こんなことしてていいのか」のつづきは(忘れてなければ)食べながら考えるとしよう。 なんだか妙な建物だな。
2010年01月10日
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匂いに導かれて道を抜け曲がると下には匂いは下から立ち昇ってくる あの建物のなかのどこかからわからない食べ物の匂いがしているのだろう。匂いに導かれて降りてゆく
2010年01月10日
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S島を散歩する。 あれ?この風景はS島ではなさそう…まぼろしか? 目を閉じ頭を振って、まぼろしを消す。 今歩いている場所がS島なのは仮にほんとうとして、S島にていかに生きるか…なんだかいい匂いがする…どこにいてもおなかはすく。 カボチャの匂いに導かれて…いや、べつにカボチャがとくに好きなわけではない。これまでの話の都合で、このとき匂っているのがカボチャだと早とちりしたらしい。(この匂いはほんとうはどんな食べ物の匂いなのか、まだ何なのか決まっていないその食べ物を買いに行くのが今から楽しみである) 匂いに導かれて道をたどる。 ところで内田樹さんが岸田秀さんと対談するらしい。考えてみればどうして今までこの二人の対談本が出ていないのか不思議である。『加藤さんからのメールは「岸田秀さんと対談しませんか」というお誘い。ただちに「喜んで!」とご返事する。実現するのはだいぶ先になりそうであるが、岸田さんにはお訊ねしてみたいことが山のようにあるから、お会いするのが楽しみである。』(内田樹さんの2010年1月3日のブログより引用) 対談本を手にするのが楽しみである。
2010年01月07日
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S地区をうろつく。 どうやらここはS島のようだ。 さて、S島にていかに生きるか…「いかに死ぬか」というのと「いかに生きるか」というのは同じことだという言い方があるけど、どうしてもここで引っかかってしまうのは「死ぬのは一瞬」だけど「生きるのは有限とはいえそれなりの時間がある」と思ってしまうからなのか… だけど、死ぬ瞬間が起こるのは生きている時間のどの瞬間かはわからないとすると、「死ぬ瞬間にできるだけ気分よくある」可能性を高くするためには「生きているこの瞬間にできるだけ気分よくある」可能性が高くなるよう生活を整えてゆく、というふうにもとらえることができそう… 死ぬ瞬間も生きる瞬間も同じ瞬間… そしてたまたま人として存在している(現象している)この瞬間は、他人(の状況)と比較してどうのこうのというようなものではなく…
2010年01月06日
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飛行機から飛び降り 世界の穴を抜け 着地したところは どうやらS地区らしい ところで、きのうの正月、姪に教えてもらったのですが「立体音響」というのがあって(知ってる人はとっくに知ってるんでしょうけど)、これはスゴイ! ニコニコ動画に登録(無料登録できます)しなくちゃいけないのですが、「立体音響」を体験するためだけにわざわざ登録する価値あり。 目を閉じ、ヘッドホンで(せめてイヤホン)音量を大きくして聞いてください。ここをクリック(立体音響)してね 目を開け、S地区を散歩する。
2010年01月04日
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『どう考えても、不可能は堂々めぐりしていた。』(点と線:松本清張(著):新潮文庫)より引用 本を閉じ、話しかける。「飛行機が堂々めぐりするなんてことはありえるだろうか?」 「いつまで乗ってるつもりなんですか?」「しようがないだろ。勝手に降りるわけにはゆかない」「そうともかぎりませんよ」「お!」 飛行機から飛び降り 絵本の穴を抜け 着地したところは どうやらS地区らしい
2010年01月04日
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「今年は何をします?」「まずは点と線を楽しむとしよう」 いわゆる推理小説の文章は、だいたいのところ平板に感じられて生理的に読むのがつらいのですが、「点と線」はところどころ目が釘付けになる文章が嵌めこまれたパズルみたいでおもしろかった。 文章は平板に感じられてもトリックのおもしろさで読ませてもらった推理小説としては『マジックミラー:有栖川有栖(著):講談社文庫』がよかった。 以下に「点と線」を読んでいて目が止まった(現実の目がじっさいに止まった)文のいくつかを引用します。■「この店は、夜は何時ごろまで起きていますか?」この調査はたいへん困難で、絶望である。彼は先刻から抱きつづけてきた疑問を、このとき唇に出す気になった。一刻も早く名簿を調べたいのだが、彼の前には、乗車前と列車中と都合十六時間の長い時間が意地悪く拒んでいた。係員が出てくる二時間あまり、三原はいらいらして時間を消した。どう考えても、不可能は堂々めぐりしていた。
2010年01月02日
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「すでに2010年ですよ」 「まるでSFみたいだな」 「宇宙の旅ですか」 「2061年宇宙の旅というのもある」 「3001年終局への旅というのもあるのですよ」 「2001年宇宙の旅しか見ていない」 「今年はどうします?」 「人生の時間割」 「今年の時間割」 「時間の流れに伴って起こったり消えたりする人生の出来事は、いずれどうあがいたって、意味無意味・価値無価値・行為無為などでは測れないといわれている」 「だから?」 「しばらくは点と線を楽しもう」
2010年01月02日
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